ハリー・スタイルズの最高傑作、3rdアルバム『Harry’s House』【EJ Culture 音楽】

写真:Lev Radin/Sipa USA via Reuters Connect

「今聴いてほしいアーティスト」と関連する楽曲を音楽が伝えるメッセージや社会的・音楽的文脈などと合わせて高橋芳朗さんが解説します。

今月のアルバム

ハリー・スタイルズの3rdアルバム『Harry’s House』を紹介します。


2011年にイギリスのボーイズグループ、ワン・ダイレクションのメンバーとして世界中で社会現象を巻き起こしたハリー・スタイルズ。グループ活動休止後の2017年に「Sign of the Times」でソロデビューを果たし、今年5月リリースのサードアルバム『Harry’s House』は米英チャートで初登場1位を獲得した。

イギリスが誇るポップスターの最高傑作

2020年に「Watermelon Sugar」で初の全米シングルチャート1 位を獲得、2021年の第63回グラミー賞では最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞を受賞、そして今年、世界最大規模の音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」でヘッドライナーを担当。2016年のワン・ダイレクション活動休止を受けてソロ活動をスタートさせ、本格派のシンガー・ソングライターとして年を追うごとにスケールアップしていくハリー・スタイルズ。5月リリースのサードアルバム『Harry’s House』はそんな彼の勢いが感じられるキャリア最高傑作だ。


細野晴臣の名盤 『Hosono House』 (1973)からインスピレーションを得たという『Harry’s House』は、ハリーの心の状態を「家」になぞらえた内省的な作品。既に米英のチャートを制した先行シングルの「As it Was」はその象徴的な楽曲で、過去の苦悩や孤独と決別して新しい人生を踏み出そうとするハリーの現在の心境が率直につづられている。

Holdin’ me back / Gravity’s holdin’ me back / I want you to hold out the palm of your hand / Why don’t we leave it at that? / Nothin’ to say / When everything gets in the way / Seems you cannot be replaced / And I’m the one who will stay / In this world, it’s just us / You know it’s not the same as it was

引っ張られている/重力に引っ張られている/手のひらを差し出して/このままでいようよ/言うことはない/全てが邪魔になったとき/君の代わりはいないから/僕はどこにもいかないよ/この世界にいるのは僕らだけ/今までと違うって分かるだろ?

ここでハリーが「僕ら」と歌っているのは、2021年から交際している俳優/映画監督のオリヴィア・ワイルドと思われる。彼女が監督した今秋公開の『ドント・ウォーリー・ダーリン』で、ハリーはフローレンス・ピューと共に主演を務めている。

細野晴臣の名盤『Hosono House』(1973)



ハリー・スタイルズがライブでカバーした楽曲5選

今回の記事で紹介している音楽のプレイリストをご紹介します。現在は北米ツアー中のハリーがライブで披露した曲を聴いてみよう!


  1. Big Yellow Taxi by Joni Mitchell
  2. The Chain by Fleetwood Mac
  3. Girl Crush by Little Big Town
  4. You’re Still the One by Shania Twain
  5. Wet Dream by Wet Leg Listen!

ハリー・スタイルズのアルバム

2nd アルバム『Fine Line -Digi-』


ソロ・デビュー・アルバム『Harry Styles』


「EJ Culture Music」で取り上げた楽曲をSpotifyで公開中!

これまで『ENGLISH JOURNAL』の連載「EJ Culture Music」で取り上げてきた楽曲をSpotifyで公開中です。次のURLからご利用ください。

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※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年9月号に掲載した記事を再編集したものです。

EJ
高橋芳朗(たかはし・よしあき)

音楽ジャーナリスト、ラジオパーソナリティ、選曲家。TBSラジオ「ジェーン・スー生活は踊る」にレギュラー出演中。著書に『ディス・イズ・アメリカ「トランプ時代」のポップミュージック』(スモール出版)、『生活が踊る歌』(駒草出版)など。

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