バンコク出張で訪れたい工業団地、ビジネスエリア

これからタイとのビジネスを始めたい人、タイ出張・駐在を控えている人たちに向けて、現地で役立つ情報をQ&A形式でご紹介します。第3回は「バンコクに出張に行く前に知っておきたいこと」です。

Q バンコク近郊にある工業団地の効率的な回り方は?

事前に それぞれの特徴や立地を 把握する と、効率的な視察ができます。">A 事前に それぞれの特徴や立地を 把握する と、効率的な視察ができます。

 

タイの工業団地にはタイ工業省の関連公社IEAT(タイ工業団地公社)の運営によるものと、民間企業の運営によるものがあります。すでにタイ進出を決めていて 具体的な 進出先を探している場合、各工業団地の窓口や不動産会社に連絡をします。オフィスや工業団地の専門部署を持つ不動産会社もあります。業種や 予算 に応じた物件が紹介されるので、アポを取ってから出かけましょう。

稼働中の工場を見ることはできませんが、貸工場や工場予定地は見ることができます。設備や条件などの正確な情報を得るためには通訳を雇いましょう。「進出は決まっていないが、現地の工場を見たい」といった場合は、日本で募集されている「タイ工業団地視察ツアー」をネット検索などで見つけて利用しましょう。

IEATの工業団地は名称に「~インダストリアル・エステート」がつきます。IEAT系工業団地のメリットは①外資企業でも土地購入が可能、②外国人労働者への労働ビザと労働許可書の 取得 の援助、③事業開始時に各種 手続き を一括で行える、などの恩典にあります。

一方、民間の工業団地の名称は「~パーク」「~ゾーン」「~エリア」が付きます。物件価格はIEAT系の工業団地よりも2~3割安めです。

日系企業の入居が多いタイの工業団地では、日本人または日本語を話せるスタッフが常駐している場合もあります。各工業団地の詳細を知りたい場合や視察の申し込みなどは、各工業団地の窓口に直接連絡してください。 以下、各工業団地の特徴を紹介します。

●アマタ・ナコーン・インダストリアル・エステート

バンコクの東隣のチョンブリ県にあり、バンコク市内から57キロ。日系企業が最も多く集まる工業団地で1200万坪の敷地に約500社が入居しています。バンコク通勤圏内で、かつスワンナプーム国際空港にも近い(42キロ)のが魅力です。貿易 拠点 となるレムチャバン港へも46キロです。日本語窓口あり。

●アマタ・シティー・インダストリアル・エステート

タイ最大の貿易港であるレムチャバン港まで27キロと近く、大手自動車メーカーに部品を供給する工場が多数入居しています。バンコク市内まで114キロ、スワンナプーム国際空港まで99キロ。日本語窓口あり。

●イースタン・シーボード・インダストリアル・エステート(ヘマラート)レムチャバン

港まで30キロ弱。約400社が入居し、その半分が自動車関連です。ゼネラルモーターズやいすゞ自動車などの自動車メーカーの 拠点 となっています。バンコク市内までは117キロ。日本語窓口あり。

●ジェモポリス・インダストリアル・エステート

スワンナプーム国際空港からわずか2キロ。宝石や電子部品、医療機器など小型製品の 加工 を行う企業約150社が入居しています。バンコク市内へは30キロです。

●アジア・インダストリアル・エステート

スワンナプーム国際空から20キロ、またバンコク港(クロントイ)や市内へも40キロと近く、日野自動車など日系企業も多く入っています。日本語窓口あり。

●ロジャナ・インダストリアル・パーク

アユタヤ県にある工業団地で、エレクトロニクス関連企業を中心に、自動車・自動車部品・食品などの企業の工場があります。バンコク市内からは70キロ。ドンムアン空港がメインの国際空港だった時代、空港に近い団地として開発された経緯があります。入居する企業200社強のうち、4分の3が日系企業です。日本語窓口あり。

視察の回り方と移動方法

同一エリアにある工業団地はまとめて回りましょう。今日はスワンナプーム国際空港近く、明日はラヨーン県の物件という具合です。1カ所にかける時間にもよりますが、午前に2カ所、午後に2カ所ぐらいの視察が平均的でしょう。午前7~8時にバンコクを出て、午後4時くらいまでの視察が理想。終業前に工業団地を離れないと、帰宅ラッシュに巻き込まれ、バンコクへの戻りが夜遅くなる場合もあります。移動は通常、車をチャーターすることになります。日系のリース会社なら、日本語でやりとりや打ち合わせが可能。レンタル料は運転手付き乗用車で8~10時間で3000バーツくらいから。運転手は英語や日本語が話せない場合が多いので、予約の時点で、担当者にスケジュールを細かく伝えておきましょう。

Q 観光ガイドに紹介されていない、バンコクのビジネスに関連するエリアは?

A 日系企業は主にシーロムやサトーン、アソークと呼ばれるエリアに集中しています。

 

観光客が訪れる場所と、日本人のビジネスパーソンに縁が深いエリアは異なります。以下、 具体的に 説明します。

●シーロム地区、サトーン地区

シーロム通りとサトーン通りは、タイで一番のビジネスタウン。バンコク銀行など有名企業の本社が多数あります。三井住友銀行やキヤノンなど日系企業のオフィスも集中しており、日本人向けの歓楽街タニヤも存在します。 ここからラマ4世通りを隔てたルンピニ公園の東側には日本大使館があります。また、ここから北のウイッタユ通りにはアメリカを含めた欧米の大使館が集中しており、欧米企業も多数あります。 同時に 、それらの企業で働く外国人向けのコンドミニアムやしゃれたレストランもあります。

●アソーク地区

アソーク周辺も、日系企業が多い場所です。駐在者が多く住むプロンポン地区やトンロー地区に近いことと、かつて日本大使館がこの通りにあったことにより、以前からこのエリアには日系企業のオフィスがありました。BTS(高架鉄道)とMRT(地下鉄)の開通後は、さらにその数が増えています。最近は市場調査や本格進出の足がかりにするための日系企業向けレンタルオフィスもできています。ただ交通渋滞はバンコクでも最も激しく、車での移動は困難です。

SET (タイ証券 取引 所)はアソーク通りを北に上がったラチャダーピセーク通りにあります。またアソーク通りとスクンビット通りの交差点を南下すると、クイーンシリキット国際会議場があります。この大型展示場では年に2回、タイ・インターナショナル・トラベル・フェアが開かれ、日本の有名観光地や各自治体もブースを出しています。またダウンタウンの中心に近くて便利なことから、観光以外にも家具や出版、ペットなど、さまざまな業種のトレードフェアが開催されています。

●プロンポン地区、トンロー地区

日本人の在住者が多いエリアです。外国人やこのエリアにステータスを感じる中間層以上のタイ人をターゲットにした飲食店が集中しています。日本からも続々と飲食店が出店する、激戦区です。少し東に行ったエカマイ通り(日本食レストランや日本の商品を主に売る店が集まったモール「ゲートウェイエカマイ」があります)やオンヌット通りにも、日本人を含めた外国人向けのコンドミニアムやショップが次々とできています。家賃が年々高くなるアソーク地区中心部から離れ、このエリアに住む外国人が増えているからです。

●官庁街

首相官邸があるのはバンコク中心部の西、ラチャダムノン・ノック通りです。この周辺と、そこから西南に少し下ったラタナーコーシン地区に官公庁が集まっています。BTSやMRTを利用できず、車しか移動手段がないため、アクセスに苦労するエリアです。

Q バンコクで小売業・サービス業などの市場調査をする場合、どのように視察すればいい?

A バンコクにもエリアごとの特徴があります。多数のエリアを見て回ることで、消費動向の特徴を肌で感じられるようになります。

 

視察の時間帯としては、ビジネスマンのランチの様子を見るなら、午前11時半~午後1時半ごろ、富裕層の婦人たちの買い物風景を見るなら、午後から夕方にかけてが狙い目です。午後3時ぐらいからは、大学生なども町に出てきます。タイのビジネスマンは通常、午後5時ちょうどに仕事を終えるので、彼らの動向を探るならこの時間帯から。ファミリーやカップルを狙うなら、週末のショッピングモールがおすすめです。 モールでの写真撮影を 希望 する場合、許可が必要 かどうか はモールにより異なります。必要な場合は、担当部署に申請して撮影許可を取ります。無許可での撮影は後でトラブルになる 可能性 があります。1日で富裕層、中間層、庶民層(低所得層)の消費動向を一通り 把握 したいなら、以下のエリアを回ってみてください。

●ラチャプラソン通り周辺:富裕層・中間層・若者層

まず外せないのは、「バンコクの銀座」とも言うべきラチャプラソン通り周辺です。バンコクを代表するショッピングモールである「セントラルワールド」「ゲイソーン」などもあります。道路を隔てて、その向かいにあるサイアムスクエアは若者の情報発信基地。すぐ近くにタイの東大と呼ばれるチュラロンコーン大学もあります。

露店が集まる複合施設のMBK(マーブンクロン)も地元客と観光客でにぎわっています。ここは東南アジアならではの小売り形態として見ておく価値あり。同様の露店が集合する施設として、BTS(高架鉄道)モーチット駅近くで開かれる週末限定のチャトチャック・ウイークエンド・マーケットもあります。

●アソーク周辺:中間層

街の目抜き通りであるスクンビット通りのアソーク周辺は、BTSとMRT(地下鉄)の連絡駅があることから、人気上昇中のエリアです。タイの音楽業界最大手のグラミー社などがあり、ビジネス街としても発達。アミューズメントパーク型のモール「ターミナル21」や周囲にはビジネスマン向けのレストランやバーがあり、中間層以上に人気の場所です。

●プロンポン周辺:富裕層

日本人駐在員の家庭が最も多く住むのが、BTSプロンポン駅~BTSトンロー駅周辺です。そのため日本食レストランなどが密集しており、日本人をターゲットにしたビジネスを考えているなら必ず訪れたい場所です。また高級デパートの「エンポリアム」や「エムクオーティエ」もあります。スクンビット通りを少し東に行ったトンロー通りには日本人向けの店以外にも、おしゃれなレストランやバーがあり、東京で言えば青山や表参道といった趣き。流行に敏感なタイ人の間で人気の高いエリアです。

●ラムカムヘン・バンカピ・ラップラオ周辺:庶民層

それぞれバンコクの北東、北、西に位置します。タイの庶民層マーケットの動向をうかがうなら、このエリアが最適です。ドラッグストアチェーンの「マツモトキヨシ」は、タイ1号店をこのエリアのショッピングモール「セントラルラップラオ」にオープンしました。周辺には約20万人の学生がいると言われ、庶民層に対するマーケティングの場として適しています。

バンコクの中心部は新規に開発する土地がない状態で、現在、東西の方向に発展の波が広がっています。東のバンナー周辺には多くのコンドミニアムやモールが建設され、西のチャオプラヤ川周辺も再開発中で2017年には高島屋がオープンの予定です。

視察時の移動方法

バンコク市内は、渋滞を避けてBTSとMRTを使うのが効率的です。BTSの乗車券はカード式。券売機で購入しますが、硬貨しか使えません。そのため、十分な硬貨がない場合、カウンターで紙幣を両替して、あらためて券売機で買うことになります。しかし、中心部の駅のカウンターは朝夕のラッシュ時には行列ができています。移動のたびに両替をするのは時間の無駄なので、RABITというSuicaのようなプリペイド式カードを使うのが賢明です。カウンターでの購入時に使用料50バーツ(約150円※レートは2016年8月現在)+デポジット50バーツ(約150円/カード返却時に戻ってきます)+チャージ分の料金を払います。1日乗り放題のカードは140バーツ(約420円)で購入できます。

MRTはプラスチック製のトークンと呼ばれるコイン型乗車券を使用。こちらの券売機は紙幣も使え、カウンターでトークンを購入することも可能です。プリペイド式カードはBTSと共通ではなく、MRT用に180バーツ(約540円/使用料30バーツ+デポジット50バーツ+チャージ分100バーツ)で 別途 購入することになります。 問題はBTSやMRTがない地区への移動ですが、その際はタクシーを使うのが基本。しかし、やはり渋滞が問題になります。そんなとき、運河ボートを使うのも手です。 ただし 、濁った川水が降りかかってきて、スーツが汚れる恐れも あるので注意しましょう。

 

文:梅本 昌男 ライター、1963年生まれ。1993年にワーキングホリデー制度を利用してカナダへ。現地の邦字紙記者、ベルリッツの日本語教師を経て、フリーライターに。カナダに9年滞在の後、2001年よりタイのバンコクへ 拠点 を移す。現在、タイと東南アジア諸国に関する記事をJAL機内誌『アゴラ』ほか日本の媒体に寄稿している。

タイとビジネスをするための則55

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