言いたいことを日本語から英語にすると、冗長な英文になってしまう……。そんな悩みはありませんか?連載「その英語、一言で言えます!省エネ英単語」では、日英翻訳を多数手掛ける翻訳者の遠田和子さんに、簡単な英単語を使って簡潔に的確に表現する方法を紹介していただきます。今回のテーマは「数量表現」です。
今回のテーマは「数量表現」
英語を書いていてなんだかもどかしく、「もっと簡単に言えないの?」と思うことはありますか?スマートな英語表現に憧れる皆さんに、シンプルなのに多くを語れる「省エネ英単語」を紹介します。
今回は、 前回まで とは少し趣向を変えて、「数量表現」を取り上げます。
ビジネスの世界では、金額、台数、倍数など「数量」に関する話題がよく出てきますね。数量の表現を英語にしなければならないことも多いでしょう。そこで、数に関する英語を「省エネ」モードで書くコツを紹介します。ポイントは、「 意味の濃い動詞 」を効果的に使うことです。
「総数・総額」の表現
初めに、次の文を英語にしてみましょう。
先月の応募者の数は全部で2500人だった。日本語の文の主語が「数は」なので、英語の主語は number でいいだろう。「全部で」は、辞書を引いたら in total が載っていたから、これを使おう。このように考えると、次のような英文になります。
△ The number of applicants was 2,500 in total last month.文法的には問題ありませんが、もっと簡単に書けます。実は、number は名詞だけでなく動詞でもあります。number を他動詞で使うと、「合計・総数で~となる」を表します。
Applicants numbered 2,500 last month.最初の文は10語だったのに、たった5語で同じ意味?はい、そうです。動詞 number には「全部で」という in total の意味が含まれているので、in total は必要ありません。in total を付けると、「【全部】で【合計】~になる」という重ね言葉になってしまいます(「電【球】の【球】」みたいな表現)。
number だけではありません。total も同じ意味の動詞として使えます。こんな感じです。
Applicants totaled 2,500 last month.これも5語ですね。このように普段は名詞として覚えている number や total を動詞で使うと、バシッと簡潔な英文が書けるのです。「省エネ」のコツは、「応募者の数」ときたら、「数= number」ではなく「応募者= applicants」に注目して、後者を主語に選ぶことです。
次の例も同様です。
広告費の総額は400万円に上った。このように、「広告費の総額」をそのまま the total amount of advertising expenses とすると英文が長くなります。ここでも、広告費= advertising expenses を主語にして、動詞 total が使えます。△ The total amount of advertising expenses reached 4 million yen.
Advertising expenses totaled 4 million yen.シンプルな英文になりました。もう一つ似た例を見てみましょう。
特別展の来場者の総数は3万人だった。もうお分かりですね。主語を「数= number」から「来場者= visitors」に変えて、total または number を動詞にすれば、簡潔に言えます。△ The total number of visitors to the special exhibition was 30,000.
Visitors to the special exhibition totaled 30,000.
Visitors to the special exhibition numbered 30,000.
「合計・総計」を使わない表現法
上記の文「特別展の来場者の総数は3万人だった」は、主語を「特別展= the special exhibition」にすることもできます。この場合、別の動詞を考えなくてはなりませんが、「展覧会」の場合は「引き付ける・引き寄せる」を表す draw や attract が使えます。
The special exhibition drew / attracted 30,000 visitors.また、「3万人が特別展に訪れた」という英語を書いてもOKです。動詞は、名詞 visitor から発想して visit を使います。
Thirty thousand people visited the special exhibition.ここで、英文ライティングのルール「数字でセンテンスを始めてはいけない」を覚えましょう。文頭に数が来る場合は、30,000 ではなくスペルアウトして Thirty thousand と書きます。
「倍」の表現
次は、「倍」の表現です。次の文を英語にしてみましょう。
わが社の生産能力は以前と比べて2倍に増えた。「増える= increase 」、「2倍= twice または two times」と考えると、次のような英文になるかもしれません。
△ Our production capacity has increased to twice as much as before.この例でも、効果的な動詞を使うと、語数を半分以下に減らすことができます。その動詞とは、「2倍に増える」を1語で表す double です。
Our production capacity has doubled .11語から5語になりました! 「以前と比べて2倍に増えた」の部分は、現在 完了 形 has doubled により2語で表現 できています。次の文はどうでしょう。
給料が以前の2倍になりました!こんなせりふを言ってみたいものです。ここで twice as much as を使うと語数の多い英文になります。
△ My salary is twice as much as before!動詞 double を使って、半分の長さにしましょう。
My salary has doubled !インパクトが強いのは、短い方の英文ですね。動詞 double でパンチを効かせると、給料が倍になった喜びが鮮やかに伝わります。
「3倍になる」も「半分になる」も動詞1語で表せる
「2倍になる・倍増する= double」の使い方が分かったら、ぜひ、「3倍になる」を表す動詞 triple も覚えてください。次の文で考えてみましょう。
市の人口は10年前と比べて3倍になった。上記では、「3倍の」に対して three times を使っています。しかし「3倍になる」は triple の1語で言えます。△ The population of the city is three times as large as it was 10 years ago.
The city’s population has tripled in the past decade.動詞 triple を使う以外にも、the population of the city を the city’s population に、10 years を decade に言い換えて引き締めた英文です。
最後に、1/2倍、つまり「半分」の表現を見てみましょう。
その会社の株価は以前の半分である。間違ってはいませんが、なんだか冗長な印象です。この例では、どんな「省エネ」動詞を使うことができるでしょうか?実は、half には動詞の形 halve があります。△ The stock price of the company is a half of what it used to be.
The company’s stock price has halved .語数は半分以下!the stock price of the company はこの文のように、所有格の company’s を使って the company’s stock price としてもOKです。
今回は、数にまつわる表現として動詞の number、total、double、triple、 halve の使い方を紹介しました。
「意味の濃い動詞」は、「省エネ」英語を書く鍵です。通常は名詞や形容詞として覚えている単語を 動詞として用いると、英文がギュッと引き締まる ことがあります。ぜひ試してみてください!
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文:遠田和子(えんだ かずこ)
日英翻訳者、ライター。著書に『究極の英語ライティング』(研究社)、『Google 英文ライティング』『英語「なるほど!」ライティング』(共に講談社インターナショナル)、『あいさつ・あいづち・あいきょうで3倍話せる英会話』(講談社、共著)などがある。訳書は『Love from the Depths ― The Story of Tomihiro Hoshino』(立風書房)、『Rudolf and Ippai Attena』(講談社、共訳)など。 https://www.wordsmyth.jp
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