『ゴッドタン』プロデューサーが語る「エンタメと英語」【佐久間宣行さんインタビュー】

テレビ東京の番組プロデューサーにして深夜ラジオのパーソナリティーという異色の経歴を持つ佐久間宣行さん。その多忙な生活をこなす一方で、なんと週に20時間ほども配信ドラマを見るという、かなりのエンタメ通でもあります。今回はそんな佐久間さん厳選のおすすめ配信ドラマや、時間の 有効 な使い方、海外と日本のエンタメに関するお話などを伺いました。

佐久間宣行(さくま・のぶゆき)1975年生まれ。テレビ東京社員にして、番組プロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティー。「芸人マジ歌選手権」や「ゴッドタン」「青春高校3年C組」「ウレロ☆未確認少女」など数々の番組を手掛ける。ニッポン放送「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(zero)」(毎週水曜深夜27時~)のパーソナリティーを担当。

英語学習にも使える海外エンタメ

実は「英語は苦手」と話す佐久間さんですが、海外のエンタメ作品は大好きで、配信ドラマなどの視聴時間は多ければ週に20時間にも上るといいます。洋画や配信ドラマを使う方法は英語学習にも効果的ですが、そのときに大切なのは「作品選び」。自分がどっぷりとハマって「なんとしてもこの英語を理解したい」と思えるような作品に出会える かどうか が重要です。今回は、佐久間さんご自身の視聴経験から、面白い海外作品を見つける方法や、今おすすめしたい配信ドラマなどを幅広く伺いました。また、多忙な仕事と自分のやりたいことを両立する佐久間さんならではの自己管理方法といった「社会人の英語学習」にもつながるヒントは必読です。

「英語だとどう言うんだろう?」が原動力

海外のエンタメに興味を持った きっかけ を教えてください。

最初の きっかけ はたぶん、映画じゃなくて小説ですね。『アイ,ロボット』 *1 を高校生のときに読みました。

日本語で読んでもめちゃくちゃ難しいんですけど、「英語がわかっていれば、もっとニュアンスが伝わるのかな」と。「ロボット三原則」って英語でどう言うのかな、と思ったりしました。

「英語ができるようになりたい」という気持ちはその頃からあった、ということですね。

そうですね。それに今は、映画だけでなく、海外の配信ドラマもすごくたくさん日本で見られるんですよね。そうなってから、さらに英語を知りたいと思うようになりました。

海外ドラマは配信が早ければ早いほど、吹き替えがないので。そうすると字幕で見ることになるんですけど、それだけでは「このセリフのニュアンスがわからないな」と思ったりします。そういうときは、後で吹き替え版が出てから見直すことも結構ありますね。特にコメディーがそうです。コメディーは字幕で見た後、「これ、吹き替えで見直さないとちゃんと意味わかってないんじゃないかな」って。字幕だけだと伝えられるニュアンスがすごく短いから、いろんな面白みがカットされているところが結構あるんです。

注目の人物はフィービー・ウォーラー=ブリッジ

ご自身の番組内や、SNSでもおすすめの作品について話していらっしゃいますよね。「面白そうだ」という作品は、どうやって見つけるんですか?

まったく知らないお芝居や配信ドラマは、一般の方で面白いブログを書いている人とか、見た作品の感想をTwitter でつぶやいていて、何回か「この人が面白いって言ったものを見てみたら面白かった」という感じで僕の肌に合った人を継続してチェックしています。本当に、ただのドラマ好きの方のブログとかTwitter を見ていますね。

海外映画 に関して は(公開が)同時タイミングではない限りは、批評サイト Rotten Tomatoes などを見ています。でも英語はそんなにわからないのでGoogle 翻訳をかけてしまったりします(笑)。「これ、めちゃくちゃ褒めてるから、見た方がいいな」とか。レビューや、それから点数も出ているので参考にしています。

海外のエンタメ関連で、最近、注目している方はいますか?

注目の人物はフィービー・ウォーラー=ブリッジ 2 ですかね。「Fleabag フリーバッグ」 3 の脚本、主演の方です。彼女の書くセリフがめちゃくちゃ面白いんですよ。日本語になっていても面白いし、逆に彼女の書くセリフは、こんなに面白いから、どういう英語なんだろうなって思ってちょっと調べる感じですね。

「フリーバッグ」はあまりに好き過ぎて、ナショナル・シアター・ライブ *4 にドラマの基になった一人芝居を見に行きました。あれはもう、最高でしたね。

日本と海外のエンタメ事情

佐久間さんは日本のエンタメ業界にいらして、日本と海外のエンタメに違いを感じることはありますか?

本当に面白いものは日本も海外も同じぐらいのレベルにあるけれど、面白いものの「厚み」というか、「数とその裾野」は海外の方が断然多いし、広いなと思います。それは、日本がまだ日本のマーケットだけを相手に制作できていて、グローバルな感覚にさらされなくても大丈夫という作品がたくさんあるからですね。

でも海外で主流になっている配信ドラマは基本的に、もう「自国だけで見るものじゃない」という感覚で作られているので。グローバルな問題、例えば#MeToo であったり、見ている人たちにちゃんと何らかの価値観を突き付けてくる作品がすごく多いです。

だから、配信ドラマをちゃんとリアルタイムで見ていないと、日本のエンタメ作品が日本の中だけで終わってしまうと僕は思います。現代的な問題を肌で感じられないんじゃないかな。もちろん、基本的には楽しんで見ているけれど、その危機感があって、たくさんの海外の配信ドラマを見ているところもありますね。

多忙なビジネスパーソンの時間管理術

テレビ業界のお仕事というのは多忙なイメージがあります。その上、ラジオパーソナリティーをされ、さらに配信ドラマもたくさん見る。一体、どうやって時間管理をしていらっしゃるんですか?

「タスクと楽しみを区別しないでスケジュールの振り分けをする」っていうのがいいんじゃないかと思います。「どっちかがやりたい」じゃなくて、「どっちもやらなきゃいけない」から。これは小学校の頃からそうなんですが、僕は夏休みの宿題が終わらないと遊べないタイプの子だったんです。今も、それと同じ。締め切りがあるものは 先に とっとと終わらせた方が、ここから始まる映画の公開に間に合うな、なんて考えています。

だから全部、スマホのカレンダーに入れているんですよ。仕事の予定も、配信ドラマを見る予定も。今も3カ月先ぐらいまでの予定が入っています。

EJ読者の中には、仕事と英語学習の両立に悩む忙しい方も多くいます。そんな方に何か、学習を続けるためのアドバイスを頂けますか?

自分が「めちゃくちゃ面白い」と感じる配信ドラマを見つけることは大事だと思いますよ。僕なら例えば、「ブレイキング・バッド」 *5 を英語で見られたらもっと面白いんだろうな、と思うので。自分の肌に合うめちゃくちゃ面白いエンタメを見つけて、そのために頑張りたい、という原動力があれば続くんじゃないかな、と思いますね。

インタビューのフルバージョンは『ENGLISH JOURNAL』2020年7月号で!

2020年7月号の『ENGLISH JOURNAL』では本インタビューのフルバージョンと、ラジオ番組内で佐久間さんが紹介したおすすめの海外作品3選をご紹介しています。

佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)ってどんな番組?

テレビ東京のプロデューサー佐久間宣行さんがパーソナリティを務める深夜ラジオ番組です。毎週水曜深夜27時~28時30分、ニッポン放送にて放送中。「会社員のテレビマン、44歳で既婚者、中学生の娘がいる普通のおじさん」だという佐久間さんがパーソナリティとしてお送りする「テレビ東京×ニッポン放送・メディアミックス ラジオ番組」です。2020年4月より番組が2年目に突入しました。

www.allnightnippon.com/sakuma/

文:ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部
「英語を学び、英語で学ぶ」学習情報誌『ENGLISH JOURNAL』が、英語学習の「その先」にあるものをお届けします。 単なる英語の運用能力にとどまらない、知識や思考力を求め、「まだ見ぬ世界」への一歩を踏み出しましょう!

写真:MAKOTO TSURUTA
*1 :1950 年に刊行された、アイザック・アシモフによるSF 短編小説集。日本では『われはロボット』(早川書房)、『アイ・ロボット』(角川書店)など、複数の訳書が出版されている。

*2 :イギリスの女優、脚本家。アメリカの人気ドラマシリーズ「キリング・イヴ」の製作総指揮なども務める。

*3 :Amazon Prime Video オリジナル作品。現代のロンドンに生きる女性の心理を描き出す、抱腹絶倒かつ辛らつなコメディー。

*4 :イギリスのナショナル・シアターで上演された演劇を収録し、世界各国の映画館で上映するプロジェクト。

*5 :アメリカのテレビドラマシリーズ。余命宣告を受けた高校教師が家族のために麻薬の精製という副業に挑むブラックユーモアと家族愛にあふれた物語。

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日本人インタビューにはメディアアーティストの落合陽一さんが登場し、デジタルの時代に生きる英語学習者にメッセージを届けます。伝説の作家カート・ヴォネガットのスピーチ(柴田元幸訳)、ノーベル生理学・医学賞受賞のカタリン・カリコ、そして、『GRIT グリット やり抜く力』のアンジェラ・ダックワースとインタビューも充実。どうぞお聴き逃しなく!

【特集】PC、IT、そして、ChatGPT・・・パイオニアたちの英語で見聞する、テクノロジーの現在・過去・未来
【国境なきニッポン人】落合陽一(メディアアーティスト)
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