「親しみやすいけれど丁寧」いつもの英語を敬語にする方法5つ【マヤ・バーダマン】

「親しみやすいけれど丁寧」いつもの英語を敬語にする方法5つ【マヤ・バーダマン】

外資系企業で、魅力的な大人の英語力を磨き上げた、マヤ・バーダマンさん。上品で、日本人らしい「奥ゆかしさ」が伝わるような英語表現を、ご自身の経験談をシェアしながら、紹介する連載。2回目は、「英語の敬語」です。

こんにちは。マヤ・バーダマンです。

連載1回目では、「大人の英語」についてご紹介しました。英語に対するよくある誤解を取り払い、カジュアル過ぎる言葉、um ...などのfiller words(意味を持たない間を埋める言葉)、wannaなどの短縮形を避けて、クッション言葉や単語の組み合わせを意識するだけで、品のある大人な英語になることをお伝えしました。

今回は、いつも使っている英語をどのように「敬語」に調整するか、その方法を具体的に解説します。

まず、前回の宿題の答え合わせです。

Homework – Answers

以下はどれも「フィードバックを依頼している表現」です。3つのうち、どれが丁寧な言い方だと思いますか?

正解

【C】

A: 最後にpleaseが付いているので、丁寧かと思われるかもしれませんが、I want your feedbackのように、I want ... という表現が一方的で命令調、かつ「上から目線」に聞こえます。pleaseが付けば自動的に何でも丁寧になるとは限らない例です。また、wantという単語が幼稚にも聞こえるため、ビジネスの場面でI want と言いたいときは、 I would likeに言い換えます。

B: 文頭にpleaseが付いていると丁寧になると思われるかもしれませんが、実は「please + 動詞」(〜してください)の表現は命令調で、相手に断る余裕を与えない一方的な言い方です。

C: この表現はpleaseが付いていませんが、この3つの中では丁寧と言えます。なぜかというと、リクエスト形式で相手に尋ねる言い方をすることにより、相手の都合に配慮し、相手が引き受けるかどうかを考えて返事できる余裕を残しているからです。さらに、Can you ...?のように、canではなく過去形のcouldを使っているところも丁寧な表現に格上げするポイントです。

さらに丁寧な表現にするには、Could you please let me know your feedback?のように、pleaseを入れるとよいでしょう。

結果、この3つの中では C が丁寧な表現です。また、pleaseを取り入れることでさらに丁寧にすることができます。目上の方やお客様が相手の場合はCould you please ...?がよいでしょう。

いつもの英語を「敬語」に変える5つの方法

英語は「フラットな言語」「伝わればよい」という考えは、時にトラブルのもととなります。海外旅行で道を尋ねる場合や、日本で海外からの観光客に道案内をする際には、カタカナ語をつなぎ合わせて伝えるだけで十分かもしれません。しかし、ビジネスの相手と内容の濃い話をしたり、学生の場合は教授や就職試験の面接官などと失礼のないやりとりをする場面では、そのような姿勢と話し方では難しいでしょう。

特にビジネスでは、相手に対して謝罪をしたり断ったりするなど、言いにくいことを言わなくてはいけない場面も時にあります。そんなとき、「伝わればよい」と直接的あるいは曖昧な表現にしてしまったり、日本語の感覚や表現をそのまま直訳したりしてしまうと、誤解や混乱を招いてしまう可能性があります。

コミュニケーションも仕事も「人対人」。伝え方は信頼関係に影響します。簡潔で相手にきちんと伝わりつつ、角が立たないように表現する必要があります。言葉をツールとして使うだけでなく、伝えることの中身をクリアで誤解のないよう留意し、相手への気遣いや思いやりも表現することが大切です。

ここでご紹介するポイントは英語の敬語の決まった「ルール」ではなく、筆者が働いてきた外資系企業の「現場という教材」から学んだものです。

新入社員と英語についての話題になったとき、「実際に経験を通してでないと、丁寧だったり失礼だったりする表現のニュアンスは理解できない」と言っていました。私も同じでした。

このような環境や機会が身近にない方は、これから紹介する方法を参考にして、フレーズから見えてくるパターンを意識しながら日々の会話に取り入れてみてください。表現の幅が広まると、ご自身の気持ちや考えがより具体的に伝わり、状況や相手に臨機応変に対応できるようになります。自信を持って自分の伝えたいメッセージを発信し、仕事や人間関係がよりうまくいくことを願っています。

クッション言葉でやわらかくする

断るとき、反論するとき、難しいお願いをするときなど、言いにくいことや相手にとって好ましくないことを伝えるときに、クッション言葉が活躍します。文頭に添えることで、その後に続けて言う内容の「衝撃」をやわらげ、相手に心の準備をさせてから伝えるという気配りです。

申し訳ない気持ちを表現する

Unfortunately, ...

残念ではございますが・・・

I’m afraid (that) ...

恐れ入りますが・・・/申し訳ありませんが・・・

I’m sorry, but ...

申し訳ございませんが・・・

角が立たないよう、相手に対して申し訳ない気持ちや残念な気持ちを伝えることができます

以下の例のように、beforeだとぶしつけで素っ気なく聞こえてしまいますが、ワンクッション挟むと柔らかく聞こえます。

Before

I can’t attend the meeting.

ミーティングに参加できません。

After

I’m sorry, but I [have a schedule conflict and] will be unable to attend the meeting.

申し訳ございませんが、[ほかの予定があり]ミーティングに参加できません。

急なお願いや、時間的に少し無理のある依頼があるときなどに、このクッション言葉“I’m sorry to trouble you, but ...”で前置きしてリクエスト形式で依頼をすると、相手に申し訳ない気持ちを伝えることができます。

I’m sorry to trouble you, but ...

お手数をお掛けいたしますが・・・

Before

Can you obtain Michael's approval by tomorrow?
明日までにマイケルさんの承認を得られますか?

After

I’m sorry to trouble you, but could you please obtain Michael's approval by tomorrow?
お手数をお掛けして恐縮ですが、明日までにマイケルさんの承認を得ていただけますか?

意見を言うとき

I may be wrong, but ...

間違っているかもしれませんが・・・

Correct me if I’m wrong, but ...

間違っていたら正しいことを教えていただきたいのですが・・・

As far as I know, ...

私が知る限りでは・・・

Based on my experience, ...

私の経験から言いますと・・・

意見を言うとき、特に反対意見や反論するときにクッション言葉を添えると印象が変わり、柔らかくなります。

リクエスト形式にする

先ほども触れましたが、依頼をするときにpleaseを付けると丁寧になると思われがちですが、実は「please + 動詞」(〜してください)の表現は一方的で、命令調に聞こえてしまいます。Could you please ...?や Would you please ...?といったリクエスト形式にすれば、相手に断る余裕を残すことができますし、気遣いを示すことができます。 

メールの文面の例

Before

Please update the file by EOD today.

今日中にファイルをアップデートしてください。 

※EOD = End Of Day(1日の終わり)

After

Could you please update the file by EOD today?

今日の終わりまでにファイルをアップデートしていただけますか?

I’m sorry to trouble you, but could you please update the file by EOD today?

お手数をおかけして申し訳ありませんが、今日中にファイルをアップデートしていただけますでしょうか?

実際には、ビジネスの場面においてbeforeの例もよく耳にします。社内やチーム間でのやりとりであれば、それほど失礼には聞こえません。ただ、クライアントや目上の人が相手であれば、より丁寧で命令調ではない言い方がよいでしょう。

Tip:

Can you (please) ...?という表現もリクエスト形式ではありますが、could youの方が丁寧です。丁寧度はcould > can, would > willとなります。wouldよりもcouldの方が丁寧ですが、pleaseを付けて、Could you please ...?、Would you please ...?とすると、丁寧さの度合いは同じくらいになります。

つなぎ言葉で流れを作る

日本語で「ところで」や「つまり」などの「つなぎ言葉」で文章の流れがスムーズになるように、英語でも言葉と言葉・文章と文章の間をつなぐ「つなぎ言葉」があります。話の流れをより明確にする言葉を入れることで、相手は話をよりスムーズに理解することができます。一見、「これが敬語?」と思われるかもしれませんが、「相手に(心の)準備をさせてから伝える(本題に入る)」という意味で文章を調整する役割があり、これも一種の敬語と言えます。

話題を変える

By the way, ... ところで・・・

Come to think of it ... そういえば・・・、考えてみると・・・

唐突に話題を変えると相手は少し戸惑うかもしれませんが、ワンクッション挟むことで「この後に何か違う話題がくるな」と心の準備ができます。これも、相手が混乱しないための気遣いです。

例を挙げる

For example, ...

例えば・・・

順序立てて説明する、順序を表す

First, ... / Second, ... / Third, ... / Finally, ...

最初に・一つ目に・まず/2つ目に・次に/3つ目に/最後に

反対のことを説明する

However, ...

ところが・・・

In contrast, ...

反対に・・・、一方で・・・

事実を述べる、理由を説明する

Actually, ...

実は・・・

結果を説明する

As a result, ... / Because of this, ... 

結果として/その結果

Therefore, ...

したがって

In conclusion, ...

まとめると、結果として

In summary, ... 

まとめると、要約すると、つまり

これらのフレーズはプレゼンでも話の流れをスムーズにする役割があります。

ただし、多用すると本来の効果や役割がなくなり、無意味になってしまうので注意が必要です。日本語でも、特に必要でなくても「ちなみに」「それで」を多用してしまうのと同じで、意味のあるつなぎ言葉ではなく、ただの口癖のようになってしまいます。

単語を「格上げ」してアップグレードする

知性は言葉を通しても表れます。品格も同じです。

日本語で「見る」より「拝見する」や「ご覧になる」の方が丁寧でかしこまっているのと同じように、英語にも丁寧で知的なニュアンスを持つ単語や表現があります。

前回の記事でご紹介したように、使う言葉によっても瞬時にその人の印象が決まったり、判断/評価を下されたりすることがあります。さらに、2−3語使って表現するところを1語で簡潔かつ明確に表現することができる「格上げ単語」もあります。

以下は場面によって適切な単語が異なりますが、参考にしてみてください。

give(与える) provide, distribute, deliver [a speech/presentation]
hard(難しい) difficult, challenging
change(変える) modify, adjust, edit, manipulate
know(知る) understand, realize, recognize
find out(わかる) investigate, explore, examine, identify, discover
show(見せる) illustrate

ここでの注意点は、格上げ単語や表現ばかりを多用すると堅苦しくなってしまい、相手に距離を感じさせたり、冷たい印象を与えることがあります。これを避けるために、次の「波」を意識してください。

「波」で変化を付ける

丁寧さは総括的に決まります。日本語では、相手によっては常に「〜でございます」「承知しました」などと同じくらいの丁寧レベルの表現を使いますが、英語では丁寧な表現を常に使い続けるとかしこまり過ぎていたり、堅苦しく聞こえてしまう場合があります。かえって不自然で誠意が感じられなかったり、冷たい印象にもなります。

一方で、カジュアル過ぎる表現が続くと失礼になり、ビジネスには適していない場合があります。

自然に聞こえる会話のためには丁寧さの加減に波を作ります。丁寧な表現の中に、時折親しみやすさを感じられる表現を交えて、最後に丁寧に締めくくったり、丁寧レベルを上げ下げして調整しながら、全体的に丁寧になるようにします。目標は friendly but polite(親しみやすいけれど丁寧)な話し方です。

英語には敬語がないと思われがちですが、実は5つほどの丁寧さのレベルがあります。仕事や生活で使う英語のほとんどは以下の3つの丁寧レベルに分類されます。

★★★とても丁寧

相手は地位・身分・年齢などが上の人(クライアント、社外の人、上司など)

Yes, sir. / Yes, ma’am.

かしこまりました。

Good afternoon, Mr. Stanley.

こんにちは、スタンリーさん。

It certainly is a pleasure to meet you, Ms. Harrison.

ハリソン様にお目にかかれて、大変光栄でございます。

★★やや丁寧

一般的に丁寧に接すべき相手(社内の同僚や日本でいう「先輩」、店員など)

I’ll get back to you tomorrow.

明日、お返事いたします。

Could I have another spoon, please?

すみませんが、スプーンをもう1本いただけないでしょうか。

★カジュアル

親しい間柄(親しい同僚、日本でいう「後輩」、身近な人)

Let’s grab some coffee sometime.

そのうちコーヒー飲みにいかない?

I’ll see you around.

またね。

基本は丁寧な話し方をベースに、少し工夫して調整して波を作ることで、相手との距離が縮まったり、話がよりスムーズになることもあるでしょう。この調節は少し難しいかもしれませんが、英語の会話やニュース、ドキュメンタリーなどで様々な会話を聞いて、この「波」の変化を聞き取る練習をしてみてください。会話の経験と意識の積み重ねで感覚がつかめてくるでしょう。

私自身も、この「波」の加減がうまくいかず失敗したことがあります。

仕事から帰る際、会社のエレベーターに乗ったところ、役員の方と一緒になりました。その方はブラックベリーやスマートフォンを見ることもなく、目が合ったのでお互いに会釈しました。ここで1分ほどのエレベーター乗車の時間を沈黙で過ごさず、スモールトークのチャンスと見てGood evening, Ben.と声をかけました。(*役員の方でも社内ではファーストネームで呼んでいました。名前は仮名です。)相手も笑顔で答えてくださり、会話のキャッチボールが続きました。失礼の無いように、上記で紹介した★★★(とても丁寧)な言い回しを保ちました。カジュアルな言い回しは避けて、yeahよりyes、gonnaではなくgoing toなどと言葉を慎重に選び、表情や声のトーンで親しみを出して「波」を作り出しました。

ところが、エレベーターを降りてセキュリティーゲートを出るとき。私の口から出た言葉は Bye!でした。しかも、「バ〜ア〜イ!」 のようなトーンで、学生の頃に友人にかけるような別れの言葉です。緊張してその場面で適した言葉がすぐに出てこなかったというのもありますが、相手は「いきなりカジュアルだな」と違和感を感じたでしょう。このとき、別れのひとことでふさわしいのはI hope you have a good evening.などで、締めくくりは丁寧な方がベストです。

このように、英語を「敬語」にするために難しい単語を覚える必要はなく、馴染みのある言葉の選択や組み合わせによって気遣いや敬意を表現します。ポイントは、状況や相手に合った言葉や表現を選ぶことです。日々のコミュニケーションの中でこの調整方法を意識し、場面に合わせて実際に使ってみて、その後の相手の反応ややり取りの流れなどを確認していけば、感覚が身につくようになるでしょう。

次回は、英語にはない日本語の挨拶や決まり文句をどう丁寧に表現すれば良いかのヒントをお届けします。

See you next time!

マヤ・バーダマンさんの本

外資系1年目のための英語の教科書

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英語の気配り

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品格のある英語は武器になる

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マヤ・バーダマン

文:マヤ・バーダマン

仙台市生まれ。上智大学比較文化学部(現 国際教養学部)卒業。ハワイ大学へ留学し、帰国後は秘書業を経て、ゴールドマン・サックスに勤務。医学英語に携わったのち、別の外資系企業に勤務。著書に『英語のお手本 そのままマネしたい英語の「敬語」集』『英語の気配り マネしたい「マナー」と「話し方」』『英語の決定版 電話からメール、プレゼンから敬語まで』(朝日新聞出版)『品格のある英語は武器になる』(宝島社)『外資系1年目のための英語の教科書』(KADOKAWA) などがある。

編集:増尾美恵子