世界を相手にビジネスを行うためには、英語力だけでなく、多様な文化を受け入れるためのグローバルマインドセット、つまり視野の広いもののとらえ方が必要となります。本コラムでは、経営コンサルタントのロッシェル・カップさんにグローバルマインドセット獲得のヒントを教えていただきます。
「日本人は動くのが遅い!」
あるアメリカ人のコンサルタントが、あなたの会社とビジネスをしています。仕事についてどう思うか彼の意見を聞いたところ、「イライラして精神的に参っている」との答えが返ってきました。「日本人は動くのがとても遅い!だから決断に時間がかかり過ぎる。そのうえ、いつもたくさんの質問をしてきて追加情報を求めてくる。僕はこのやり方になじめないよ」。
このようなコメントを聞いたとき、あなたならどのように反応しますか?
「リスクに対する姿勢」の文化的な違い
アメリカ人から上記のようなコメントを聞いたら、【a】 のように相手は不満を言っていると 判断 し、その 原因 についてあまり考えない日本人が多いかもしれません。
しかし実は、日本企業を相手に仕事をしている外国人の間には、こういった悩みが多いのが事実です(このコンサルタントの言葉の選び方がいささかきついのは別として)。
その背景には、「リスクに対する姿勢」の文化的な違いがあります。 このチャートの左の方の文化の人は、リスクや間違いを避けたがります 。そのため、物事を進めるに際も慎重かつ保守的です。最善策を選択するために、前もって情報をたくさん集め、それを 分析 し、さらにそれを話し合うことを好みます。そういったことを 実施する には、時間がかなりかかるので、リスクを避けたい文化の組織は動きがあまり早くないのが特徴です。なお、事前調査やディスカッションが十分にできないと満足がいく決断をできないと感じ、前に進めないこともあります。これも動きを遅くしてしまいます。
対照的に 右側の文化の人は、リスクを冒すことに抵抗がなく、失敗することを厭(いと)わない 傾向 があります 。「失敗は成功のもと」と思っているからです。そのため、事前の情報収集や 分析 をあまりしなくても素早く行動できます。綿密に計画するより、試行錯誤、実験的な進め方を好みます。
原因 と文化的な違いを理解しよう">不満の 原因 と文化的な違いを理解しよう
日本はかなり左の方に位置していますが、海外の多くの文化は、より右側に位置しています。例えば、移民と開拓者から成り立っているアメリカやオーストラリア、海を航海するバイキングを祖先とするスウェーデンやデンマークなどが、右の文化の典型です。
こういった違いは、価値観や仕事のやり方の根本を成しているので、自分と正反対の位置の文化的背景をもつ相手に対し、疑問、不満、いら立ちを感じることは多いでしょう。しかし、 相手のやり方は文化的相違を反映していることを認識し、うまく対応することが必要 です。例えばこのケースで、【b】 を選ぶのは、アメリカ人のコンサルタントの不満の 原因 を解明することができるため、良い選択です。日本の会社はどんな情報を必要としているのか、その情報をどんな形でまとめたらいいのか、そしてどんな過程で意思決定のプロセスが進むのかについて説明することで、相手も自分の不満の 原因 となる文化的違いを理解できるはずです。また【c】のように、アメリカの会社やり方について教えてもらうことは非常に参考になるでしょう。文化の違いについて学べば学ぶほど、ビジネスにおいても役立つ発見も多いはずです。
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編集:GOTCHA!編集部執筆:ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長。
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日本語が堪能で、『 反省しないアメリカ人をあつかう方法34 』(アルク)、 『英語の品格』 (集英社) をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
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