相手のミスや失敗を指摘するときにどんな言い方をすればいいでしょう。言いにくいことも知的に伝えるワンランク上の英会話術を、本特集の執筆者である狩野みきさんが、レッスン形式で指南します。今回は相手の間違いをスマートに指摘する際のフレーズを紹介します。
目次
「ワンランク上の英語」とは?
言葉やメッセージは一方的に相手に「伝える」だけではなく、きちんと「伝わる」ことが重要です。「伝わる」というのは相手があなたの言いたいことを十分に理解し、時には共感し、説得もされる、という状況を示します。外国人とのコミュニケーションでうまくいかないと感じるときは、伝えたつもりなのにきちんと伝わっていない、というケースがほとんどです。ワンランク上の英語を目指すための「きちんと伝える」ポイントは4つです。
- あいまいな言い方は避け、言いたいことを簡潔に述べる。
- ゆっくりと、相手に理解されやすい発音、アクセントで話す。
- アイコンタクトや豊かな表情で、伝えたいという気持ちを表現する。
- 相手の文化やその場の雰囲気に配慮し、言葉使いや口調にも配慮する。
丁寧に相手のミスを指摘する
部下が作成した資料に数字の間違いを見つけて指摘し、二度と間違えないよう助言する場面での会話例を紹介します。どのような表現を使えばよいのか見ていきましょう。
(Jane:上司 Dave:部下)
Jane: Dave, ①can I have a word with you?
Dave: Of course.
Jane: ②Thank you for the handout. I was going over it, and ③I think this figure should be 15,000, not 1,500.
Dave: Can I have a look? Oh . . . you’re right.
Jane: ④Will you make sure everything is correct?
Dave: Yes, I’m sorry about that.
Jane: Well, ⑤as far as I can remember, this is not the first time you’ve made this type of mistake. ⑥It might be a good idea to make it a rule to triple-check everything. ⑦If it happens again, I’ll have to do something about it.
ジェーン:デイヴ、ちょっと話があるの。
デイヴ:どうぞ。
ジェーン:資料をどうもありがとう。見直してみたんだけど、ここの数字、1,500ではなくて、15,000だと思うんだけど。
デイヴ:見せてもらえますか?ああ・・・本当だ。
ジェーン:全部合っているか、確認してもらえる?
デイヴ:はい、申し訳ありません。
ジェーン:そうね、私が覚えている限りでは、あなたがこのようなミスをしたのは、初めてではないわよね。すべてを3回チェックする決まりにすると、いいんじゃないかしら。もしまたこのようなことがあったら、何か考えなくてはいけないわね。
語注
語句 | 意味 |
---|---|
handout | 配布資料、ちらし、ハンドアウト |
go over ~ | ~を見直す・読み返す |
表現のポイント:相手の努力に感謝、配慮する
上の会話でポイントとなる表現を1つずつ見てみましょう。
① can I have a word with you?
比較的、深刻な話や悪い話を切り出す際の表現です。
② Thank you for the handout.
「ご苦労さま、ありがとう」などと、肯定的なことを最初に言います。話の目的はミスの指摘ですが、相手の努力に対し、まず感謝を示すことが大切です。
③ I think this figure should be 15,000, not 1,500.
. . . should be A, not B(・・・はBではなくて、Aであるべき)と言って、相手にミスの内容を的確に伝えます。その際に、I thinkを加えると、印象が少し和らぎます。
④ Will you . . . ?
命令形に、少し丁寧さを加えた表現です。
⑤ as far as I can remember,
この表現は、「私が覚えている限りでは・・・」と、万が一自分が間違っていたときのための「保険」ともいえますし、相手への配慮でもあります。
⑥ It might be a good idea to . . .
部下にミスを回避させるアドバイスを伝える表現ですが、このように提案口調で言うと、柔らかく聞こえます。
⑦ If it happens again, I’ll have to . . .
「また同じことをしたら」と言う場合は、If you do it againではなく、If it happens againと、ミスを犯す主体をぼかして表現するとスマートです。
話し方のポイント:言いたいことを柔らかく伝える
必要以上に文末の調子を上げたり、語尾が曖昧だったりすると、自信のなさそうな印象を与えかねませんが、一方で必要以上に命令口調にならないことも大事です。thinkやmightをうまく使って、スマートに柔らかく言いたいことを伝えましょう。It might be a good idea . . . はさらりと言い、if it happens again,は「最後通告」ですから、強めに言うのがいいですね。
相手のミスを指摘する、その他の表現
. . . is meant to be A, not B.
(・・・はBではなく、Aのはずです)
. . . should be A, not Bと同じように用います。
I think you’ll find that this total is meant to be in the thousands, not the hundreds.
合計は百単位ではなく、千単位になるはずなのがお分かりかと思います。
A should be B, right?
(Aは、Bであるべきですよね?)
相手に確認したり、同意を求めたりする言い方です。
This door should be left open, right?
このドアは開けておくべきですよね?
I think . . . is wrong here.
(この・・・は間違っていると思うのですが)
wrongという言葉の強さを、I thinkで弱めています。
I think something is wrong here.
ここ、何かが間違っていると思いますが。
次回は、非を詫びるときのフレーズをご紹介します。どうぞ、お楽しみに。
狩野 みきさん主催「生涯学習型英語フォーラム Read for Life」のお知らせ
もう一度英語を学びたい方、詰め込み型学習とは違う学びを体験したい方、学び続けることの喜びを知っている方、英語で良書を読みたい方、本を主体的に読み、真の教養を身につけたい方、仲間とディスカッションしたい方…全ての大人に向けたe-learning+スピーキング講座、RFLを始めませんか?皆さまがより豊かな人生を送るための「一生の学び」を手に入れるお手伝いができれば、とても嬉しいです。
狩野 みきさんの本
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発
- スマホ相手に恥ずかしさゼロの英会話
- 制限時間は6秒!瞬間発話力が鍛えられる!
- 英会話教室の【20倍】の発話量で学べる!
SERIES連載
思わず笑っちゃうような英会話フレーズを、気取らず、ぬるく楽しくお届けする連載。講師は藤代あゆみさん。国際唎酒師として日本酒の魅力を広めたり、日本の漫画の海外への翻訳出版に携わったり。シンガポールでの勤務経験もある国際派の藤代さんと学びましょう!
現役の高校英語教師で、書籍『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』の著者、大竹保幹さんが、「英文法が苦手!」という方を、英語が楽しくてしょうがなくなるパラダイスに案内します。
英語学習を1000時間も続けるのは大変!でも工夫をすれば無理だと思っていたことも楽しみに変わります。そのための秘訣を、「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ、松岡昇さんに教えていただきます。