連載「絶対英文法」は今回が最終回。最後に総まとめとして、話せるようになるための英文法の学習方法を紹介します。キーワードは「脱・日本語」。日々の文法学習について、Evine先生にアドバイスいただきましょう。
英語を運用するために必要不可欠となる「コア」な文法知識
伸び悩む学習者にとって、現実約な問題は「コアとなる英文法」の不完全さです。この連載では、日本人にありがちな弱点ポイントの中でも最優先課題といえるコア英文法をピックアップしました。
私が主宰する教室では、「場面・状況」そして話し手の「気持ち」を軸にした、「コア英文法」から「話せる力」への変換を大切に考えています。単に英文法の知識を積み重ねても、思うようにうまく話せるようにならないのが現実です。では、「場面・状況」や「気持ち」を意識した英文法の学習法のポイントはなんでしょうか?
それは「脱・日本語」の意識を持つことです。日本語と英語の互換性はあまり高くありませんから(私の感覚では6割程度でしょうか)、日本語で英語の知護を整理しても自然なアウトプットのスキルにはつながらないのです。
「脱・日本語」の意識を持とう
「場面・状況」や「気持ち」を意識した英文法の学習法の例を見てみましょう。例えば、「その会議は、明日の午前10時に予定が変更されました」を英語で言うとどうなるでしょうか?
その会議は、明日の午前10時に予定が変更されました。
ポイントは「時刻」を示す前置詞ですが、結論から言うと、at 10 a.m.は誤りです。これは日本語の「~の時に」を英語のat ~と直結させてしまう、初心者の典型的な誤用例です。
「場面・状況」や「気持ち」を意識した英文法とは
言葉が持つ本来のニュアンスと話し手の「状況」から、もう一度考えてみましょう。
前置詞atは「点」のニュアンスを持ち、まさに行動・動作を行う時点を指します。これでは単純に予定を変更した時刻を意味し、会議の日を示すことにはなりません。前置詞forに「方向」のニュアンスがあると押さえておけば、forで「毎日の午前10時」という先の日時(方向)を示し、予定日や予約日をうまく言い表せるようになります。
(〇)The meeting has been rescheduled for 10 a.m. tomorrow.
その会議は、明日の午前10時に予定が変更されました。
クイズ:どちらが自然な英文?
次の「場面」も英語で考えてみましょう。どちらが自然な英文でしょうか?
場面:目上のKevin先生に手伝ってもらいたい。
(A) Kevin, I’d like you to help me with this.
(B) Kevin, can you help me with this?
クイズ:答え
(〇)(B) Kevin, can you help me with this?
ケビン先生、これを手伝っていただけますか?
「英語のwould like人to doは日本語の『~していただきたい』という意味で、wantの丁寧表現だ」というのは「話せる」英文法の理解の仕方ではありません。これではcanよりも丁寧であると勘違いする可能性があります。結論を言うと、「お願い」という場面ではcan you . . . ?を用いますから、英文(B)が正解です。
would like 人 to doはあくまでも自分の気持ちを相手に投げたもので「(丁寧な)指示」のニュアンスがあります。極論で言えば、命令文Help me with this.と言っているようなもので、必ずしも丁寧にお願いをする表現にはならないのです。
日本語を頼りにするとつい安心してそのまま受け止めがちですが、日本語を離れると、より英語らしく実際的な言葉の使われ方をキャッチしようとアンテナを張るようになります。日本語がどうしても必要であっても、いざというときの確認程度にしてください。学んだ英文法がどのような場面・状況で用いられ、どのような気持ちが含まれるのかを押さえるには、日頃から英英辞書などの語義や例文を参考にしたり、映画やテレビ番組、あるいはYouTube動画やX(旧Twitter)などの投稿で、知りたい表現を検索したりして、ネイティブがどのように話しているのかを観察しながら、積極的に生きた情報を入手するようにしましょう。
連載「絶対英文法」は今回が最終回となります。日本人がニガテのままにしてしまいがちな英文法項目の中から、これだけ押さえておけば十分に話せる、聞き取れるという項目を重点的に会話の場面に焦点を置くコア英文法学習を紹介してきました。学んだ英文法が会話に生かせるように、状況・場面を意識した表現選択をしていきましょう。
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