2018年4月にスタートしたNHKの「ラジオ英会話」の講師、大西泰斗先生の新刊が出ました!その名も『ハートで感じる英文法 決定版』。「ラジオ英会話」のリスナーはもちろん、英語やり直しに挑戦したい大人におすすめの1冊です。どんな本なのか、早速見てみましょう!
英文法は暗記しなくていい!
現在完了、仮定法、原因、経験、結果……。文法書を開いた途端にこうした難しそうな言葉が目に飛び込んでくると、そのまま本を閉じてしまいたくなりますね。
しかし、本書ではそんなことはまずありません。もちろん、文法用語は出てきますが、大西先生によれば、「文法項目は単なる暗記事項ではなく、それぞれの項目は感覚的に納得できるものであり、暗記をしなくても自由に使いこなせるもの」。
日本語訳や用法を覚えるのではなく、ネイティブ・スピーカーの感覚やイメージをつかもうという考え方です。
確かに、英語を話すにしろ聞くにしろ、いちいち「これは現在完了の経験の用法だな」などと分析しながらやっていたのでは間に合いませんね。もちろん、ネイティブもそんなことはしていないでしょう。ある「感覚」が身に付いていて、それをもとに話したり聞いたりしているのです。
だったら、その「感覚」をつかんでしまおうというのが本書です。
現在完了は「迫ってくる」
例として、苦手な人も多い「現在完了」はどんな感覚なのか見てみましょう。よくある文法書では、現在完了には、完了、経験、継続、結果の4つの用法があると解説されています。
しかし、この4つを理解して覚えたとしても、「えっと、これは過去から現在に至るまでの継続的状況を表しているから……」とやっていたのでは会話になりません。
大西先生によれば、現在完了の基本イメージは「迫ってくる」。これだけです。
現在完了でもっとも基本的な感覚は「迫ってくる」。「今現在」に向かってググッと迫ってくる、そうした動きを持った感覚です。
※本書p50より引用
これに対して、過去形は現在とは切り離されていてます。
例文で比較してみましょう。こちらは現在完了を使ったもの。
He has worked for the same company all his life.
彼はこれまでずっと同じ会社で働いている。
上の文では、現在完了が継続用法で使われています。「同じ会社で働いている」ことが現在にググッと迫ってくるので、この彼は今現在もこの会社で働いているというわけです。
それに対して、過去形を使った次の文ではどうでしょうか。
He worked for the same company all his life.
彼は生涯同じ会社で働いていた。
こちらは、単純な過去形のため、彼がそのその会社で働いていたことは現在とは切り離されています。昔の話なのですね。おそらくこの彼はすで亡くなっていて、生きている間はずっと同じ会社に勤めていたのでしょう。
現在完了=「迫ってくる」という感覚が身に付いていれば、簡単に区別できますね。
会話文だからよく分かる!
文法書に例文が載っているのは当たり前。本書の特長は、その多くが会話文になっていることです。会話文になっていると、ネイティブが会話する際に感じている「感覚」がよく分かるのです。
こちらは現在完了の結果用法の例文です。
A: Stop!! Don't sit on that bench!
B : Why not?
A: I've just painted it.
現在完了を使うことで、「ペンキを塗った」という事実がググッと現在に迫ってきます。ペンキを塗ったばかり⇒まだ濡れている⇒座っちゃダメだよ、というわけですね。
ちなみに和訳はこちら。
A:ストップ!そのベンチに座るな!
B:なんで?
A:ペンキ塗ったばかりだから。
「ペンキを塗ったばかりだから(濡れているから、座っちゃダメだよ)」というニュアンスになります。
これを過去形にするとどうでしょうか。
I painted the bench.
ベンチを塗った。
ベンチにペンキを塗ったという事実は、「今とは無関係の、静止した過去のできごと」になるため、「濡れてるよ!座っちゃダメだよ!」というニュアンスが出ないのですね。
この違いは、例文が会話文になっているからこそ強く実感できます。
英会話にも、TOEICなどの試験にも役立ちそう
全体を通して、くだけた感じの話し言葉で書かれているのも本書のポイント。大西先生のレッスンを実際に聞いているようで、とても読みやすく、勉強しているという感覚がありません。厚さ2.5センチのボリュームのある本ですが、「分かった!」という感覚がうれしいので、どんどん読み進めることができます。
この本で、ネイティブが持つ感覚をしっかりつかめれば、英会話はもちろん、TOEICや英検などの試験にも効果がありそうです。
英語のやり直しをしたい大人に、おすすめします!
構成・文:浦子
「夫が浮気してたのが今わかったの」「ジョーのガールフレンドとソファにいるところをジョーに見つかったんだ」など、艶っぽい例文も。そういう意味でも大人におすすめです。