topとstopの「t」は発音が違う? 6種類の「t」を発音し分けよう!Part 1

コロンビア大学大学院で英語教授法を学んだサラさんが、すぐに実践できる発音のコツを教えてくれる連載、「コロンビア大学TESOLサラの英語発音ジム」。今回は、英語学習者ならまずは押さえておきたい6種類の「t」の発音の特徴と見分け方を解説してくれました。

こんにちは、英語ジム らいおんとひよこ®代表のサラです。第2回、第3回では「アメリカ英語とイギリス英語の発音の違い」を2回にわたって取り上げ、アメリカ英語発音で押さえておきたい16のポイントを概観し、冠詞や語彙、スペルの違いについてもお話ししました。

アメリカ英語では、newが「ニュー」でなく「ヌー」と発音すること、beenの母音を伸ばさないで発音すること、そしてdictionaryの語尾(-nary)の発音もアメリカ英語とイギリス英語で異なることなどを見ていきました。

さて、今回扱うのはズバリ「tの発音です。「t」の音は日本語にもあるし、そんなに難しい音だと感じていない人も多いかもしれませんね。しかし、「t」は1種類の発音しかないと思いきや、音声学的に細かく分けると実は10種類以上のバリエーションに発音を区別することもできます。

今回と次回の2回にわたって、その中でも英語学習者ならまずは押さえておきたい6種類の「t」の発音の特徴と見分け方をお話しします。この記事を読めば「t」の発音についての全体像をつかめるはずです!

なお、発音記号は /t/ のようにスラッシュ/ /、または [t] のように角かっこ [ ]で括る(特に精密表記 = narrow transcription のとき)のが一般的ですが、本記事では見やすさを考慮し、かぎかっこで「t」と表記します。

あなたの「t」の発音マスター度をチェック

まずはウォームアップです。以下の6つの単語を声に出して発音してみてください。特に「t」の発音に注意して各単語を発音してみましょう。

football
top
stop
city
interview
button

いかがですか?これらの語は、実はアメリカ英語ではすべて違う「t」の発音になる、またはその可能性があります。発音の差を思い浮かべることができたでしょうか?

「t」の発音を制するものは発音を制する、は少し言い過ぎかもしれませんが、発音が上手な人は「t」を正しく発音できている人が多く、「t」の発音を聞けば、その人が細かいところまで発音に気を付けているかがすぐにわかってしまう重要な音なのです。

身近な音だけに、ついつい軽視してしまいがちですが、「t」の音に気を付けると発音がぐっと上手くなります。本記事を読みながらぜひ声に出して発音してみてくださいね!

What time~?の「t」はどう発音する?

footballの「t」の発音を学ぶ前に、まずは以下のフレーズを発音してみてください。

What time do you close?

whatとtimeの「t」はどのように発音しましたか?実はこの2つの「t」は発音の仕方が異なります

whatの語尾とtimeの語頭で「t」が連続していますが、試しに両方の「t」を勢いよく、強めに空気を出して発音してみてください。そうすると非常に発音しづらいはずです。

通常、whatの語尾の「t」は、口から空気を勢いよく強めに出して発音するのではなく、聞こえるか聞こえないか程度に弱く発音されます。これを「無開放のt」と言います。英語だとunreleased tと呼ばれます。

この「無開放のt」を発音する際のポイントは、以下の2つです。

  • 聞こえるか聞こえないか程度に弱くソフトに発音する。
  • 勢いよく強く発音しないで、ほんの少し「ため」を作るだけ。「寸止め」するように発音する。

よって、what timeは、timeの「t」だけがはっきりと聞こえます。timeの「t」は後ほどすぐ解説しますが、空気の漏れがはっきり聞こえて破裂する「t」です。なお、本記事でこれ以降「破裂する音」と言うときは「勢いよく、強めに空気を出して発音する音」という意味で使用します。

「無開放のt」はどんなときに起こる?

では、どんなときに「無開放のt」が現れるのでしょうか?「無開放のt」は、whatの「t」のように語尾に現れることが非常に多いです。

以下の語の語尾の「t」を「無開放のt」で発音してみましょう。

credit card
that pen
eight bags
it could

聞こえるか聞こえないか程度に弱く、または「ため」を作るだけの「寸止め」で「t」を発音できましたか?勢いよく強く空気を出して発音しないように注意して、何度も練習してみましょう!

footballの「t」は語末にないのになぜ「ためる」だけ?

さて、ウォームアップ問題には、footballという語がありましたね。

結論から言うと、footballの「t」は「無開放のt」です。先ほど「無開放のt」は語尾に来ることが多いと言いましたが、footballでは「t」が語尾ではなく語中に「t」が来ていることにお気付きでしょうか?
実は「無開放のt」は語尾以外に現れることもよくあり、正確に言うと、

無開放のt = 音節の最後に「t」が来ているとき

に現れます。footballという語は、

foot ball

という2音節の語ですが、footという音節の最後に「tが来ていますね。よって、「音節の最後がt」という無開放になる条件が整っているのでfootの「t」は、ほぼ聞こえないくらい弱く、「ため」を作る程度に発音すればよいのです。

これを理解すれば、hotdogなどの語の「t」もどんな発音をすればいいのかわかるはずです。hotdogの「t」も語中にありますが、

hot dog

と2音節語で、hotの音節の最後に「t」が来ているので「無開放のt」だとわかります。

「無開放のt」のより詳しい出現条件は本記事の注釈((「無開放のt」は以下の3つの環境に現れます。① 「t」の直後に破裂音/p, t, k, b, d, g/が続くとき。例えば、eight bagsなら、「t」の後に破裂音である「b」が来ているため「無開放のt」になります。② 「t」の直後に破裂音が続くとき。破擦音は/tʃ/ /dʒ/のことです( /tr/ /dr/ /ts/ /dz/を加える場合もあり)。例えば、that juiceの「t」(太字)は無開放です。

③ 発話の最後に「t」が来るとき。ただし、この場合は発話の丁寧さや話者の話し方などにも左右されます。例えば、How is it?の「t」はしばしば無開放で発音されます。))に載せていますので興味のある人は読んでみてください。ただ、音節の最後に「t」が来ているとき、発音は「無開放のt」になる、ということを覚えておけばまずは十分です!

音節の切れ目はどう判断する?

さて、footballやhotdogで「音節」の話が出ましたが、ここまで聞くと、「では音節の切れ目がどこにあるかはどう判断するのか」という疑問を持つ人もいるでしょう。

そんなときは辞書を引いてみましょう。多くの英和辞典・英英辞典では、音節の切れ目がわかるように記載されています。例えばfootballでは、

foot・ball

のように音節の切れ目に点が打たれています

footballやhotdogのように、語中にあって「無開放のt」のパターンになる単語はほかにもたくさんあります。以下の語の「t」はすべて「無開放のt」で聞こえるか聞こえないか程度に弱く発音されます。声に出して練習してみましょう。

softball
suitcase
setback

「t」の音は消えるわけではない!

さて、「無開放のt」が強く発音されないことは理解していただけたと思いますが、ここで1つ気を付けたいことがあります。それは、「無開放のt」を「完全に消して発音していい」と勘違いしてはいけないということです。

「無開放のt」は弱くなって聞こえないこともありますが、基本的に舌先は「t」を発音する位置に持っていく必要があるのです。footballなら、「t」はほぼ聞こえないとしても「t」を発音する位置に舌を持っていきます。

では「t」を発音する舌の位置はどこでしょうか?「t」は音声学的には歯茎音(しけいおん)といわれ、上歯の歯ぐきに舌をあてて発音する音です。

t…t…t…

と3回ほど「t」を発音してみて、舌の位置を確認してみてください。その「t」の舌の位置をしっかりと覚えておき、「無開放のt」を発音するときも、本来の「t」の位置に舌を持っていくようにしましょう。これを怠ると、どの語を発音しているかわからなくなることもありますので、通常の「t」の位置に舌を持っていくことを常に意識しましょう。

topの「t」は「強く空気が漏れるキレキレのt」

ここからは2つ目の「t」を見ていきましょう。ウォームアップ問題にあったtopですが、この「t」はどのように発音しましたか?

topの「t」は発音するときに強く空気が口から漏れます。このような「t」は「帯気音(有気音)のt」と呼ばれ、英語ではaspirated tと言います。本記事ではこのように、発音する際に口から強く空気が漏れる「t」を「強く空気が漏れるキレキレのt」と呼ぶことにします。勢いよく、強く「破裂」して発音する音です。

英語のネイティブスピーカーが、topのような「強く空気が漏れるキレキレのt」を発音すると、はっきりと空気の漏れが聞こえます。一方で、日本語の「た」「て」「と」など「た行」の子音は基本的に破裂の度合いは弱く、英語の強い破裂を伴う「t」とはかなり音が異なります。

慣れるまでは、「キレキレのt」になるように意識して、かなり大げさなくらい破裂させるようにするのが重要です。以下の語を強く空気が漏れるように発音してみましょう。

top
tea
tie
two
fifteen
maintain

 「強く空気が漏れるキレキレのt」はどんなときに現れる?

では「強く空気が漏れるキレキレのt」どのような位置に現れ、どのようにして見分ければいいでしょうか?top, tie, two, teaを見ると、語頭に現れることも多いように見えますが、fifteenやmaintainは語中に「t」がありますね。

正確に言うと、

「強く空気が漏れるキレキレのt」はアクセントのある音節の最初に「t」が来ているとき

に起こります。以下のように2ステップで見分けます。

【「強く空気が漏れるキレキレのt」の見分け方】

Step1:アクセントのある音節がどこかをチェック
Step2:そのアクセント音節の最初に「t」が来ているかをチェック

えばfifteenという語を見てみましょう。fifteenは

fif teen

と2音節の語ですが、まずはStep1で、アクセントのある音節がどこか、をチェックします。fifteenはteenという音節に主要なアクセントがあります。

次にStep2で、そのアクセント音節の最初に「t」が来ているか、をチェックします。アクセントがある音節teenの最初に「t」が来ていますね。

よって、「強く空気が漏れるキレキレのt」の条件を満たしているので、fifteenの「t」はしっかりと破裂させて発音すればよいとわかります。

maintainも同様で、

main tain

と2音節の語ですが、tainという音節に主要なアクセントがあり、かつ、その音節の最初の音が「t」です。よって、この「t」は「強く空気が漏れるキレキレのt」であることがわかり、しっかりと破裂させて発音します。

音節の重要性

ここまで、「無開放のt」や「強く空気が漏れるキレキレのt」が現れる条件を見てきましたが、発音では「音節」(syllable)という概念が非常に重要になってきます。

音節の定義はいろいろありますが、ここでは「リズムの1拍やアクセントを受けることができる最小のまとまりで、基本的に母音を1つ含むもの」と定義します。

なぜ音節が重要かというと、音節の切れ目がどこにあるかによって、「t」の発音が変化するためです。具体的に言うと、音節の切れ目はどこかによって、例えば「無開放のt」になるか「強く空気が漏れるキレキレのt」になるかが決まるのです。

between の「t」はどう発音する?

音節の切れ目によって「t」の発音が変化すると言われても、ピンとこない人もいるでしょう。なぜ音節の概念が重要か、例を見てみましょう。

between

という単語を発音してみてください。この「t」はどのように発音しましたか?

この「t」が、どのように発音されるかを理解するには、音節に分けて考える必要があります。まずbetweenという語を辞書で引いてみましょう。すると、2音節の語であり、音節はbeとtweenで切れていることがわかります。

そして、betweenという語は、

be TWEEN

のように、TWEENの音節に主要なアクセントが来ます。そして、アクセントのある音節(=tween)の最初に「t」が来ているので、「強く空気が漏れるキレキレのt」の条件が満たされています。よって、betweenの「t」は空気が強く漏れるように発音されることがわかります。

発音が全体的に上手な人でも、betweenの「t」を「無開放のt」のようにソフトに発音してしまっている人も見受けられます。たかが「t」、されど「t」です。この「t」をしっかりと破裂させて発音するとネイティブスピーカーの発音に近づきます。

しっかり破裂音が出せているかをセルフチェックする方法

ところで、強い空気の漏れを伴った発音(破裂音)を自分がきちんとできているか気になる人もいるでしょう。これを自分で確かめるための方法があります。

ティッシュペーパーを1枚用意して半分に折り、口と鼻の前で垂らしてください。この状態で

two

と発音してみましょう。強い空気の漏れを伴っていれば、テッシュが動くはずです。ほとんど動かない場合、破裂の度合いが弱いので、強く息を吐き出してティッシュが動くように練習しましょう。

強く破裂する「t」の発音について初めて知った方は、「こんなちょっとした空気の漏れが重要なのか?」と感じるかもしれません。しかし、英語の発音は空気の漏れがあるかないかに非常に敏感です。

twoなどの「t」の音は、日本語の「t」の音とは破裂の度合いがかなり異なります。日本語の破裂が弱い「t」でtwoを発音すると、doに聞こえる可能性もあります。同様に、tieを日本語の破裂が弱い「t」で発音すると、dieに聞こえてしまうこともあるかもしれません。

なお、このような空気が漏れること=気音(aspiration)は、「t」だけでなく、「p」と「k」でも起こります。本記事は「t」の発音のみを扱っているので「p」と「k」の気音の説明は割愛します。

stopの「t」の発音は?

最後に、3種類目の「t」です。stopの「t」の発音について考えてみましょう。

stopは1音節の語です。stopというこの音節自体がアクセントのある音節となりますが、音節の最初に来ているのは「t」でなく「s」です。よって「強く空気が漏れるキレキレのt」にはなりません。

では、stopの「t」はどのように発音すればいいのでしょうか?実は、この「t」は力まないで普通に「t」を発音すればOKです。もう少し正確に言うと、空気の漏れを伴わないで発音される「t」で、音声学的には「無気音のt(unaspirated t)」と呼ばれます。「強く空気が漏れるキレキレのt」のように強く空気が漏れるように発音したり、「無開放のt」のように弱く発音したりするのではなく、普通に「t」を発音するイメージで大丈夫です。

このような「普通のt」は、stopのようにアクセントのある音節の最初でも最後でもない位置に現れることが多く、特に「s」の後に来ている「t」は、「強く空気が漏れるキレキレのt」にならないので、まずはそのことを覚えておきましょう(細かい条件は注((「無気音のt」は、①同じ単語の中で子音に隣接しているとき、②直後に強勢のない母音が来るときに現れます。))を参考にしてみてください)。

以下の語はすべて1音節の語で、アクセントのある音節の中にtがありますが、「t」が音節の最初に来ていないので、「強く空気が漏れるキレキレのt」でなく「力まないで普通にtを発音」すればOKです。

最後に、以下の語を「t」の違いに気を付けながら発音してみましょう。

普通のt強く破裂するキレキレのt
stoptop
styletile
sticktick
steaktake

ウォームアップ問題の答え合わせ

単語「t」の発音方法
football聞こえるか聞こえないかくらい弱く発音。「無開放のt」
top

強い破裂を伴う発音。「強く空気が漏れるキレキレのt」

stop力まずに普通に発音すればOK。「普通のt」

※city, interview, buttonのtについては次回の記事で解説します!

まとめ

今回は3種類の「t」の特徴や見分け方をお話ししましたがいかがでしたか?

単語で「t」の発音が出てきたら、「このtはどう発音するか」を常に意識しながら発音するのが重要です。最初はどの種類の「t」かを見極めるのも難しく感じるかもしれませんが、慣れると無意識に瞬時にわかるようになるので安心してください。

次回、本記事で紹介しきれなかった「t」の発音についてお話しします。今回の記事と合わせて読めば「t」の全体像がわかるようになるのでお楽しみに!

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