「英語には敬語がない」は誤解です!今こそ身に付けたい「大人の英語」【マヤ・バーダマン】

大人の「英語の敬語」を使って、あなたの印象を上げよう【マヤ・バーダマン】

外資系企業で、魅力的な大人の英語力を磨き上げた、マヤ・バーダマンさん。上品で、日本人らしい「奥ゆかしさ」が伝わるような英語表現を、ご自身の経験談をシェアしながら、紹介する連載。1回目は、「大人の英語」です。

こんにちは。マヤ・バーダマンです。

この連載では、私がグローバルな企業で働き始めた頃に知りたかったことを思い出しながら、皆さんがすぐに使えるような tips & tricks をご紹介いたします。読者の皆さんが伝えたいメッセージをより自信を持って発信でき、スムーズで効果的にコミュニケーションを取るための一助となりますことを願っています。

これホント?大人の英語の「〇✖クイズ」

皆さんは、英語について以下のようなことを聞いたことがありませんか。次の1から5はホントでしょうか?〇か✖かで答えてみてください。

  1. 英語に敬語はない。
  2. 英語で話すときは、フランクでストレートに言う。特にビジネスでは「ビジネスライク」で直接的に表現する。
  3. ジョーク・ユーモアを交えた方が受けがよい。
  4. 英語は、話し言葉と書き言葉に違いはない。
  5. 「中学英語」でOK。

答えは、すべて「✖」です。

実は、このような思い込みが、コミュニケーションや信頼関係を築くことの妨げになる場合があります。1から順番に見てみましょう。

「英語には敬語がない」は誤解

日本語のような「です・ます」「御社・弊社」などの決まった単語や、「尊敬語」「謙遜後」などのルールはないものの、実際には単語の組み合わせやクッション言葉などで調整し、丁寧で気遣いのある表現にします。特にビジネスシーンでは状況に合った「英語の敬語」表現が大切です。

直接的な表現は冷たい印象を与える

「フランク」であることや、いわゆる「ビジネスライク」な表現は避けた方がよいです。簡潔に伝えるのは大事ですが、ぶしつけだったり、冷たくドライな印象を与えかねません。英語にも婉曲的な表現があり、相手を思いやり、気遣いながら話します。

ジョークは状況に応じて使い分ける

状況や相手によっては、場を和ませたり、親しみを感じてもらえたりすることがあるかもしれませんが、相手や場面、言い方に注意が必要です。相手が不快に感じたり、信頼関係に影響したりする可能性があります。

英語にも「話し言葉」と「書き言葉」がある

「話し言葉」と「書き言葉」では使う単語などに違いがあります。フォーマル度によって差を付けます。例えば、話し言葉では I would を I’d にするなどcontractions (短縮形)を使うことがあります。

中学英語をベースに「大人っぽい単語の選び方」を

中学英語でも、ある程度は通用すると言えます。実際、難しい単語や「敬語」特有の言葉を覚える必要はありません。ただ、丁寧で品のある表現にするには、単語の選択、状況に合った表現の仕方など調整が必要です。

「英語の敬語」との出合い

私が「英語の敬語」と出合ったのは、東京にある外資系金融企業で働き始めた頃でした。

私はアメリカ人の父を持ち、小学校から高校卒業までアメリカンスクールに通い、国内の大学でも授業のほとんどを英語で受けました。そして、ボストン近郊の高校の boarding school(全寮制の寄宿学校) とハワイ大学で2度の留学を経験しました。毎日英語に触れていたので、仕事で英語を使うことには特に問題がないと思っていました。

ところが、外資系企業で働き始めてすぐに、思わぬ現実に直面しました。現場で耳にする英語は、今まで自分が使っていた英語とは少し違っていたのです。

きっかけの一つとして印象的なのは、kindly という言葉です。

Could you kindly get back to us by tomorrow?

明日までにお返事(折り返し)いただけますでしょうか?

Could you kindly let us know your feedback on this?

この件について、フィードバック(ご意見)を頂けますか?

この kindly を同じニュアンスのまま訳すのは難しいのですが、直訳すると「親切に」「優しく」といった意味です。上記の表現は kindly がない状態、または please で置き換えても十分丁寧ですが、この kindly が入ることで、お願いすることに対する申し訳ない気持ちや、何かをしてもらえたら助かるという気持ちが伝わり、相手への気遣いが感じられます。単語の意味は理解していても、このような使い方に触れるのは初めてで、目からうろこでした。

ほかにも、現場で耳にする英語は決して専門用語や難しい言葉を使っているわけではなく、kindly のようななじみのある言葉の組み合わせや使い方で、「プロフェッショナルで品のある、丁寧で洗練された英語」を表現していたのです。

それからは、日々届くメールで目にした言い回しをコピー&ペーストしてテンプレート集を作ったり、ミーティングやプレゼンで聞いた表現をメモしたりして、自分のボキャブラリーに追加していきました。ロールモデル、まさに「英語のお手本」を見つけて、その人になりきるように演じながら英語で発表や発言、会話をしていました。Practice makes perfect. と言うように、何度も繰り返し練習すれば、うまくできるようになり、自信につながりますよね!

私にとっては自分の働く現場がまさに「生きた教材」でした。そして、その学びを自分のものとして取り入れていったところ、コミュニケーションがスムーズになり、人間関係とお仕事によい影響があることを実感したのです。

「卒業」した言葉遣い

「英語の敬語」に気付いてからは、もっと大人の英語を目指すべく、自分が学生時代に使っていたようなカジュアルで少し幼稚に聞こえる言葉や話し方のクセを意識し、日々修正していきました。特に以下を意識的に避けました。

短縮形

避ける短縮形

言い換え

wanna (want to)

would like to

gonna

going to

gotta (got to)

have to, need to

kinda

kind of

outta

out of

gimme

give me

needta

need to

’cuz

because

till, ’til

until

短縮形は基本的にくだけた表現で、インフォーマルな話し言葉なので、ビジネスの場など、大人の会話では避けるのが無難です。ちなみに、映画の字幕ではこのようにつづられているのを見ることはありますが、本来は書き言葉ではなく、あくまでも口語を文字化した発音つづりです。

カジュアルな filler words

言いたいことがすぐに出てこないときや、言葉が思い浮かばないときなどに、“um ...”, “well ...”, “uh ...”, “you know ...”, “like”, “I mean ...” とつい口にしてしまいますが、このような “filler words” は文章の「間」を埋めるだけで、実際には意味を持ちません。日本語で言う「えー」「えーっと」「あのー」「そのー」「あー」「やっぱり」のような言葉です。

使い過ぎるとやや軽薄で考えがまとまらない人のような印象になり、発言の説得力にも影響してしまいます。プレゼンや会議の発言であまり頻繁に使ってしまうと、聞き手は内容に集中できなくなり、umやyou knowの回数を数え始めてしまうこともあります。(実際に、プレゼンを練習する際、練習相手に数えてもらってその回数にびっくりしたことがあります)

どうしても何か言いたくなるときは “Let me see ...” や “Let me think ...” (そうですね・・・)のようなひと言を挟むか、思い切って沈黙の「間」を置くことをおすすめします。 

カジュアルな口癖

He was like ... And she goes like ...

アメリカのテレビドラマや映画で、若い人が過去の発言や出来事を話すときにこのように言うのを耳にしたことがありませんか。日本で若い人が「・・・って感じ」と言うのと同じ感覚で使う口語表現で、上記は、「彼は・・・って感じで、彼女は・・・って感じで」というニュアンスです。

He goes, “We cannot extend the deadline.” And I was like, “No way!”

彼は「期限を延ばすことはできません」って感じで、私は「うっそー!(マジで?)」って感じだったの。

このような話し方は、洗練されたプロフェッショナルな英語のイメージではないので、避けるようにします。

若者言葉や下品なスラング

オフィスでは、以下のような若い人がよく使うような言葉もほとんど耳にしませんでした。

seriously (まじで)

totally (めっちゃ、超)

that sucks(それサイテー)

(you) guys (みんな)

親しい同僚などとカジュアルな場面で使うならよいかもしれません。しかし、学生同士の会話のようにも聞こえますし、その話し方を周りの人が聞いていたら、あまりよい印象は受けないでしょう。また、打ち解けた会話をしたいと思って下品なスラングや罵り(ののしり)言葉を使うのは論外です。

また、「ネイティブがよく使うスラング」については、聞いたときに理解できるよう、覚えておくと役に立つことはあります。しかし、グローバルな環境では英語のネイティブスピーカー以外の人が理解できない場合や、ニュアンスがずれていたり、ビジネスには適していなかったりする場合があります。「映画やソーシャルメディアで見たから使おう」という姿勢は大切ですが、このような表現については挑戦し過ぎず、丁寧でスタンダードな表現を使う方が安全です。

言葉遣いのインパクト

印象に残るエピソードをシェアします。(すべて仮名です)

あるとき、他部署のマネージャーであるStevenから私に転送メールが届きました。Steven宛てに送られたメールに、彼がコメントしたものです。元のメールはStevenの部下として入った新入社員、Alisonからのものでした。Alisonは海外の大学を卒業し、英語のネイティブスピーカーだったのですが、メールの末尾にあった文面を読み、少し驚きました。

Hey Steven, I was wondering if you can cover for me while I’m ooo?

※ooo = out of office (オフィス不在)

「私がオフィスを不在にしている間、カバーしてもらえないかと思ってるんだけど?」に近いニュアンスです。

StevenとAlisonの関係性はよく知らなかったので、もしかしたら短期間でカジュアルに話せるくらいの仲になったのかもしれません。しかし、上司と部下の関係性ですし、ビジネス上では大学生同士の会話のような言葉遣いやトーンは適していないので避けた方がよいです。

このメール以外に、同じような雰囲気で書かれたAlisonのメールがほかの相手に転送・拡散されたり、ほかの人の目に入る可能性があります。会社の役員や社長の目に入る可能性もないとは言えません。そうなったとき、メールを見た人、特にAlisonを知らない人は、彼女に対して「あまり礼儀正しくない子なのかもしれない」などという印象になってしまうかもしれません。

使う言葉の選択によって瞬時に印象が決まり、「判断される」のは事実です。

大人らしい「英語の敬語」を使うために

「日本人は丁寧で礼儀正しいのに、英語を話すと失礼に聞こえる」

「英語に自信がある人でもぶしつけで失礼な話し方をする」

このような声をたびたび耳にします。その理由の一つに、冒頭でご紹介したような誤解があるのかもしれません。

さらに、丁寧な表現がわからなかったり、どのような言葉遣いが適しているのかがわからないために、相手が失礼だと感じてしまうような話し方や書き方をして、誤解や混乱が起きてしまうのは残念です。

丁寧で気配りができる日本人の感覚は英語でも表現できます。

まず、英語に対するよくある誤解をなくしましょう。その上で、wannaなどの省略した形やカジュアル過ぎる言葉、filler wordsをなくし、クッション言葉やビジネスにふさわしい単語の組み合わせなどを身に付けるだけで、上品で大人な英語になります。

さて、次回の連載までの宿題です。

以下のうち、どれが丁寧な言い方だと思いますか?

次回は、英語を「敬語」に調整する方法について具体的にご紹介します。

See you next time!

マヤ・バーダマンさんの本 

外資系1年目のための英語の教科書

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英語の気配り

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品格のある英語は武器になる

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マヤ・バーダマン

文:マヤ・バーダマン

仙台市生まれ。上智大学比較文化学部(現 国際教養学部)卒業。ハワイ大学へ留学し、帰国後は秘書業を経て、ゴールドマン・サックスに勤務。医学英語に携わったのち、別の外資系企業に勤務。著書に『英語のお手本 そのままマネしたい英語の「敬語」集』『英語の気配り マネしたい「マナー」と「話し方」』『英語の決定版 電話からメール、プレゼンから敬語まで』(朝日新聞出版)『品格のある英語は武器になる』(宝島社)『外資系1年目のための英語の教科書』(KADOKAWA) などがある。

編集:増尾美恵子