短期間で伸びた、僕の英語スピーキング学習法【中山哲成さんインタビュー】

短期間で伸びた、僕の英語スピーキング学習法【中山哲成さんインタビュー】

『30歳高卒タクシードライバーがゼロから英語をマスターした方法』の著者で、多数のメディアで取り上げられている、名物タクシー乗務員の中山哲成さんに、英語での接客エピソードを伺いました。1回目のおもしろ接客エピソード、2回目の達成感が得られる英語学習法に続いて、3回目は「短期間で習得できたスピーキング」についてお届けします。

スピーキングに特化したから、短期間で効率よく力が伸びた

2019年10月、私が初めて書いた本『30歳高卒タクシードライバーがゼロから英語をマスターした方法』が世に出ました。読んでくださった方からは、「中山さんの赤裸々な挫折体験を読んで励みになった」という声をたくさん頂きました。

第一線の通訳者や翻訳者に、私はとてもかないません。それでも30歳を過ぎて仕事の合間に勉強し、比較的短期間で成果を上げられたことに、読者は興味を持ってくださったのでしょう。自分としては、「こうやれば最短で英語力は伸びるのでは?」と考えたことを、そのまま実行してみた結果だと思っています。

私の勉強法には2つの柱があります。

1つ目の柱は、学習目的を「英語が話せるようになる」という一点に絞ったことです。これは確実に言えますが、テスト対策と英語を話す訓練とは、まったくの別ものです。TOEIC や大学受験に出てくる高度な単語は、接客や日常会話では通常そんなに必要ありません。ですから私は、自分ではめったに使わないような「難しい単語」は最初から覚えませんでした

その代わりに、よく使う単語やフレーズに特化して、何度も声に出して会話練習をしました。ほかにも、週に数回のオンライン英会話、制限時間内で短い英文音読を繰り返すパワー音読など、試行錯誤しながら、あらゆる練習方法を試しました。

こうして話すことだけに集中したので、効率的に練習ができ、短い期間で英語が話せるようになったのだと思います。

単語やフレーズは、使っていれば自然と身に付く

英語学習を諦めてしてしまう原因として、「単語が覚えられなかった」という人は、案外多いのではないでしょうか。私もそうでした。脈略のない情報をやみくもに暗記することが、苦手だったからです。必死に単語を覚えて、短期記憶に貯蔵できても、しばらくすると全部忘れてしまっています。

そこで単語の暗記はあきらめて、「キクタン」を使い、英語を隠して日本語の例文から、英文を作るという方法に変えました。英単語との出合い方を、変えたわけです。

英文を読んだり、英語で映画を見たり、仕事で外国人のお客さまと話したりしていると、「これは使えるな」「よく出てくるな」という単語やフレーズに、いくつも出くわします。そういう使用頻度が高い単語やフレーズは、頑張って暗記などしなくても、自然と記憶に定着し、それだけで、スピーキングの用はほとんど足りてしまいます。

本物の料理人は、冷蔵庫の余り物でおいしい料理を作ると言いますが、難しい単語をがむしゃらに頭に詰め込むのは、料理を覚える前に、珍しい食材ばかりを集めているようなものかもしれません。むしろ手持ちの材料を使って、おいしいチャーハンや雑炊を作ろうと、発想を変えてみるのも一案ではないでしょうか。

大量の英文メールを書くうちに、スピーキングも流ちょうに

2つ目の柱はライティングです。この4年間、とにかく大量に英語の文章を書きました。Skypeで日本語学習者のチューターをしていたので、レッスンが終わった後にその回の要点をまとめて、コメントを添えた英文メールを、生徒さんたちに送るのが習慣でした。その中の何人かとは、個人的なメールのやりとりりもするようになりました。

それを一定期間続けていたところ、不思議なことに、たどたどしかった英語のスピーキングが、なぜか流ちょうになってきていることに気付きました

その場の会話と違って、文章を書くときはある程度、時間をかけて考えられます。作った文章をネット翻訳にかけ、通じるレベルかどうか確認することもできます。そんなふうにして文章を書き続けるうちに、よく使うフレーズは調べなくても書けるようになりました同時に、会話でもそのフレーズがスラスラ出るようになったのです。

毎日英文メールを書いたおかげで、適切な英語表現を思い付くまでの時間は縮まり、英語で発想する訓練もできました。だから結果的に、スピーキングの力を伸ばす上で、ライティングがとても役に立ったと実感しています。

子音とアクセントを意識して苦手だったリスニングを克服

英語学習で私が一番苦しんだのは、実はリスニングです。英語がまとまった形になって耳に入ってこない状態が、ずっと続いたのです。英語というのは、実は子音が決め手です。全部しっかり聞こうとせず、子音とアクセントに意識を置いて聞くようにしたところ、やっと英語が塊で耳に入ってくるようになりました

意味がわからない英語の音声を何百回聞いても、突如、意味を理解できるようにはならないと思います。聞いたことを文字に起こしてみる。知らない単語は調べる。何度も音読して、語句と音とを一致させていく。そうやって、英文全体の意味や、何をどう発音しているのかがわかるようになると、次に聞いたとき、初めて「あ、わかる!聞き取れる!」となります。

私なりの独学ですが、リスニングについてはそういう感覚です。聞き取りの力は、話す力が上達するにつれて、自然と上がっていくこともあり、今は自分がまったく知らない単語以外は、ほぼ問題なく聞き取れます

文法は英語の取扱説明書

もう一つ、英語というと文法の勉強も付きものですね。私の考えでは、文法は英語の取扱説明書です。例えば、新しくテレビを買ったとき、説明書を開くのは、色調整や録画操作を確認するためですよね。まずやりたいことがあって、その方法を知るために、説明書を見るのです。

英文法も同じです。英語で表現したいことが前提としてあり、それを正確に伝えるためのルールを教えてくれるのが文法です。

「こういうことを話すにはどうすればいいかな」と思ったときに都度その方法を調べて、あとは覚えたことを貯めていく。必要な時に必要なことを調べるわけですから、文法というのは辞書とよく似ているなと思います。

自分に合う学び方を見つけることが英語習得の最短コース

私のタクシーに、カナダ人のファッション ジャーナリストが乗車したことがあります。英語が通じるとわかると、「日本の若者がよく服を買う、ガイドブックに載っていない人気の店を知らないか」と尋ねられました。そこで、東京といっても、青山、表参道、銀座、渋谷、新宿と、地域ごとに特色があって、今この辺りではこんな服がはやっていると話しました。

お客さまは目を輝かせて聞いていました。そして半日貸し切りで、案内してくれないかというのです。そのときは都合がつかずお断りしたのですが、これは印象的な出来事でした。観光案内といっても、ガイドブックにあるような定番ではなく、実生活の東京の情報を求めている方もいるのです。会話では英語力だけでなく、プラスアルファの部分も大切なのだと思いました。とおりいっぺんの丸暗記英語だけでは、たぶんこういう会話には対応できなかったでしょう。

さて、この3回の連載の最後に、ENGLISH JOURNAL ONLINE(旧GOTCHA!)のいち愛読者として、英語仲間の皆さんにエールを送りたいと思います。なかなか英語力が伸びないときのつらさは私も経験していますが、英語力の伸び悩みは能力の問題などではありません

今悩んでいる方も、英語の勉強を諦めないでください。

人には必ず、その人に合った勉強のやり方があり、それを続けることが最短コースだと私は思います。私の勉強法が、あなたのベストだと言うつもりはありません。いろんなやり方を試して、自分が無理なく学べる方法を見つけていただきたいと思います。そして英語ができる人生を、ぜひ一緒に楽しみましょう。

中山哲成さんが参加した、2018年10月19日に羽田空港で開催の「タクシー接客英語コンテスト2018」の様子。 

中山哲成さんの本
30歳高卒タクシードライバーがゼロから英語をマスターした方法

30歳高卒タクシードライバーがゼロから英語をマスターした方法

 

中山哲成(なかやまてつなり)

タクシー乗務員。英語学習法の本『30歳高卒タクシードライバーがゼロから英語をマスターした方法』の著者。『PRESIDENT』、イギリス経済誌『The Economist』など、多数のメディアで取り上げられ大注目。「タクシー接客英語コンテスト2018」最優秀賞受賞。
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文: 田中洋子/写真:山本高裕/構成:増尾美恵子