「お世話になっております」を英語で言うと?【マヤ・バーダマン】

外資系企業で、魅力的な大人の英語力を磨き上げた、マヤ・バーダマンさん。上品で、日本人らしい「奥ゆかしさ」が伝わるような英語表現を、ご自身の経験談をシェアしながら紹介する連載。3回目は、英語にない日本語表現を丁寧な英語にする方法です。

こんにちは。マヤ・バーダマンです。

前回は、具体的に英語を「敬語」に調整する方法を解説しました。

今回は、日本語で毎日のように使う「お世話になっております」「お疲れさまです」などのあいさつや決まり文句を英語でどう表現できるかを考えます。

英語には完全に対応する表現がなかったり、直訳できないものも多かったりするので、場面に合わせてカスタマイズした表現を使います。このような毎日のひと言でも、カジュアル過ぎず、品のある丁寧な印象の表現がサッと言えるようになるといいですよね。今回はそのバリエーションをいくつかご紹介します。

なお、日本語と英語はone- to -oneで同じ意味やニュアンスの表現になるとは限らないため、ご紹介する表現についても日本語訳は英文のニュアンスのままの意訳を記載しています。

「お疲れさまです」は「こんにちは」に置き換えよう

職場の廊下ですれ違ったときなど、簡単なあいさつであればその時間帯に合わせた表現を使います。個人的な感覚ですが、ほとんどの場合朝はGood morning.、それ以降は Hi.が多い印象です。

Good morning.おはようございます。
Hi.こんにちは。

日本語の「こんにちは」よりカジュアルでしみのあるニュアンスです。

Hello.こんにちは。

Hi. よりフォーマル度が上がります。

Good afternoon.こんにちは。

ルールではありませんが、使う時間帯の目安は正午から夕方5時ごろ。丁寧でかしこまったニュアンスになります。

Good evening.
こんばんは。

目安は日が落ちて、暗くなる夕方5時ごろから。丁寧でかしこまったニュアンスです。

相手も Hi, how are you doing?などと返事をしてくれたら、軽くGreat, thank you.やGood, and you?などと素早く返事をします。 「How are you (doing)? と聞かれたとき、どのように答えればよいかわからない」という悩みを聞きます が、この場合は 具体的な答えを期待しているというよりはあいさつの一つ なので、長々と答える必要はありません。 立ち止まらなくてもい いような長さのやりとりが自然 でしょう。

個人的によく聞く返事は前に述べたGreat, thank you.以外にGood, good! (And) You?や I’m doing great, thank you.などがあります。Hi, how are you?に対して Hi./Hello.が返ってくる場合もあります。

なお、相手が外国の人でも、「お疲れさまです」という日本語を知っているなら、そのまま「お疲れさまです」と言ったりします。

「お疲れさまでした」は、別れのあいさつ+ねぎらいを

仕事が終わって退社するときや、誰かがプレゼンなどを終えてねぎらいの言葉を掛けたいときによく使う表現ですよね。直訳がないのでなんて言おうと迷ってしまうかもしれませんが、英訳しようとせず場面に合わせてあいさつや励み・ねぎらいの言葉を掛けると自然に聞こえます。

帰り際に

I’ll see you tomorrow.

See you tomorrow.

また明日。

Have a nice evening.

よい夜をお過ごしください。

Good night.は、一日の終わりに使われる別れのあいさつ。

I hope you have a great weekend!

よい週末を!

同僚へのひと言

上記でも十分ですが、 親しみを込めたねぎらいの言葉を足す のもよいでしょう。

I’m heading off now. I hope you don’t have to stay too long. See you tomorrow.

お先に(失礼します)。残業長く続きませんように。また明日。

I hope you can finish up soon/I hope you can head home soon. See you tomorrow.

そろそろお仕事終わりますように/そろそろ帰れますように。また明日。

ここに注意

Bye-bye!は、幼稚に聞こえ、特にビジネスでは適していないため耳にしません。Bye!の方が無難ですが、上記の方が適しています。

相手が目上の人の場合は、前回記事の私の失敗談を反面教師にしてくださいね!丁寧なあいさつができるようにあらかじめ表現をインプットして、その場でさっと出てくるようにすることをお勧めいたします。

プレゼンやミーティングの後などに

Congratulations on a great presentation!

プレゼン素晴らしかったですよ、お疲れさまでした!

Thank you for helping out today.今日はお手伝いいただきありがとうございます。
I really appreciate your help today.今日はお手伝いいただき( ご協力いただき) 感謝しています。

ここに注意

Great job!
Good work!
いい仕事をしたね。

「いい仕事をしたね!」に似たニュアンスで、どちらかというと目上の人が言う表現です。ただし、同僚や親しい相手であれば Great job on your presentation!などと言っても問題ないでしょう。

英語のバリエーションの多さを見ると、「お疲れさまでした」はひと言でさまざまな場面をカバーできる便利な表現ですね。日本語で声を掛けるときよりも具体性を持たせないといけないため、頭を使いますが、場面に合わせることに慣れたら自然に出てくるでしょう。

「お世話になっております」は用件がわかるひと言に

日本語ではメールの書き出しで定番の決まり文句ですが、英語では同じような決まり文句がありません。いきなり本題に入っても基本的に問題ありませんが、直接的でぶしつけ過ぎでないことに気を付け、用件がわかるようなひと言で始めるとスムーズです。

Thank you for your reply.お返事ありがとうございます。
I’d just like to follow up on...

?について状況の確認/進捗の報告したく存じます。

This is just a gentle reminder/heads-up that...

?について、前もってお知らせしたいことをご連絡します。

Thank you for taking the time to meet with us yesterday.

昨日は打ち合わせのためにお時間を頂きありがとうございます。

よく見るメールの書き出し

「お元気にお過ごしでしょうか」「お変わりないでしょうか」といったニュアンスで、ビジネスメールで見る表現です。「お世話になっております」の代わりに1行入れたい場合にも使われるようです。しかし実際のところは、これを省いても問題ありません。人によっては、早く本題に入ってほしいと思う場合もあります。

I hope this (email) finds you well.

I hope all is well.

お変わりないでしょうか。

ここに注意

社内など組織内でのメールのやりとりでは、社外やクライアント相手のとき以上に簡潔な傾向があり、スピーディーなビジネス環境ではその方が好まれる場合があります。私自身、 久しぶりにメールする社内の相手に、I hope all is well with you. Thank you for all your help with XYZ last year ...などと2、3行で始めてから本題に入ったところ、メールが読まれなかったことが何度もあります

丁寧さは大切ですが、相手の立場になり、相手の時間や手間に配慮して用件がすぐにわかるようなメールを書くという工夫も気配りの一つだと学びました。

ただし、その場合書き出しはぶしつけになり過ぎないようにします。やりとりが始まれば、次からは Thank you for your email.から始めるか、直接内容について述べて話を進めてもよい でしょう。

「難しいです」はクッション言葉を使ってはっきり断る

日本語では、はっきりと断って角が立つことのないように「難しいです」と婉曲的に言いますが、直訳してThat would be difficult.と言っても、その気遣いと遠回しの「無理です」「お断り」という真意は伝わりません。「難しいけれど検討する・頑張る」「簡単ではない(けど不可能と言っているわけではない)」という意味だと受け取られる可能性があります。

ここに注意

「検討します」も同じです。I/We will think about it.では、文字通り「考えます」と伝わります。考えた後にどうにかしてくれると思われます。相手への気遣いは大切ですが、 丁寧に言おうとするあまりに曖昧になってしまうと、意図や真意が伝わりません 。また、 相手に察することを求めても、察することができない可能性もあり、そのまま「やってくれるんだ」と期待してしまうかも しれません。ビジネスでは曖昧さは危険です。

その一方で、No.と直接的に言うのは一方的で冷たい印象ですし、会話も次につながりません。ここでもクッション言葉を使い、曖昧さや誤解を避けつつ気遣いのある表現で伝えます。特にビジネスではYes.ばかり言うわけにはいきませんし、断る場面が出てくるのは当然です。その断り方が大切で、信頼関係にも影響します。

ですので、誤解が生じないように明確にしつつ、相手に気配りをしながら伝えることが大切です。また、フレーズを工夫するだけではなく、意図や気持ちを顔の表情、声のトーン、クッション言葉やその前後の発言などにも込めて伝えます。言いにくいことを言うときこそ、そのようなノンバーバルコミュニケーションにも目を向けてみましょう。

I’m afraid we won’t be able to do that, because...恐れ入りますが、・・・の理由で、できかねます。
I’m really sorry, but we just can’t do that.大変申し訳ないのですが、それはどうしてもできません。
I’m afraid it’s impossible.申し訳ありませんが、それはできません。

本当に考えたいとき(断るのではない)

I’d like to think about this some more.もう少し考えたいです。
I’d like to look into this further.この件についてさらに検討したいです。
Would it be OK if I get back to you on this next week?Could I get back to you on this next week?本件については来週またご連絡してもよろしいでしょうか。

私自身、仕事ではっきりNo.と言えず、I’m sorry, that would be difficult.などと曖昧に答えていました。相手は心の中で、So? Are you going to do it or not?(それで?引き受けるの、やらないの?)または、OK, well , good luck!(あらそう、では頑張ってね!)と思っていたかもしれません。

さらに、自分では断っていたつもりが、相手から進捗の確認の連絡が来て「あの件どうですか?」と聞かれることがありました。そのように曖昧なままで相手を迷わせてしまい、時間を無駄にさせてしまったので、結果的に気遣いが逆に作用してしまいました。

余談ですが、アメリカ人の知り合いが「検討します」という表現とその意味を知ってからは便利だと思い、それ以来、日本人相手のビジネスシーンでよく使っているそうです。

このように、表現そのものだけではなく、文化的な違いから使う表現が異なることもあります。

「知らないうちに失礼なことを言っているのではないか」と不安に思われる方もいるかもしれません。あまり心配なさらず、場面と相手に合わせた表現を、時にクッション言葉などの丁寧ポイントを織り混ぜながら使い、気持ちが通った言葉遣いを意識するとスムーズにいくでしょう。

次回は、気持ちが伝わる「感謝」と「謝罪」についてです。お楽しみに!

See you next time!

マヤ・バーダマンさんの本

文:マヤ・バーダマン

仙台市生まれ。上智大学比較文化学部(現 国際教養学部)卒業。ハワイ大学へ留学し、帰国後は秘書業を経て、ゴールドマン・サックスに勤務。医学英語に携わったのち、別の外資系企業に勤務。著書に『英語のお手本 そのままマネしたい英語の「敬語」集』『英語の気配り マネしたい「マナー」と「話し方」』『英語の決定版 電話からメール、プレゼンから敬語まで』(朝日新聞出版)『品格のある英語は武器になる』(宝島社)『外資系1年目のための英語の教科書』(KADOKAWA)などがある。

編集:増尾美恵子

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