大量の英語を「通訳して!」と言われてもあわてなくなったワケ

英語によるミュージカルと音楽と教育ワークショップに 取り組む 非営利団体「ヤングアメリカンズ」。そのヤングアメリカンズのキャストとして世界で活躍している日本人や、ヤングアメリカンズのキャストを経て、人生を切り開いた人によるリレーコラムをお届けしています。リレーコラムの第3回は、松本英莉さんです。

こんにちは。松本英莉です。私は2012年にヤングアメリカンズに入団してから、世界を周ってショーとワークショップをするアウトリーチツアーに8回出演しました。そのうちの4回はジャパンツアーです。ジャパンツアーでは、通訳を任されることもあり、緊張します。今回の記事では、私がヤングアメリカンズの一員になってから、英語がすらすら出てくるようになるまでの経験をお伝えします。

 

日本人キャストの試練は日本公演での通訳

海外ツアーでは、ワークショップやキャスト同士の打ち合わせを、少しぼんやりしてて聞き逃してしまっても 安心 。というのも、日本人というハンデがあるから、後から誰かに聞いても、怒られずにもう一度説明してくれるからです。そんな風にのんきに考えていたところがありましたね。

ところが、ジャパンツアーになるとそうはいきません。私たち日本人キャストが情報伝達の役割をしなければならず、 英語で矢継ぎ早に喋られた後に「エリ!今私が言ったこと訳して!」なんてこともしょっちゅう です。一日中気が抜けません。

自宅で英語教室を開いている母に、私は子どものころから英語を教えてもらっていたので、英語はなんとか話せました。でも、通訳の経験は全くありませんでした。

初めての日本ツアーのワークショップ初日、日本語へ英語へと切り替わる私の脳みそはパンクしそうでした。ホームステイ 先に 着いて夕食を頂いてすぐ、布団でバタンキューでした。翌日一緒にステイしていたイギリス人キャストに「エリ、昨夜寝ぼけて私にずっと日本語で話しかけてたの覚えてる?」と笑いながら言われました。

伝われば、完璧である必要はないと分かった!

ワークショップの数をこなしていくうちに、一語一句完璧に訳そうとしていたからこんなに頭が疲れるんだと気づきました。 アメリカ人キャストが伝えたいことを一度自分の中に吸収し、相手の年齢やワークショップの雰囲気によって伝わりやすいように、分かりやすい日本語に変換する。そのような通訳を心がける ようになりました。

私たちキャストはいつも子どもたちに、ダンスや歌を間違えてもOK!自分の全力を出せばそれが完璧!と教えます。それは私たちキャストも一緒。

初めは通訳を間違えてしまったり、知らない単語が出てくるのを恥ずかしく感じていたのですが、完璧にできなくて当然!と割り切ってからは、 通訳中に分からない単語があってもみんなの前でその場で、今の単語どういう意味?と聞き返します。

すると すぐに 私に分かりやすい単語に言い直してくれます。日本語訳を言い間違えて「あ、ごめん!間違えちゃったー!」と言い直すと子どもたちも笑いながら受け入れてくれます。

私が通訳に対してオープンになれたからこそ、キャストとの信頼関係も深まり、だんだん私の通訳しやすい英語で話してくれるようになったりしました。

ホストファミリーが望めば、英会話や通訳もします

「子どもの英語教育のためにホームステイ受け入れをしたから、本当は外国人のキャストに来てほしかったんだよね」なんて言われることも、日本人キャストには珍しくありません。

最初は、私、受け入れられてない!?としょんぼりしました。ヤングアメリカンズの活動目的は英語教育だけでなく、音楽や情熱をたくさんの子どもたちに国を越えて届けるためにツアーをしています。それでも国際交流の観点でホームステイを引き受けてくださっていたのなら仕方がないことなのかなと思います。

なのでホームステイ中はなるべく英語で話して欲しいと言われればもちろん 協力 しますし、英語が話せないご家庭であったら喜んで通訳もします。ただ、私たち日本人キャストは「通訳の人」ではなくて、「日本語が話せるヤングアメリカンズ」であって、キャストの一員であるということも分かってもらえたらとうれしいです。 

生まれた国や言語が違う人たちの架け橋になりたい

2014年夏にヤングアメリカンズとして広島を訪れたときのこと。ワークショップ前日のオフに、キャスト全員で原爆ドームと平和記念公園を訪れ、被爆者の方から直接お話を聞く機会を頂きました。

キャストも私自身も、その話に何か感じるものがあったのでしょうか。翌日のワークショップでフィナーレのダンスを教えていたとき、アメリカ人のキャストの一人が、子どもたちに向かって涙を流しながら、「私たち、70年前は友達じゃなかったでしょう。でも今はこうやって、みんなで手を繋いで、笑い合って、一緒に踊っている。これをみんなで祝福しながら踊ろう!」と言ったのを私が通訳しました。

そのとき、会場全体がひとつになったのを感じ、 通訳とは生まれた国や言語が違う人たちの架け橋のような重要な役割なんだと肌で実感し、通訳という役割を担えることを誇りに感じるようになりました。

ワークショップに参加してみない?

私はジャパンツアーと海外ツアーを半々で経験しましたが、 海外の子どもたちに比べ、日本の子どもたちは素直で真面目。 ワークショップで教えた内容をきちんと復習して次の日来てくれる子が多いです。 一方で少し引っ込み思案な子も多いですが、それも個性のひとつ だと思います。

ヤングアメリカンズは子どもたちの違いを大切にします。雰囲気になじめるか不安な方、無理に合わせようとせず、その子のペースで大丈夫ですので、 安心 して参加してみてください。

ヤングアメリカンズ・ジャパンツアー2018春

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文:松本英莉
2012年ヤングアメリカンズ入団。日本を含むアジア各国、アメリカ、ヨーロッパ各国、オーストラリア、南アフリカなどを団員としてツアーでまわり、子どもたちへ教育活動を行う。現在はヤングアメリカンズを卒業し、日本国内で活動中。

編集:honeybun

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