TOEIC満点取得者であるJay(ジェイ)こと早川幸治さんの連載「3カ月でTOEIC200点アップ特訓法」。早川さんの豊富な受験経験から、最も効率的な対策法をTOEICスコア別に分けて伝授します!第5回は3カ月で700→900点アップを目指すための「理解力を高めるリスニング特訓法」について紹介します。
前回 は、TOEIC学習の質を高めるための「解き方のイノベーション」をお伝えしました。
その中で「Part 3/4は、設問を先読みせずに会話・トークを聞く」という練習法を紹介しましたが、私が主催する600点以上を目指すための講座やセミナーなどでは、必ずそれを体験していただきます。
この練習をすることで、答えをピンポイントで特定するだけの聞き方から、ストーリーとして内容を理解する聞き方に変わります。また、テスト直前に「設問を先読みして解く」方法を改めて取り入れることで、「 聞きやすさ 」と「 解きやすさ 」の両方を身に付ける方が多くいらっしゃいます。
ちなみに、2020年4月からTOEIC L&Rテストのオンライン受験が導入されましたが、このテストでは Part 3/4の先読みができません 。オンライン受験をする予定の方は、模試の練習においても「設問の先読みなし」で取り組んでください。
さて、今回はさらに上を目指すための内容で、私自身も実践しているものです。
700点台から点数が上がりにくい原因
TOEICの目標スコアに向けた学習をしていると、「テスト勉強」をしている感覚になりますが、実際に行っているのはTOEICというテストに登場する「ビジネスの場面」や「日常の場面」に関する英語を学び、それらの内容に関する問題に正解するための学習です。
そのため、忘れてはいけないことは、 TOEIC自体は「私たちの英語力を伸ばしてくれるツール」ではなく、「私たちの英語力を測ってくれるテスト」 だということです。
もちろん、テストには傾向があるため、対策をすることは大切です。しかし、テストにはあくまでも「測定」の機能しかありません。ところが、テスト対策を意識し過ぎると、「解く力」だけが上がっていき、「正解する力」は得たものの、「理解する力」は変わらないということになります。
700点に届いた後に、スコアが上がらなくなってしまったという方は、上記のような状態かもしれません。700点を超えてくると、ある程度多くの問題に正解できるため、解けることが快感になり英語力の伸びがおろそかになることがあります。
「テスト」と「リアル」の意識の違い
そこで、700点を超えた学習者におすすめしたい意識付けが、「 テストと思わずにリアルだと思うこと 」です。
これは、 前回 の「答え探しから内容理解へ」の話にも通じますが、「テスト」だと思ってTOEICに接すると「理解」よりも「正解」を優先することになりますが、「リアル」だと思ってTOEICに接することで 「理解」の方が優先され、その結果「正解」へとつながります 。
運転免許を持っている方は、教習所を思い出してください。学科の勉強をしているときには、運転がイメージできなかったかもしれません。そして、教習所内での運転練習では、あらゆる状況を判断することは少なく、「次は左折」とか「次は踏切」とか、次の動作のみにフォーカスすることで運転のコツがつかめました。TOEICでいうと、「 正解だけにフォーカス 」という意識ですね。時には、S字・クランクでてこずった方もいらっしゃると思いますが、これは単なる右左折や停止とは違い、チェックすべきポイントが多いのが原因です。
そして、仮免許を得たらいよいよ公道での練習へと入ります。あらゆる状況を判断しながら、実際の道路を走ります。その後、高速教習を経て、最後の卒業検定。意識しながら右左折をしたり、信号で白線を飛び出さないように止まったりと、緊張しながらの運転だったかもしれません。たった20分程度の運転でも、かなりの疲労を感じたと思います。
そんな卒業検定のときと、いま普段運転しているときを比べると、意識の仕方がまったく異なっているはずです。まさにこれが「テスト」と「リアル」の違いです。この2つの間には、「交通ルールに従って公道を走る」という事実に違いはありません。しかし、意識が異なれば、使う集中力も異なるのです。
TOEICも同様です。「テスト」と思うか「リアル」と思うかで意識が変わります。一見、テストだと思う方がより集中できそうですが、実はその 非日常的な集中 が足を引っ張ることになっているかもしれません。
参加型で「疲れない」受験術
TOEIC受験の当日を思い出してください。リスニングが終わったときの疲労度はどのくらいでしょうか。以下の中から選んでください。
リスニングが終わった時点の疲労度が、「4」や「5」という方は要注意 です。リーディングが始まる前にかなりの疲れがたまっていることになるため、注意力も散漫になり、リーディングで実力が出しにくくなります。
問題は、その疲れの原因ですが、多くの場合、「内容を理解するための聞き方」ではなく、「 答えを特定するための聞き方 」になっていることによるものです。
例えば、Part 2(応答問題)であればWHなどのポイントだけを特定するだけだったり、Part 3(会話問題)やPart 4(説明文問題)であれば、設問を先読みして、その答えのみを特定するだけになっていたり、という状態ではないでしょうか。まさに、教習所に通っていたときの運転のような感じです。同じ20分の運転でも、当時と今とでは疲労度が違うはずです。
英語力や情報処理能力が高まってくると、この聞き方でも正解を出せるのですが、ピンポイントで情報を特定するだけの聞き方のため、話の内容が頭に入ってきません。これが「答えを特定するための聞き方」の弊害です。
集中しているにもかかわらず、話の展開を追う必要がある問題を解けない場合は、ここに原因があります。
これは、ストーリーのまったくわからない映画を見ているのと同じです。せりふを一生懸命聞いても、ストーリーがわからなかったら疲労がたまるでしょう。
一方で、 ストーリーを理解しながら映画を見ることによって、場面を容易に理解できたり、次の展開が推測できたり、と疲れることがなくなります 。つまり、ストーリーを理解することで、余計な集中力が不要になり、疲労感が減るのです。
そこで、TOEICを受験する上でおすすめなのが、「 会話やトークに参加する聞き方 」です。例えば、Part 2であれば「25問ある質問や報告などの応答を選ぶ」という意識で聞くのではなく、「 25人のネイティブスピーカーの質問や報告に答える 」という意識で聞くことで、会話に参加することになります。以下の2つの聞き方を比べてみてください。
答えを特定するための聞き方
Would it be possible to submit the proposal by tomorrow?
頭の中:依頼だな。
(A) About the price increase. 頭の中:依頼とは関係ない。
(B) Thank you for your help. 頭の中:依頼とは関係なさそう。
(C) We still need some data. 頭の中:ん・・・依頼と関係ある?
質問の意味は取れていますが、依頼を受け入れるか断るかの選択肢ではないため、やや難易度が高めです。英語を理解できる力だけでなく、文脈を理解した上で「コミュニケーションが成り立つかどうか」を判断して正解を選ぶ力が試される問題が多くあるため、「答えを選ぶ」という意識だと難しく感じてしまい、集中力を浪費することになります。
そこで、「 質問や報告はすべて自分にされているという意識で聞き、日本語で返事を用意すること 」を実践すると、より深い理解が可能です。
会話やトークに参加する聞き方
Would it be possible to submit the proposal by tomorrow?
頭の中:明日ならOKかな。
(A) About the price increase. 頭の中:合わない。
(B) Thank you for your help. 頭の中:合わない。
(C) We still need some data. 頭の中:明日提出のために、あと何が必要かってことね。
このように、しっかりと意味を理解して返事まで用意することで、どういった場面で行われている会話かという「文脈」までつかむことができます。
ぜひPart 2に取り組む際に、頭の中で25問すべてに日本語で返事をしてみてください。文脈まで理解できるようになりますし、途中で集中力が途切れることがなくなります。
同様にPart 3に取り組む際にも、頭の中で2人や3人の会話の内容を聞きながら、頭の中で「そうなんだ」とか「なんで?」などの コメントを入れながら聞く と、会話に参加しているイメージで文脈を理解しながら聞けますし、楽しめます。会話をしている人物のうちの1人になりきって聞いてもよいでしょう。
Part 4の場合は、留守番電話メッセージは自分宛て、会議のトークは出席者として、ニュースはまさに日常で聞いている最中をイメージして聞いてください。Part 3と同様に、「了解です」や「明日までね」などのコメントを入れながら聞くと、あまり集中力を使わずにストーリーのまま理解しやすいことに気付くと思います。
「テスト」から「リアル」へと意識を変えるだけで、無機質なテスト問題が生きたものに変わります。そして、実際に会話に参加する意識を持つことで、ストーリーで理解できるようになり、集中力を浪費して疲労につながることも少なくなります。
まとめ
TOEIC 300点台の方のように限られた英語力を駆使して問題を解くためには、問題のポイントを絞った聞き方や解き方が効果的でした。しかし、ある程度力が付いてからも同じように取り組んでいると、プラスではなくマイナスに作用することになります。自転車でいえば、まだバランス感覚がつかめない子どもにとっては補助付きの自転車はプラスになりますが、二輪車を乗りこなせる大人にとっての補助輪は邪魔なものといえるでしょう。
TOEICの取り組みも同じです。800点・900点と伸ばしていくためにも、「テスト」という意識を持ったままの取り組みから、 「リアル」を意識した取り組みへとアップデート してみてください。リスニングの感覚が変わります。
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