北九州市立大学准教授であり、言語学者でもあるアメリカ人のアンちゃんの連載「かなり不思議な日本語の世界」。第7回は、一見英語のように思える「ホームパーティー」を取り上げます。日本とアメリカとでは、何がどのように違うのでしょうか。
日本の「割り勘」にびっくり
日本に来たとき、私は日本人はどんだけお酒が好きなの?と不思議に思っていました。私は、24歳までお酒は一滴も飲んだことがありませんでした。理由はいろいろありましたが、とにかく一切飲まない人でした。
でも、日本のホームパーティーに行ったら、必ず「お酒は何がいいですか」と聞かました。「私は飲まないので、ジュースお願いします!」と答えたら、誘ってくれた人は本当に悲しそうな顔をしていました。一緒に飲みたかったみたいです。
ホームパーティーも多かったですが、飲み会もよくありました。実はアメリカでは、「割り勘」という考え方がありません。だから、日本に来たときは、バリびっくりしました。
麦茶と焼き鳥だけしか食べていないのに、何で5000円も払わないといけないの?
イヤだ!
だから、飲み会に行くのはやめて、忘年会だけに行くことにしました。
ホームパーティーと飲み会。両方とも日本人にとって大事なもののようです。でも、アメリカにこれと全く同じものはありません。だから、英語にも訳しづらいです。
というわけで、今回はホームパーティー用語を解説していきます。そして、次回は飲み会について語ります。さて、始めよう!
ホームパーティーは英語でなんて言う?
「ホームパーティー」は和製英語です。英語ではいろいろ言い方がありますが、一番自然なのは dinner か party だと思います。例えば、こんな感じに使います。
I am having a party at my house tomorrow night. Ten people are coming over, so I am running around crazy.
明日、ホームパーティーをするからバタバタしています。10人も来るからヤバイ!
ちなみに、「バタバタしている」とか「行き当たりばったり」と言いたいなら、ぴったりでとても面白い慣用句があります。
running around like a chicken with its head cut off
頭を切り落とされたニワトリのように走り回る
ニワトリは頭を切り離されても、しばらく走り回ります。忙しく走り回る人を例えて、こういう表現を使うんです。
I am leaving for a trip to the U.S. tomorrow and I still have a million things to do, so I am running around like a chicken with its head cut off.
明日、アメリカに発ちますが、まだやらなければならないことが山ほどあって、バリバリバタバタしています。
最初に「ホームパーティー」の英語として dinner と party を挙げましたが、日本のパーティーにはどちらかというと dinner のほうが近いかもしれません。
その理由は、party という言葉に「何かの特別なイベント」という感じがあるからです。例えば、誕生日パーティー、卒業パーティー、クリスマスパーティーなどです。だから、別に何かを祝うわけではなく、ただ人が家に来て食事を楽むような場合は、dinner を使うといいでしょう。
Yesterday, my husband’s co-workers came over for dinner.
昨日、旦那の同僚がホームパーティーに来た。
Hey, why don’t you guys come over to my house for dinner sometime?
いつか、家でホームパーティーしよう!
少し高級なパーティーであれば、dinner と party を合わせて、dinner party。この言葉のニュアンスは、みんなおしゃれな洋服を着て、おしゃれなコース料理を食べるようなことです。
home party は英語ではありませんが、通じる可能性はあります。ただし、house party とは言いません。
house party と言うと、大学生が開くような、乱暴なワイルドパーティーのイメージがあります。100人来て、みんな酔っ払って、音楽がバリうるさい感じです。
もし、そんなパーティーを開くのであれば、house party を使ってもいいですが、そういうパーティーをしない人が使ったら、勘違いされるかもしれません。気を付けてね!
日本とアメリカ、パーティーの違い
ところで、日本のホームパーティーとアメリカの dinner は、食事の雰囲気が異なる気がします。もちろん家庭によって違うと思いますが、アメリカの dinner の場合、友人や同僚が来て、まず、前菜のようなものを食べます。例えば、ポテトチップスとかクッキーとか。そして、メイン料理、その後にデザートを食べて、帰ります。たぶん2、3時間で終わります。
でも、日本のホームパーティーはめっちゃ長い!終わらん!食べ物が永遠に出てくる、マジで!(牛みたいに)一日中食べているような気がします。私は以前、8時間くらい続いたホームパーティーに行ったことがあります。アメリカにいたとき、こんな長いパーティーにはあまり行ったことがありませんでした。
この長いパーティーに似たものを一つ挙げるとしたら、それはアメリカンフットボールの最大イベント「スーパーボール」です。
Super Bowl Parties はかなり有名です。試合が始まる前から、ポテトチップスやビールを取り、数時間かけてピザ、サンドイッチ、デザートなどを楽しみながら、試合を観戦します。私の経験では、この「スーバーボール・パーティー」が、日本のホームパーティーに最もよく似ていると思っています。バーベキューをするときも、めっちゃ長くなるときはありますが……。
今の私には、ホームパーティーも dinner も、とにかくどっちも楽しいです。お酒をちょっと飲めるようになったので、「ジュースください!」を言わなくてもよくなりました。
いろいろな飲み物を指す、日本語の「ジュース」
さてさて、「ジュース」も和製英語だって知っていました?
日本語の「ジュース」には、いろいろなものが含まれます。例えば、コーラ、ポカリスエット、ファンタ、ジンジャーエール、カルピス、リンゴジュースなど。でも、英語の juice が指すのは、100パーセント果汁だけです。
この違いに気が付いたのは、あるとき学生に「ジュースを買ってきてね!」と言ったら、コーラやポカリを買ってきてくれたからです。ほとんどの日本人はこういう微妙な違いに気付かないかもしれませんが、私はこういう違いにとても興味があります!
それでは英語でジュースはなんて言えばいいの?
Can you buy some drinks?
ジュースを買ってきてもらえますか。
これが一番いいでしょう。炭酸飲料は soft drink(s) ともいいますが、まずはシンプルにdrink(s)。これだけでいいと思います。
だから、Can you buy some juice? と頼まれたら、100パーセント果汁のリンゴジュースとかオレンジジュースしか買わないこと!気を付けてね!
パーティーといえば「持ち寄り」!
最後に、パーティーといえば「持ち寄りパーティー」があります。でもそれって英語ではなんと言うのでしょうか。
答えは potluckです。
We are having a potluck party at my house and I’d love to have you!
家で、持ち寄りパーティーをするから、来てね!
Is it a potluck? If so, I have to make something for it.
あのパーティーは持ち寄りなの?なら、何か作らないといけない。
potluckと言っても potluck party と言っても大丈夫です。
まとめ
私は日本のホームパーティーが大好きです。なぜかというと、おしゃべりも好きだし、食べることも大好きだから。
日本人のおもてなし精神は半端ない!誰かの家に行くといつもそれを感じます。ちなみに、おもてなしは英語でいうと、hospitalityです。
Japanese hospitality is the best!
日本人のおもてなしは半端ないって!
昔の私はお酒を飲みませんでしたが、それでもホームパーティーが大好きでした。次回は、今まで嫌いだったけど大好きになった「飲み会」について書きます!お楽しみに!
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