コロンビア大学大学院で英語教授法を学んだサラさんが、すぐに実践できる発音のコツを教えてくれる連載「コロンビア大学TESOLサラの英語発音ジム」。今回と次回の2回にわたり、特別編をお届けいたします。
目次
こんにちは、英語ジム らいおんとひよこ®代表のサラです。おかげさまで好評いただいている連載「コロンビア大学TESOLサラの英語発音ジム」の特別編を2回にわたりお届けすることとなりました!特別編では、この連載でもたびたび話題にのぼっている「アクセント」について深堀りしていきたいと思います。
今回は「1語の単語でのアクセント」を扱います。「単語のアクセントなんていつも注意しているから余裕だよ」と思った方もちょっとだけお待ちを。この記事で解説することをしっかりできているかを確認して、さらに自信を持って単語を発音していきましょう!
あなたの発音正確性をチェック
まずはウォームアップです。以下の単語を発音してみてください。その際に、「どこが強く読まれるか」、つまり「どこにアクセントがあるか」に注意して発音してみましょう((語におけるアクセントとは、特定の音節がほかの音節よりも「目立って」聞こえることを指します。「ストレス」や「強勢」と言ってもOKです。「目立って」というのは、正確に言うとほかの音節よりも「より強く、より高く、より長く」発音されるということで、高さの変化が最も重要ですが、ピンとこない場合は、「強く目立って」発音されるところと考えましょう。本記事では、「強いアクセントが付く」と「強く読まれるところ」を同義として使用します。))。
単語 | 意味 |
---|---|
contribution | 貢献 |
possibility | 可能性 |
identification | ID・身分証明 |
dictionary | 辞書 |
territory | テリトリー・領域 |
testimony | 証言 |
いかがですか?どの単語も意味はそれほど難しくない語ですし、それほど注意すべき発音ポイントはないと感じた方も多いかもしれません。しかし、実はこれらの語は多くの学習者が正確に発音できていない単語です。特にアメリカ英語では発音に注意を要する語も含まれていたことにお気付きでしょうか?
上記の単語はあることが共通しています。それは「第2アクセントがある」ということです。さっそく詳しく見ていきましょう。なお、これまでの連載同様、発音記号はアメリカ英語発音を採用しています。
「第1アクセント」しか確認していない学習者が多い!
ほとんどの学習者が「第1アクセント」の位置を辞書で調べるかと思います。例えば、ウォームアップ問題の最初にあったcontributionは、
con tri bu tion
という4音節の単語ですが、多くの学習者は「第3音節-bu-が最も強く読まれる」ことを辞書で確認しているはずです。
しかし、「-bu-が強く読まれる」ということ”のみ”に気を配り、発音をするときに-bu-の部分だけを強く読む、という感じの人が多いです。つまり、
con tri bu tion
のように発音している人が多いです。確かにcontributionで最も強く読まれる音節は-bu-だということは間違いないですが、それは半分正解で、この単語の発音としては70点くらいと言えるかもしれません。なぜでしょうか?
辞書でcontributionを引いてみましょう。辞書によって若干表記は異なるものの、以下のように発音記号が出てきます。
contribution/ˌkɑːntrɪˈbjuːʃn/
実は、contributionは「第1アクセント」と「第2アクセント」のアクセントが2つある語なのです。
「第2アクセント」とは第1アクセントの次に強く読まれることを指しますが、ポイントは、「第2アクセント」がある音節は、アクセントがない音節と比べると、相当強く読まれるということです。
「第1アクセント」「第2アクセント」は以下のように、記号で理解することができます。
「ˈ」記号
「第1アクセント」を表す。アクセントがある音節直前の上に付いている。
「ˌ」記号
「第2アクセント」を表す。アクセントがある音節直前の語の下に付いている。
contributionの場合、-bu-/ˈbjuː/の音節に「第1アクセント」があり、語頭のcon-/ˌkɑːn/に「第2アクセント」があります。
よってcontributionをイメージしやすいように視覚化すると、以下のようになります。
最も強く読まれる「第1アクセント」は-bu-の音節にあるので、ここを最も強く読みますが、con-の音節も「第2アクセント」があるので強く発音します。
このときのポイントは、con-をただ強く読むだけでなく、はっきりと「長めのアー音」で/kɑːn/「カーn」とはっきり発音することです。いくらこのcon-部分を強く読んだとしても、日本語のように「コン」と発音したり、逆にあいまい母音のようにあいまいにcon-を発音したりすると、正確なcontributionの発音にはなりません。
そして、もう1つ注目していただきたいことがあります。それは、con-や-bu-と比べると、-tri-と-tion-の音節はアクセントがないので、かなり弱く読まれるということです。つまり、con-と-bu-は強く、-tri-と-tion-は弱く、という感じで「強弱のメリハリ」が非常に重要なのです。
ウォームアップ問題にある単語を声に出して発音したときに、contributionのcon-を「長めのアー音」で/kɑːn/「カーn」と発音できていたなら、あなたは第2アクセントまできれいに発音できていた、ということになります。
繰り返しますが、多くの学習者は「第1アクセントがどこか」には非常に敏感で、しっかりと辞書で調べている一方で、「第2アクセントがどこか」をほとんど意識していない、ということが多いです。
第2アクセントは「第2」と名前が付いているため、重要度が低いと感じる人もいるかもしれませんが、「ほぼ第1アクセントくらい重要で強く読まれる」ことを意識しておきましょう。第2アクセントのことを「潜在的第1アクセント」と呼ぶ音声学者もいます。
アクセントの種類を常に意識しよう
さて、ここまで「第2アクセント」の重要性についてお話ししました。このように単語レベルでは、すべての音節には以下のアクセントのいずれかが必ず付いています。
- 第1アクセント 最も強く目立って聞こえる。どの単語にも必ずある。
- 第2アクセント 第1アクセントの次に目立って聞こえるが、「第1アクセントと同じくらい強く読む」という意識で発音するのが重要。
- 弱アクセント 弱く読まれる。わかりにくい場合「アクセントがない」と考えて弱く発音すればOK。
単語を発音するとき、各音節を発音するときに、上記のアクセントのどれに該当するかを常に意識しながら発音することが非常に重要です。何度も言いますが、ほとんどの学習者は「第1アクセントのみを意識」していることが多いです。この意識を変えましょう。
アクセントの意識変革
「第1アクセント」がどこかを意識することが大事。さらに以下のことを意識。
- 各音節が「第1アクセント」「第2アクセント」「弱アクセント」のどれになるかを常に意識することが大事。
- 「第2アクセント」は「第1アクセントくらい強く読む」という意識で発音する
「弱アクセント」がある音節を意識的に弱く読むことも非常に重要で、そのコツはまた別の機会にお話しできればと思いますが、本記事では「第2アクセント」に絞って、残りのウォームアップ問題の「第2アクセント」がある単語を練習してみましょう。
なお、「第2アクセント」がどの音節にあるかの明確なルールは基本的にはありません。「第2アクセント」がどこにあるかはその都度辞書で調べることが重要になります。
possibilityの発音
possibility/ˌpɑːsəˈbɪləti/は、語頭の/ˌpɑː/に「第2アクセント」があり、第3音節の/ˈbɪ/に「第1アクセント」があります。よって、
のように発音します。このときに第1音節の/ˌpɑː/をただ強く読むだけでなく、「ポー」ではなく、しっかりと「長めのアー音」で「パー」とはっきり発音することに注意しましょう。「長めのアー音」/ɑː/については第2回で解説しているので、ぜひご覧ください。
identificationの発音
identification/aɪˌdɛntɪfɪˈkeɪʃn/の第2音節-den-/dɛn/をしっかりと強く読めましたか?ここに「第2アクセント」があります。
「第1アクセント」は-ca-/ˈkeɪ/にあります。よって、以下のようなイメージで発音しましょう。
dictionaryの発音
次に、dictionary/ˈdɪkʃəˌnɛri/の発音です。dictionaryなど語尾が-aryで終わるスペルの語は、第3回でお話ししたようにアメリカ英語とイギリス英語で発音が異なる傾向があり、要注意語です。
アメリカ英語ではdictionaryは第3音節/ˌnɛ/に「第2アクセント」があり「ネry」のようにはっきりと読まれます。イギリス英語では「第2アクセント」がなく弱化して読まれます。
アメリカ英語 | イギリス英語 | |
---|---|---|
dictionary | /ˈdɪkʃəˌnɛri/ | /ˈdɪkʃən(ə)ri/ |
たかが第2アクセント、されど第2アクセントですが、この微差が大きな差を生みます。アメリカ英語派の人は、はっきりと/ˌnɛ/を発音できると、ぐっときれいな発音に、そしてアメリカ英語らしくなります。
一方、「第1アクセント」は語頭のdi-/ˈdɪ/にあります。こちらはOKな方も多いと思います。よって、以下のイメージで発音しましょう。
territoryの発音
先ほどのdictionary同様、territoryのように語尾が-oryのスペルで終わる語も、アメリカ英語とイギリス英語で発音が異なる傾向があるパターンの語でしたね。
アメリカ英語 | イギリス英語 | |
---|---|---|
territory | /ˈtɛrəˌtɔːri/ | /ˈtɛrət(ə)ri/ |
日本語でも「テリトリー」と言ったりしますが、アメリカ英語ではterritory/ˈtɛrəˌtɔːri/ は第3音節に「第2アクセント」があり、-to-の発音は/ˌtɔː/です。発音記号に長音記号の/ː/が付いています。つまり、どちらかと言うと「トーry」のようなイメージで、「トー」部分をしっかりと伸ばして長めに発音しましょう。
カタカナの「テリトリー」につられて/ˌtɔː/「トー」部分を長めに発音しない学習者もよく見受けられます。(イギリス英語では-to-部分は「第2アクセント」がなく弱化して読まれます)
一方、「第1アクセント」は語頭の/ˈtɛ/にあります。こちらは大丈夫な方も多いでしょう。よって、以下のイメージで発音しましょう。
testimonyの発音
最後は「証言」を意味するtestimonyの発音です。dictionaryやterritory同様、testimonyのように語尾が-monyの語もアメリカ英語とイギリス英語で発音が異なる傾向があるのでしたね。
アメリカ英語 | イギリス英語 | |
---|---|---|
testimony | /ˈtɛstɪˌmoʊni/ | /ˈtɛstɪˌmoʊni/ |
「テスティモニー」のように発音している方も多いかもしれませんが、アメリカ英語のtestimony/ˈtɛstɪˌmoʊni/では、「第2アクセント」がある-mo-の音節の発音は/ˌmoʊ/です。つまり、二重母音で「モゥ」とはっきりと発音します。(イギリス英語では「第2アクセント」がなく弱化して読まれます)
一方、「第1アクセント」は語頭の/ˈtɛs/にあります。こちらは大丈夫な方も多いでしょう。よって、以下のイメージで発音しましょう。
まとめ
駆け足で単語の「3種類のアクセント」、特に「第2アクセント」の重要性について見てきましたがいかがだったでしょうか?「第2アクセント」をしっかりと意識できると細部まで発音がきれいになります。今回の記事は以下の点だけ覚えておきましょう。
単語のアクセントの種類
- 第1アクセント最も強く目立って聞こえる。どの単語にも必ずある。
- 第2アクセント第1アクセントの次に目立って聞こえるが、「第1アクセントと同じくらい強く読む」という意識で発音するのが重要。
- 弱アクセント弱く読まれる。わかりにくい場合「アクセントがない」と考えて弱く発音すればOK。
アクセントの意識変革
「第1アクセント」がどこかを意識することが大事。さらに以下のことを意識。
- 各音節が「第1アクセント」「第2アクセント」「弱アクセント」のどれになるかを常に意識することが大事。
- 「第2アクセント」はまずは「ほとんど第1アクセントくらい強く読む」という意識で発音する。
今回の記事は私が運営しているYouTubeの「らいおん英語チャンネル」で動画解説もしています。ぜひこちらもご覧ください!
特別編第2回は6/22(火)公開予定です。お楽しみに!
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