今回はPart 2の中でも苦手な方が多い、「捻った応答」の問題について考えます。「間接的応答」や「変化球の応答」と呼ばれることもあります。一筋縄ではいかない意外な応答にも対応できるように、まずは「捻った応答」にはどのようなタイプがあるのか見ていきましょう。
間接的な応答
Part 2では、質問に直球では答えていない応答が正解になることがあります。例えば「誰がこのキャンペーンの責任者ですか」という設問文があるとしましょう。「誰が」と聞いているので、人の名前や肩書きを答える応答は素直で想像しやすいですね。では、「知りません」や「まだ決まっていません」だったらどうでしょうか。実は、こうした応答が「間接的な応答」の頻出パターンの一つなのです。以下に、「間接的な応答」をパターン別に整理しましたので、確認してみましょう。
設問文:Where is the seminar going to be held?
セミナーはどこで開かれるのですか?
応答パターン①:「知らない」などと答える
例
I’m not sure. 分かりません。
We’re still deciding. まだ決めているところです。
Let me check. 調べてみます。
応答パターン②:発言の内容について聞き返す
例
Which seminar? どのセミナーのことですか?
応答パターン③:ヒントを与える
例
You should ask Meagan. メーガンに聞いてください。
Didn’t you read the email this morning? 今朝のメールは読まなかったのですか?※メール以外にも、Web site(ウェブサイト)やdirectory(案内板)を見るように提案されることがあります。
応答パターン④:設問文の前提を否定する
例
It’s been canceled. キャンセルされましたよ。
状況依存型の応答
「間接的な応答」よりも厄介なのが、「状況依存型」と呼ばれるタイプの応答です。その名の通り、会話が行われているときの状況や前後の文脈によって応答が左右されるという問題です。Part 2の問題では、直前の会話の内容も、話し手が置かれている状況も、短い設問文から想像するしかありません。そのため、状況や文脈を想像するのは、より難しく感じられるはずです。
では、例をご覧ください。
設問文:Isn’t the client meeting starting at 10?
顧客ミーティングは10時に始まるのではないのですか?
この設問文は否定疑問文でミーティングの開始時刻を問うています。否定疑問文には、確認の用法や、予想と異なることに対しての驚きを表す用法がありますが、この設問の否定疑問文がどちらの用法なのかは、応答文とセットになって初めて明らかになります。
応答パターン①
We still have plenty of time.
十分に時間がありますよ。
この応答の場合は、「ミーティングは10時に始まる予定でもう時間がない」と慌てている様子の人に対して、「(開始時間はもっと遅いから)まだ時間はある」となだめているということになります。
応答パターン②
They must be running late.
彼らは遅れているのでしょう。
この応答の場合は、設問文は、ミーティングの参加者がまだ到着していないために、ミーティングの時間は10時で間違いがないかを確認しているものだと考えられます。
応答パターン③
Sorry, we’re just finishing up.
すみません、ちょうど終わるところです。
この応答の場合、ミーティングの時間が近づいているのに他の業務が終わっていない参加者がいることがうかがえます。
このように、応答文を聞いて初めて設問文の意図が確認できるのが、状況依存型の特徴の一つです。応答にもさまざまなパターンがあり得るのですが、「どのような意図の発言か」と「どのような応答がありそうか」を想像しながら設問の音声を聞くと、正解を選びやすくなるはずです。書籍『 TOEIC(R) L&Rテスト Part 2 リスニング解体新書 』には多くの例文を掲載していますので、ぜひご活用ください。
「捻った応答」問題への対策
「捻った応答」問題で正解を選べるようにするには、どのような対策をとればよいでしょうか。
まず、「間接的な応答」の項目で挙げたような頻出パターンは覚えておきましょう。表現は違っても、似たような意味の応答が出題される可能性が高いので、試験本番でも「あ、こういうパターンがあったな」と正解が選びやすくなるはずです。
また、消去法を活用することも大変有効です。聞き取ることさえできれば、不正解の選択肢は明らかに不正解だと言えるからです。この問題例をご覧ください。
設問文:Isn’t the client meeting starting at 10?
顧客ミーティングは10時に始まるのではないのですか?(A) No, I didn’t. いいえ、私はしませんでした。
(B) A twelve-page contract. 12ページの長さの契約書です。
(C) We still have plenty of time. 十分に時間がありますよ。
「状況依存型の応答」のパターン①に不正解の選択肢を追加しました。(A)では「私」が何を「しなかった」のか、全く不明ですし、(B)は顧客ミーティングの時間とは関係が見出せません。Part 2では、応答文を聞き取ることさえできれば、このように除外できる選択肢が並んでいるのです。ただし、「捻った応答」問題特有の難しさは避けることができるものの、消去法を活用するためにはすべての選択肢を聞き取らなければなりませんから、高いリスニング力が必要とされることには変わりはありません。
「捻った応答」問題への対策のうち、短期でできることは限られています。長期的には、さまざまな英語の素材に接して経験を積み、設問文のニュアンスを汲み取ったり、発言の裏の意図を推測したりすることができるようになれば、どのような応答がもっともしっくりくるのかを絞り込みやすくなります。
「捻った応答」問題で試されている、話し手の意図を理解する能力やそれに応じた答えを返せる能力は、TOEICテストだけでなく、実際に英語で会話をするときにより一層必要となるものです。楽しく会話ができるよう、学習を続けていきましょう! 次回以降では、平叙文や否定疑問文など、苦手とする方が多い設問パターンへの対策についても取り上げますので、お役立てくださいね。
書籍『 TOEIC® L&Rテスト Part 2リスニング解体新書 』でも、Part 2対策に有効なトレーニング方法をコラムでご紹介しています。ぜひお読みください。
語彙力&フレーズ力を磨く、おすすめの本
ネイティブと渡り合える、知的で洗練された英単語力。
本書は、アルクの『月刊ENGLISH JOURNAL』(1971年創刊~2023年休刊)に掲載されたネイティブスピーカーの生のインタビューやスピーチ、約300万語のビッグデータから、使用頻度の高い英単語300個を厳選し、一冊に編んだものです。
すべての英単語は日本語訳、英英定義、例文と共に掲載、無料ダウンロード音声付きで、読んでも聞いても学べる英単語帳です。また、難易度の高い単語をしっかり定着させるため、穴埋め問題やマッチング問題、さらに構文や使用の際に気を付けるべきポイント解説も充実しています。伝えたいことが明確に伝えられる、上級者の英単語力をこの一冊で身に付けましょう!
英語中級者と上級者の違いは、的確で、気の利いたフレーズ力!
50余年の歴史を持つ、アルクの『月刊ENGLISH JOURNAL』(1971年創刊~2023年休刊)に掲載されたインタビューやスピーチ約300万語というビッグデータの中から、頻出する英語フレーズ300個を厳選。日常会話やemail、SNSではよく使われているのに、日本人が言えそうで言えない、こなれたフレーズを例文と英英定義と共に収載しました(全音声付き)。
厳選した300種類の穴埋め問題&マッチング問題を通して、「見てわかる」のレベルから「自分でも使える」ようになるまで、しっかり定着させます。上級者への壁をこの一冊で打ち破りましょう!
難関大を目指す受験生が英単語を「極限まで覚える」ための単語集
大学入試などの語彙の問題は、「知っていれば解ける、知らなければ解けない」ものがほとんど。昨今の大学入試に登場する単語は難化していると言われており、文脈からの推測や消去法では太刀打ちできない「難単語の意味を問う問題」が多数出題されています。こうした問題をモノにして、周囲に差をつけるには、「難単語を知っていること」が何よりのアドバンテージです。