ハーバード大学やイェール大学など、世界の名門大学の講義が動画で見られる時代。今回は、通訳・翻訳者で英語教育の研究にも携わる佐々木南実さんが、プリンストン大学のオンライン講座を体験します。
目次
大学の理念の中には、何らかの形で「世界を良くする」ことは必ず掲げられているだろう。しかし、アイビーリーグ大学のレベルになると、世直しも人類目線。MOOC(Massive Open Online Course)で「最高の学びをすべての人に」届けている。ここでは、MOOCで学べるスキルや知識に対する評価基準について、紹介していこう。
MOOC情報専門サイトで比較・分析
MOOCで学習するとどんな資格が得られるのだろうか。MOOC情報専門サイト「Class Central」が2018年7月に発表した、MOOCにおける取得資格の分析を見てみよう。
ここでは最もメジャーなMOOCプラットフォームであるCourseraとedXに注目していくが、その他のプラットフォームに関する分析も含めた記事の全体は下記をご覧いただきたい。
無料という魅力もさることながら、MOOCのすごさは一流大学の単位、ひいては学位取得につながる講座が用意されている点だ。
たとえば、MOOCの一つedXでは、マイクロソフト社やハーバード大が提供する講座を修了すると証書が得られる。Courseraでは、Googleプロフェッショナルの認定証や、ジョンズ・ホプキンス大学によるデータサイエンスの修了書などが取得できる。
参考:MOOCにおける単位の種類と学費

高等教育のモジュール化は専門性アップのチャンス!?
早くもガラパゴスの様相を呈するMOOCの世界。このトレンドをClass Centralの記事は「高等教育のモジュール化」と呼ぶ。そして、モジュールと化したマイクロクレデンシャルには、まだ統一の評価規準は用意されていない。
通常の高等教育は、第三者機関などによって品質保証が成されているわけだが、マイクロクレデンシャルはプラットフォームごとに商標登録されており、品質での比較がしづらいものだ。類似する内容のものもあり、受講する人も、それを履歴書上で評価する人もよく分からなくなってしまうのである。
いずれは、プラットフォームを横断する評価システムが構築されたり、MOOCの品質保証を担う第三者機関なども登場するのかもしれない。しかし、それまでは当分、有名大学や企業のブランドが、マイクロクレデンシャルを選ぶ規準となりそうだ。
というわけで、ハーバード大学、イェール大学と聴講してきた本シリーズ。次はBIG 3の残り一校、プリンストン大学の講座を見てみるとしよう。
アメリカの時事解説誌『U.S.News and World Report』による2017年の世界大学ランキングでは堂々の一位。小説『グレート・ギャツビー』の著者、F・スコット・フィッツジェラルドをはじめ、ジョン・F・ケネディ、ミッシェル・オバマなどを卒業生にもつ、正真正銘のトップ大学である。あなたのキャリアアップを支える黄金の通行手形がここで手に入るかも!?
1時限目:Networks: Friends, Money, and Bytes(ネットワーク:友達、お金、ビット)ムン・チャン教授
Princeton University via Coursera
中国生まれ、香港育ち。スタンフォード大学に現役合格後、以降アメリカの学術界でスピード出世を続けるエンジニアリング界の星、チャン教授の講義はいつも身近な事例で始まる。
そして、もはやケータイなしでは生きていけないわれわれの、さまざまな行動の裏側を支えるアルゴリズムを説き明かしてくれるのだ。
6人と「友達」になれば世界とつながるという「六次の隔たり」、グーグルを世界一にした「ゲーム理論」、ザワザワしたカクテル・パーティーのような状況でも会話が成り立つ脳の仕組み――これがCDMA(※1)となんの関係が?今夜映画に行くか、チャン教授の宿題をやるか?あなたの人生を最適化させる選択は?など、面白そうな20の質問をもとに講義が展開していく。
とはいえ、導入はキャッチーだが、中身の専門性は高いのでエンジニアリングの知見がない人には難しいかもしれない。逆に、エンジニアリングを学んだ経験のある人なら、興味をかき立てられるだろう。
講座の紹介ビデオはこちら。
予習のための推奨読書
2時限目:Making Government Work in Hard Places(厄介な場所での政府運営)ジェニファー・ウィドナー教授
Princeton University via edX
本コースは、多様な国の政府や国際組織で働く実践家たちによるオムニバス形式の講義で進んでいく。「ステークホールダー(※2)をマッピングしてみよう」「国際復興開発銀行(世界銀行)で行われているケース・スタディーの手法」など、実践的な講義がぎっしりだ。
毎回、自分のエレベーター・ピッチ(短いプレゼン)を用意してくることが宿題で、ディスカッションのフォーラムではさまざまな国からの学生たちにも出会えそう。
ここから自分のグローバル・コミュニティが広がっていく、そんな予感を持たせてくれる授業である。国際協力などに興味のある人には最適のコースだろう。
講座の紹介ビデオはこちら。
ウィドナー教授の著書の和訳が見あたらなかったので、そもそもグローバルってどういうこと?と考えたときに読むと良い本、入江昭先生のクラシックをおすすめさせていただく。
予習のための推奨読書
やり遂げるのは自己責任。だけど学びは、ひとりじゃない
MOOCは、われわれの目の前に突如現れた巨大な「学び」への扉。巨大すぎて最初はちょっと足がすくんでしまうかもしれない。場所も時間も問わずに勉強できるということは、便利だけれど、裏を返せばとても孤独なことのようにも思えてくる。
でも、そんな時は、世界中から集まっているクラスメイトたちのことを思いだそう。宿題をちゃんとやって、フォーラムで発言して、友だちを作ってみよう。
下記に紹介するエイデルマン教授の世界史ラボでは、ルワンダやヨルダンの難民を現地からネットでつないで授業に参加してもらう予定だという。
現代の難民問題を、当事者の声を通して、学ぶ世界史ラボ。こんなにリアルでダイナミックな教室環境が実現する世の中になったのだ。さあ、世界に飛び出そう!
というわけで今回は、プリンストン大学の門をたたいてみました。次回以降もMOOCの向こうに無限に広がる知の世界を主体的に探究し続けますよ!
プリンストン大学が提供するその他のコース
Global History Lab(グローバル・ヒストリー・ラボ)
来日するたびに東京大学に招かれる、ジェレミー・エイデルマン教授がリードする世界史ラボ。
どんな力が人類を分断し、結びつけていくのか?エイデルマン教授とゼミ生たちが用意してくれたケーススタディ資料に、世界がグローバルな場になっていく過程を、世界中から参加する学生たちが「自分の歴史観」を適応させることによって解き明かして行こうという世界初のラボ(実験室)だ。Bitcoin and Cryptocurrency Technologies(ビットコイン、クリプトカレンシーの技術)
このコースを修了すれば、ビットコインはじめ暗号通貨の「うそ」と「真実」がすっかり見分けられる人になる。
ビットコインの基礎的な構造から、なぜビットコインが特別なのか?自分のビットコインは果たして安全なのか?などの質問を投げかけながら、暗号通貨の未来についてまで、考えてみよう。Algorithms, Part I(アルゴリズム入門)
日本語でも多くの著書が出版されているロバート・セジウィック教授による「アルゴリズム入門」。プログラミングの基本を勉強したい人におすすめ。
このコースを終えたらAlgorithms, Part II、そして上級者向けのComputer Architectureへとコマを進めよう。もはや何が書いてあるのか一般人には分かりません!
※1 同じ周波数帯の電波を複数のユーザで効率的に共用する無線通信方式の一つ。
※2 企業・行政・NPO等の利害と行動に直接・間接的な利害関係を有する者のこと。
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