新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の 拡大 を防ぐためロックダウン( lockdown 、外出などの 厳しい 行動制限)を 実施 中のイギリスで、ある家族がインターネットで公開した動画が話題になりました。ミュージカル『レ・ミゼラブル』の名曲「One Day More」に乗せて、家での自主隔離生活をユーモラスに嘆く替え歌を歌った動画とは?
名曲「One Day More」の自主隔離バージョン動画
イギリスのテレビ番組「BBC Breakfast」が放送した映像で、『レ・ミゼラブル』の名曲「One Day More」の替え歌を歌った家族( Marsh 一家、両親と4人の子ども)の動画を見られます(歌はYouTubeの03:40~)。
「BBC Breakfast」はTwitterでもこの映像を投稿しています。新型コロナウイルスの感染対策が本格化して以降、海外では、外出できない人々が家の窓辺に出て演奏したり歌ったりする動画がSNSなどに投稿されています。この家族の動画も、ロックダウン中の大変さをユーモアでもって歌い上げることで、視聴した人たちみんなが気持ちを共有して、頑張ろうと思わせてくれる動画だと思いました。
外出できないフラストレーションを歌に
番組「BBC Breakfast」は、この放送にこんなタイトルを付けています。self- isolation は「自主隔離」です。
Meet the family who made the viral self- isolation adaptation of ‘One Day More’ from Les Miserable番組では家族の自宅と通信でつないで、この歌の動画を作った経緯をインタビューしました。Ben Marsh さんは、替え歌の内容についてこう表現しています。
『レ・ミゼラブル』の「One Day More」を自主隔離の替え歌にしてバズった家族を紹介
Ben: So put the lyrics together, all compiled out of the different frustrations everyone has had in the family over the last couple of weeks that we’re all experiencing, I think, at home. [00:33~]日本でも外出自粛が呼び掛けられ、しばらくこの状態が続くでしょう。当然これは必要なことですし、症状に苦しんでいる人や治療に当たる人のことなどを思うと、在宅するのは自分にできる最低限のことだと思えます。
Ben:それで歌詞を書いたんです。この数週間、家族みんなで感じていた、いろいろなイライラをまとめてね。みんなが家で体験していることだと思いますが。
それでも長期間、自宅で過ごすことから生じるフラストレーションがどんなものかを知っておくことは、 今後の ウイルスとの闘いにおいても参考になりそうです。
キャスターのDan WalkerさんがDanielle Marsh さんに向かってこう 指摘 しているように、動画の冒頭にあえて家族の言い争い(?)が入ったままになっているのも、この動画の面白さの大きなポイントです。
Dan: I think, Danielle, what lots of people have enjoyed watching it is the argument at the start. [00:44~]この「言い争い」には、まさに家族の中でフラストレーションがたまっていることが表れていますね。ほほ笑ましく聞きながら、自分は周りの人に当たったりしていないかな、と 改めて 考えました。
Dan: Danielle、これを多くの人が見て楽しんでいるのは、最初の言い争いのせいもあると思いますよ。
作詞から撮影までなんと数日間で完成!
以前も家族でこの歌(替え歌ではなくオリジナル)を歌ったことがあるようで、2人いる息子の一人、Alfie君は、「恋とか興味ないので、マリウスのパートを歌うのが嫌だった」と言っています。(英語でも、日本語の『レ・ミゼ』のように、Les Misと略すのですね!)
それに対してBenさんはこう語っています。
Ben: The nice thing about changing the words is that they could all sing about stuff that they like, football and all sorts of other stuff , school, grandparents (…) [01:45~]イギリスといえばfootballことサッカー!(これはステレオタイプですが、結構真実だと思います[笑])
この替え歌のいいところは、子どもたちが自分の好きなことを歌える点なんです。サッカーとか、ほかのあらゆること、学校や祖父母のこととか(・・・)
Marsh 家では普段から動画を撮影してインターネットにアップロードしているようですが、いつもは祖父母やいとこなど親族しか見ないとのこと。しかし今回はこのようにBBCで紹介されるので、友人たちなども見るだろうと言っています。
また、すでに知らない人からもネット上でメッセージをもらっているそうです。医療現場で働く人などが、 厳しい 状況の中でも、動画を見て笑顔になったと言ってくれるのを読むとうれしいと語っています。
いちばん大変だったのはハーモニーだそうで、動画の最後、みんなでハモるところからは、確かにその苦労がしのばれます(笑)。でもそこがまた、歌詞からにじみ出る困難な状況を笑いで緩和してくれる効果となっています。
歌詞を書いたのが木曜日で、その後、数回の練習を経て、本番の撮影は2回のテイクで 完了 させたとのこと!
メロディーにぴったり合ったユーモアあふれる歌詞
ではお待ちかね、替え歌の歌詞から一部を見てみましょう。
まずは、この冒頭をどうぞ。
One day more日本でも問題になっている、品薄や買いだめのことが歌われています。オリジナルで韻を踏んでいる箇所が、ちゃんと替え歌でも、 destiny と delivery 、 find とtimeで韻になっているのがすごい!(すみません、日本語の試訳では韻を踏めていません・・・)There’s nothing till September time
[03:44~]
また一日
別の日には別の運命
オンラインショッピング
また試してみたけど、結果は
9月まで 在庫 なし
続いてAlfie君が、「サッカーの試合もなし」と残念そうに歌っています。さらに子どもたちは、遠くに住む大切な人にも思いをはせます。
Our grandparents are miles away高齢者にとっては特にリスクが高いとされる新型コロナウイルス。しばらく会えない寂しさ、しかもテレビ電話もできないとなれば、悲しみが増してしまうかもしれません。They can’t work Skype! We’re brokenhearted
[04:10~]
おじいちゃんやおばあちゃんはずっと遠く
向こうはスカイプが使えない!悲しいよ
その後、「一日中スマホばかり、今度はいつ友達に会える?」といった歌詞が続きます。
そして、日本でも準備や 実施 が進む学校のオンライン授業や、家にずっといることで身だしなみを整えなくなることなどが歌われています。(でも、髪のセットはまだしも、下着は替えた方が・・・)
所々でジェスチャーの演技が入り、小道具も使っていることにご注目!もはやプロです。
Watch our daddy drink,NHSは、イギリスの国民保健サービス(National Health Service )のことです。See our mommy sigh,
Clapping for the NHS,
Can make ’em cry
[05:35~]
パパがお酒を飲むのを見てよ
ほらママがため息ついてる
NHSに向けた拍手で
涙を流してる
新型コロナウイルスの対応に追われる医師や看護師に王室のメンバーや著名人が拍手を贈る動画が公開され、ロンドンなどで市民たちが家から外に顔を出して拍手をすると言ったことも行われているようです。 *1
Sunshine is a bummerそう、日光は大事です!日光を浴びる かどうか は、免疫力にも関係すると聞きます。家の中からでも、ベランダに出るなどして、できるだけ太陽を感じたいものです。When we’re stuck inside
[05:44~]
日光だって嫌になる
室内に閉じこもりっきりなんだもの
Every man will need vaccinesmanを「人間」の意味で使うのは、多様性の現代では避けるべきとされています。しかし、替え歌の歌詞は男性であるBenが書いたようなので、こういうところにも(ステレオタイプですが!)イギリスっぽい皮肉が発揮されている?!That’s a little bit sexist!
[05:53~]
誰にでも(どの男にも)ワクチンが必要だ
それってちょっと性差別的!
そして、私が特に好きなくだりがここです!
Tomorrow we’ll discover whatTescoはイギリス全土にある大手チェーンの庶民的なスーパーマーケットです。イギリスに旅行や留学をする人もお世話になることがあると思います(私もそうです)。TESCO ONLINEはそのオンラインショッピングのサイトでしょう。TESCO ONLINE had got in store
[06:40~]
明日になったらわかる 何が
「テスコ・オンライン」に 在庫 があるのか
歌を聞いて思わず笑ってしまいますが、実は笑い事ではなく・・・。必要なときに必要なものが買えるありがたさ、会いたいときに会いたい人に会える幸福を、今、日本でも実感しています。
文:Irene
世界中で、屋内にとどまり、人となるべく接触しない生活が続いています。連日のニュースに不安が増しますが、この動画の歌を聞いたときは思わず笑って(そして少し泣いて)しまいました。長期戦だからこそ、 厳しい 状況を常に念頭に置きながらも、笑いやリモートでの「触れ合い」を大切にしたいです。