新型コロナウイルスの感染 拡大 に伴う緊急事態宣言の5月末までの延長が発表されましたが、世界の中には感染が収束した後の「出口戦略」を考えている国もあります。今回は、新たに注目を集めている「移動手段」をご紹介します。
今回のニュースな英語
active transport世界を震撼させている新型コロナウイルスですが、中には、ロックダウン(外出規制、外出禁止令)を解除した後の「出口戦略」をすでに検討している国や都市もあります。
新型コロナウイルスと共存していくために、私たちの生活をどう変えていくのか。その中で注目されているのが、今回ご紹介する 「 active transport」 。 自転車や徒歩など、人力による移動 です。
環境にやさしい移動手段
世界保健機関(WHO)は、 コロナ流行中の移動手段として、運動量と対人距離のどちらも確保できる、自転車や徒歩を推奨 しています。またアメリカのマサチューセッツ工科大学は、ニューヨークで感染 拡大 の大きな要因となったのは、混雑した地下鉄だったとする研究結果を発表しました。
こうした中、世界の都市では、ロックダウンが解かれた後の交通手段のあり方を見直す動きが出ています。
例えば、イタリアでコロナ被害がもっとも深刻だったロンバルディア州のミラノでは、22マイル(35キロ強)の道路で、自転車レーンを作ったり歩道を広げたりする計画が立てられています。またフランスのパリは、3億ユーロ(約350億円)をかけて自転車レーン網を敷設する予定です。
メキシコのメキシコシティは、80マイル(129キロ弱)の道路を一時的に自転車レーンとして使う計画を立てています。イギリスでは、ロンドンやマンチェスターなどで、歩道幅を広げたり、一部の道路を自動車侵入禁止にして自転車や歩行者の専用にしたりする計画が発表されています。
「 active transport」が広がることにより、 自動車交通量が減り、空気汚染が 改善 するという利点 もあります。新型コロナウイルスの致死率は、空気の汚染度と関係があるとする研究も出ており、「 active transport」はコロナ重症化対策としても効果があるかもしれません。
さらに、 二酸化炭素排出量が抑えられるため、地球温暖化対策にもなります 。ヨーロッパでは以前から、脱自動車を目的に自転車や歩行者用のインフラ 整備 が進められていた都市もありました。コロナ対策で、この動きが加速したといってもいいかもしれません。
どんなふうに使われている?
イギリスの「ガーディアン」紙は、「 active transport」へのシフトを次のように伝えました。 ちなみに ここに出てくるグラント・シャップス氏とは、イギリスの運輸相のことです。
Grant Shapps also suggested that the government was considering measures to encourage workers to take “ active transport”: cycling or walking to work .シャップス運輸相のこの発言は、イギリスの公共放送BBCの番組『アンドリュー・マー・ショー』に出演したときのものでした。このとき同相は、 「 active transport」を「 active travel」や「 active mobility」と言い換えながら、自転車や徒歩での移動だと説明 していました。グラント・シャップス氏はまた、仕事に向かう人たちがいわゆる「アクティブ・トランスポート」(自転車や歩き)で出勤するように促すための 施策 を、政府が検討中であることを示唆した。
メディア記事でも、自転車と徒歩のことだと注釈が付いているものが少なくありません。英語圏でもまだ認知度が低い表現なのかもしれませんが、きっと 今後は 見る機会が増えていくでしょう。
www.theguardian.comまとめ
新型コロナウイルス感染症の 拡大 が収束に向かっても、ウイルスと共存しなければならないのなら、私たちの生活のあり方も見直しが必要になるでしょう。
その一つとして、空気を汚染する自動車や、対人距離の確保が難しい公共交通機関ではなく、「 active transport」と呼ばれる自転車や徒歩にシフトする動きが世界各地で起きています。
地球温暖化の問題にも 有効 であるため、 今後も この動きはますます広がる 可能性 がありそうです。
文:松丸さとみ
フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。
Blog: https://sat-mat.blogspot.jp/
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