相手が落ち込んでいるときに、どのような言葉で慰めたらいいでしょう。言いにくいことも知的に伝えるワンランク上の英会話術を、本特集の執筆者である狩野みきさんが、レッスン形式で指南します。今回は相手の気持ちに寄り添って励ますときのフレーズを紹介します。
目次
「ワンランク上の英語」とは?
言葉やメッセージは一方的に相手に「伝える」だけではなく、きちんと「伝わる」ことが重要です。「伝わる」というのは相手があなたの言いたいことを十分に理解し、時には共感し、説得もされる、という状況を示します。外国人とのコミュニケーションでうまくいかないと感じるときは、伝えたつもりなのにきちんと伝わっていない、というケースがほとんどです。ワンランク上の英語を目指すための「きちんと伝える」ポイントは4つです。
- あいまいな言い方は避け、言いたいことを簡潔に述べる。
- ゆっくりと、相手に理解されやすい発音、アクセントで話す。
- アイコンタクトや豊かな表情で、伝えたいという気持ちを表現する。
- 相手の文化やその場の雰囲気に配慮し、言葉使いや口調にも配慮する。
失敗した相手を励ますときのフレーズ
データ解析が不十分だったせいで仕事でミスをした同僚を、励まし、慰める場面です。どのような言葉を掛けたらよいのか見てみましょう。
(Selina:社員 Paul: 同僚)
Selina: Paul, are you OK?
Paul: Year . . . I was told data analysis is particularly important in our business. I was making light of it. And look what I got. Fiasco!
Selina: ①Everyone makes mistakes, Paul. ②I made a huge mistake in my previous company. So huge the company had to pay quite a bit of money. My boss told me when you’ve made a mistake, what’s really important is to learn a lesson. I knew he was right, but ③when you’re down, you can’t just flick a switch and be constructive again, can you?
Paul: Right . . .
Seline: ④I think you need time. But I’m sure you’ll get over it.
セリーナ:ポール、大丈夫?
ポール:うん・・・データ解析って、僕たちの仕事にとって特に重要だって言われてたんだ。僕はそれを軽んじていたのさ。で、このザマだよ。大失敗!
セリーナ:誰だって間違いをするものよ、ポール。私は、前の会社でとんでもないミスをしちゃったのよ。大きいミスだったから、会社はかなりの損失を負ったの。私の上司はこう言ったわ、ミスをしたときは、そこから教訓を学ぶことが大切だって。上司が正しいって分かっていたけど、落ち込んでいるときって、すぐに気分を変えて、また頑張り続けるなんてできないわよね?
ポール:そうだね・・・。
セリーナ:あなたには時間が必要だと思うの。でもきっと、乗り越えられるわ。
語注
語句 | 意味 |
---|---|
make light of ~ | ~を軽視する・軽んじる |
fiasco | 大失敗、不真面目な結果 ★イタリア語から派生した表現 |
learn a lesson | 教訓を学ぶ |
down | 意気消沈して、弱り切って |
flick a switch | スイッチを切り替える ★ここでは「気分を変える」の意 |
constructive | 建設的な、積極的な |
get over ~ | ~(困難など)を乗り切る・乗り越える |
表現のポイント:相手を安心させる、励ましのフレーズ
上の会話でポイントとなる表現を1つずつ見てみましょう。
① Everyone makes mistakes,
「誰でも間違いをするもの」と、まず決まり文句で慰めます。We all make mistakes. やNo one’s perfect.などと言うこともできます。
② I made a huge mistake in my previous company. . . .
「私も前の会社でミスしちゃって・・・」と、自分の経験を話します。こうすると、一般論で「失敗から学ぶことが大事」などと言うよりも説得力があり、また必要以上に説教くさいイメージを与えてしまうこともありません。
③ when you’re down, you can’t just flick a switch and be constructive again, can you?
youを使うことによって、「誰でも、みんな」というニュアンスが加わり、相手を安心させることができます。また . . . , can you?のような付加疑問文は、断定を避けるためにも効果的です。
④ I think you need time. But I’m sure you’ll get over it.
ここでも、自分の意見にI thinkを加えて断定を避けます。「乗り越える」という意味のget overは、overcomeやget throughなどと言い替えられます。
話し方のポイント:無責任に聞こえない程度に明るく励ます
最後のI’m sure . . . は、無責任に聞こえない程度に明るく言うと、相手を元気付けられます。また、ビジネスシーンでは、いくら親身になっているからといっても、むやみに相手の体に触れたい、あまりに近い距離で話をするのはNG。日本人女性は声が通りづらい場合が多いので、相手に聞こえるように近づいて話す人がいますが、これは相手に誤解を与えかねないので、要注意です。
相手を励ます、その他の表現
You look a little down. What’s wrong?
(なんだか元気なさそう。どうしたの?)
a little を使っているので、柔らかい印象になります。What’s wrong?(どうしたの?)を、もっとカジュアルに言う場合は、What’s up?も使えます。
I’m sure you’ll do better next time.
(次はきっとうまくいくわよ)
「今回より次はうまくいくわよ」と言うことで、相手も具体的なイメージを抱くことができます。「次回は必ず成功するから」と、無責任に断言しているわけではないので、現実的に響きます。
Everything will turn out for the best.
(「今回のことを含めて」全てが一番いい結果になるわ)
「一番いい結果になる」という意味のturn out for the bestは、「今は悪いことに思えても、最終的には全ていいことにつながっていく」と伝えたいときに使います。
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