「ズキズキ」「ガンガン」は英語でどう言う?痛みのオノマトペを英語で表現してみよう

日本に在住して18年。北九州市立大学准教授であり、言語学者でもあるアメリカ人のアンちゃんが、英語に訳しにくいオノマトペを題材に例文や英訳ポイントを紹介します。「あの日本語、英語でどう訳す?」いろいろな表現を一緒に考えてみましょう。

今日のテーマ「痛み」のオノマトペ

オノマトペとは、「ドキドキ」「わくわく」など音や声、状態や動きなどを音で表した語のことです。連載1回目で、オノマトペは下の5つのカテゴリーに分けられるとお伝えしました。

  • 擬声語(動物と人間が出す音)
  • 擬音語(自然と物が出す音)
  • 擬態語(状態を表す音)
  • 擬容語(動きを表す音)
  • 擬情語(感情を表す音)

この連載のおかげでいろいろ勉強になっています。私は日本語がペラペラだけど、正直、オノマトペにはあまり自信がありませんでした。だから、担当編集者からこの企画の執筆依頼が来たときは「私にできるかな?」と迷いました。でも、人間はなんでもチャレンジしたほうがいいと思っているからやることにしました。勉強は一生ものなんだ!

自分の母国語でも、毎日新しい発見があります。「この単語を知らなかった!」「そんな意味もあったの?」と、たまに思わない?この連載のおかげで、勉強になったり、オノマトペの魅力がはっきり見えてきました。だから、今日も、楽しく一緒にオノマトペを勉強しよう!

今日は、11月15日にアンちゃんの新しい電子書籍『即使える「病院英語」ハンドブック』が出版されたのにちなんで、「痛み」にまつわるオノマトペを取り上げます。さて、始めよう!

1. ズキズキする(throbbing)

初めて日本語の「ズキズキ」を習ったときのことはよく覚えています。

その日は急に頭が痛くなって死にそうでした。こんなことは滅多にないので、「何これ?!」と思いながらすぐ近くの病院に行きました。病院に行く前に友達に、「どうやってthrobbingという英語の表現を日本語で表すと?」と聞いて教えてくれたのが「ズキズキ」だったのです。

ずっとオノマトペに悩まされていたけど、辛い経験を通してやっと1つのオノマトペを身につけたなぁと思いました。今それは私の人生のテーマです。「試練から絶対にいいことを得る!」といつも前向きに考えています。

先生は、「風邪」だと診断したけれど、誰よりも自分の体を知っているアンちゃんは、「いや、これは風邪じゃない!」とすぐわかりました。こんな痛みと熱は初めてでした。結局、別の病院に行ったら髄膜炎だった!もう一生あんな痛い思いをしたくないなぁ!

とにかく、例文を見てみよう。

歯がズキズキする。
My tooth is throbbing.

頭がズキズキする。
I have a throbbing headache.

耳がズキズキする。
I have a terrible earache.

2. ガンガンする(pounding)

英語では、「ズキズキ」のthrobbingと「ガンガン」のpoundingはすごく似ています。入れ替えてもいいくらい意味が近いです。日本語の「ガンガン」には、ハンマーで頭を叩いているようなニュアンスがありますね。例文を見てみましょう。

頭がガンガンする。
My head is pounding.
I have a pounding headache.

意味はほぼ一緒ですが、I have a pounding headache.のほうが自然な感じがします。

3. じんじんする(tingling)

英語では「じんじん」することをtinglingと言います。

足がじんじんする。
My foot is tingling.
I have a tingling sensation in my foot.

「じんじんする」と「しびれる」は似ているやろう?

「しびれる」もtinglingと言うけれど、一番自然な言い方はMy foot is asleep. です。直訳すると、「足が眠っている」です。面白いやろう?

ちなみに、今私は三味線を習っています。正座をしないとなかなか良い音が出ないから、私の足はずっと眠っている感じがします(笑)。ひどいときは立ち上がれません。そして、やっと立ち上がれたと思ったらこけそうになります(笑)。正座は大変バイ!

茶道で2時間もずっと正座をしていたので、足がしびれて歩けなかった。
I sat Japanese style on my knees for two hours, so my legs were asleep and I couldn't walk.

ヤバイ!手がしびれて、何も書けない!
Yikes! My hand is asleep and I can’t write anything!

4. きりきり痛む(stabbing pain)

お腹がきりきり痛むことは、I have a stabbing pain in my stomach.と言います。それから他にも、「きりきり」を覚える方法があります。

「きりきり」は英語のkill(殺す)に相当似ています。こういう痛みを表したいときに慣用句っぽく、“~ is killing me!” と言います。

My head is killing me!
My back is killing me!
My tooth is killing me!

直訳すると、「~が痛くて死にそう!」ですが、きりきりする痛みを表すのにちょうどいいと思います。他にも自然な表し方を3つ紹介します。

横腹がきりきりと痛む。
I have a sharp pain in my side.
I have a stabbing pain in my side.
I have a piercing pain in my side.

sharp の反対語は dull です。

横腹に鈍い痛みがある。
I have dull pain in my side.

こんな風に使います。

5. ちくちくする(pricking pain)

私が経験した病気の数はハンパないけど、この表現を聞くことが多いのは採血するときです。注射の針を刺す前に必ず「ちくっと(ちくちく)しますよ!」と言われます。ずっと意味がわからなかったけど、何年か経ったあとやっとわかりました。

私はちくちくする痛みに強いバイ!ピアスは13個空いてるしタトゥーもあります。バリ痛い!と思ったことはありません。だから注射や採血も平気です。けれど、私の日本人の友達はちくちくする痛みが苦手です。ピアスでさえ無理だから、タトゥーなんてとんでもない!

そんな私も、陣痛や結石の痛みはバリバリ苦手です。3人目の子どもが生まれた後、もう二度と、あの拷問みたいな痛みを経験したくないと思いましたが、その後3回経験した結石の痛みは、残念なことに陣痛にすごく似ていました!最低!

今から注射をします。ちくっとします。
I am going to give you a shot. I will sting a bit.

ちくちくするような痛みはイヤだ!
I really hate pricking pain.

背中がちくちくする。
I have a prickling pain in my back.

6. ポキポキ鳴る(to crack)

年を取るに連れて、この日本語はどんどん大事になってくるよね?(笑)

私は小さい頃、緊張するとよく指の関節をポキポキと鳴らしました。英語で「関節を鳴らす」は、to crack one’s knuckles と言います。そうすると、母親や周りの人によく、Stop cracking your knuckles!と注意されます。それでも止めなかったからか、指の関節がバリバリ太くなっていて、なかなかサイズが合う指輪がありません。

立ち上がったとき、関節がぽきぽき鳴った。
My joints cracked when I stood up.

指の関節を鳴らさないで!
Don’t crack your knuckles!

7. ひりひりする(smart、sting)

英語のsmartは意味が多すぎない?

アメリカ英語のsmartには、「頭が良い」という意味があります。そして、イギリス英語のsmartには、「細くてカッコいい」という意味があります。でもここで言うsmartには「ひりひりする」という意味があります。例えば、

ボールに当たってとてもひりひりする。
It really smart when I got hit by the ball.

痛い!ひりひりする!
Man, that hurts! It really smarts!

もう1つの言い方は、stingです。

火傷したとき、肌がひりひりした。
My skin really stung when I burned myself.

さいごに

この間、同僚とオノマトペについて話していたときに彼はすごく興味深いことを言っていました。

英語の動詞の単語、例えば今回で言うとpound、sting、crack、smartなどには、日本語のオノマトペが表すような「痛みの種類」があらかじめ含まれています。一方、日本語は、「○○と痛む」と言わないと、一体どういう痛みなのかがわかりません。

「ずきずきと痛む」=throbbing、「じんじんする」=tingling 。もちろんこの説は全部のオノマトペに当てはまらないけど、結構考えさせられました。

みなさんに病気にならないでほしいけど、もしなったときには、この記事の表現を使って痛みの種類をお医者さんに説明することができたら、何よりもうれしいです。

お大事に!

アン・クレシーニ
アン・クレシーニ

アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。著書に『アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!』(合同会社リボンシップ)。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページも更新中! 写真:リズ・クレシーニ

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