「空気を読む」文化の日本人は、英語で積極的に発言することがあまり得意ではないと指摘されることもあります。そんな文化的な違いが、「雑談」にも影響しているかもしれません。英語での「雑談力アップ」について、『雑談力が伸びる英語の話し方』(アルク)の著者であり、英日バイリンガルのカン・アンドリュー・ハシモトさんに話を聞きました。誰でも簡単に実践できる英語での「雑談力」の伸ばし方を学びましょう。
▼『雑談力が伸びる英語の話し方』の共著者、明治大学文学部教授の齋藤孝さんのインタビューはこちら。▼
日米における「空気を読む」の違い
日本文化は「雰囲気を察する」「場所をわきまえる」など、「空気を読む」という非言語コミュニケーションがしばしば重要視されると言われています。
一方、アメリカではどうでしょうか。実は「空気を読む」という表現がないわけではありません。*英語にもread between the lines という言葉があり、これは日本語の「空気を読む」とほとんど同じ意味+になります。しかし、その使い方に着目してみると、日本とアメリカの文化の違いが見えてきます。
「日本語で『空気を読む』という言葉を使う文脈は、『突飛なことを言うな』とか『黙っていなよ』のような、どちらかというと発言を控える方向性で使うことが多いと思います。これに対して英語のread between the linesという言葉は、『何かを話してくれ』という文脈で使うことが多いんです。つまりアメリカ人の場合、黙っていられると何を考えているかわからないので、意見してほしいと思った場合に、『空気を読む』ことを意識するわけですね」
日本人の場合は、その場の雰囲気をよくしようと思って、あえて黙っていることをよしとする人も多いです。自己主張を控えて黙っているが場の雰囲気を悪くしない、と考えるのが日本の特徴といっていいかもしれません。
一方、アメリカ人の場合は、黙っているよりも何か意見を言ってほしいというのがコミュニケーションの前提にあります。何を考えているのか口に出して発言してもらわないと、意見が自分と同じなのかどうかわからないと感じてしまうからですね。「空気を読む」という行為一つをとっても、異なるバックグラウンドを持つ人々の集まりである多文化社会アメリカならではの考え方があるのです。
当然、日本人にもおしゃべりな人とそうでない人がいるので、「日本人=雑談ベタ」というわけではないですが、もしあなたが英語での「雑談」を苦手としていて、諦めてしまっているとしたなら、考え方を変えた方がいいかもしれません。集団の中に黙って参加しているよりも雑談に積極的に混ざっていった方が、アメリカ人にとっては自然だし、それがアメリカにおいて「空気を読む」ということなのですから。
雑談から始まる信頼関係
日本では知らない人に声を掛けることに躊躇(ちゅうちょ)する人も少なくないと思いますが、アメリカ文化の中では、黙っているのではなく「雑談」で声を掛けることが、お互いの警戒心を解くという意味でも重要です。
例えば、長距離のフライトで隣の席になった人との雑談の場合はどうでしょうか。まったく言葉を交わさない人と、とても近い距離で長時間を過ごすのは苦痛に感じませんか。話題は何であっても、言葉を交わしてしまった方がお互いに心が楽になるということもあるでしょう。
さらに、雑談で警戒心を解くことができれば、その先に信頼関係を築けるということもあり得ます。これは仕事やビジネスにおいても同様です。「プレゼンの英語はしっかり準備しているから、あとは無理に話さなくても大丈夫」と、「雑談」の重要性を軽視していると、少なくとも英語圏では損をしている場面があるかもしれません。それは巡り巡って仕事にも関係してくるかもしれないのです。
「僕が一緒に仕事をしたいなと感じる相手は、実力以外のファクターも大きいように思います。一緒にいて楽しい、長時間一緒に仕事をしていて疲れない、そういうことに大きく関わってくるのは、仕事以外の話をしている時間も楽しいかどうか、だと思います。つまりその人との雑談が楽しいかどうか、と言い換えてもいいです。その人の仕事のクオリティーを信頼できるのと同様に、雑談が楽しいかどうかは、一緒に仕事をしたいと感じるための必須条件の一つなのかもしれません」
アメリカ人の語学コンプレックス?
とはいえ英語での雑談は、外国人にとってはなじみがない話題であることも多く、またオフィシャルの場とは違い、会話のスピードも速いです。そのため「英語での雑談はちょっと苦手だ」と感じている人も少なくないでしょう。「そんなときは、素直に『詳しくないから教えてくれ』『もう少しゆっくり話してくれ』ときちんと伝えるのがベストです」とカンさんは述べます。
「『ネイティブのように話さなければ』と考えがちな日本人には意外に聞こえるかもしれませんが、アメリカ人の中には、自分たちが英語しか話せないから、外国人に英語で話してもらっているのを申し訳なく思っている人も多くいます。ある意味では、アメリカ人は自分の語学力にコンプレックスを抱いているのです。なので、英語がうまくないことをばかにしたり、ゆっくり話すように言われて嫌だと感じたりする人はほぼいません」
もし雑談中に「まったく知らない話題だ」と感じたとしても、そういうときは思いきって何でも聞いてみましょう。自分にとって難しいと感じる話題こそ、英語力を高めるためには重要です。さらには、雑談の中にこそ本当の生きた英語と文化があるとカンさんは言います。
「若者言葉やスラングを中心に、生きた英語というのは、実際に使い方に触れてみないとニュアンスがつかめないことがしばしばあります。例えば私の場合、ある若者が人気レストランに対してThat's gross.と言っているのを耳にしたとき、なぜおいしいレストランなのにgrossなんだろうと思って、聞き返したことがあるのですが、実は若者の間では、grossというのは「最高」という意味なんだと教えてくれたことがありました。
grossは今でもほとんどの辞書に良い意味では載っていないし、若者言葉のニュアンスは雑談の現場に出くわすことでしか理解できないものだと思います。雑談にはそういう、リアルな文化に触れられることができる楽しみがあると思います」
雑談で使える便利なフレーズ
雑談では「話が続かない」という悩みを持つ人も多いかもしれません。そういう悩みを持つ方は、まずは1つ尋ねられたら「2つ以上答える」という練習を試してみるとよいでしょう。
例えば、What do you do in your free time?と尋ねられても、I watch TV dramas.とだけ答えたら、相手はAh, OK ...と答えるだけです。そうするとあなたは、その後どう続ければよいだろうと悩んでしまうかもしれません。ですが、例えばI watched “A Night Shift.” It was thrilling. I don’t know much about overseas TV dramas, but I already think I love them.と答えてみたらどうでしょう。それくらいの情報があれば相手だって、“Wow, what was it about? Which channel?” などと会話が続いていくはずです。
また次のような便利なフレーズを覚えておくと、とっさの雑談にも効果的です。ぜひ試してみてください。
I understand what you mean.
おっしゃることはわかります。
Let me know more about it/them.
もっと詳しく聞かせてください。
You bet! / It sure is!
確かに!
I guess so.
まあ、そうですね。
How did you get into it?
どうしてそれに興味を持ち始めたの?
Speaking of ~
~のことだけど・・・
How was it?
どうだった?
What do you think?
どう思う?
According to Mr. Brown, ...
ブラウンさんによると/ブラウンさんから聞いたんだけど
おすすめ書籍『雑談力が伸びる英語の話し方』
『雑談力が伸びる英語の話し方』は、上で紹介したような雑談で使える例文が豊富に紹介している一冊です。 明治大学文学部教授の齋藤孝さんと、英日バイリンガルのカン・アンドリュー・ハシモトさんがタッグを組んで、雑談上手になれる心構えとコツ、英語表現を伝授します。
この本の魅力は、英語の雑談に使える例文が多いことです。例文ですから、すべてのシチュエーションに当てはまるわけではありません。しかし、例文を何度か繰り返して発話して、文の基本的な構造を理解すれば、簡単に応用できます。
「語学に才能はありません。英語にどれだけの時間を費やしたか、それだけが英語を操る能力を左右します。この本の音源と共に練習していただければ、近い将来必ず英語での雑談力が向上しているご自分に気付くはずです」とカンさん。
雑談に使える例文を覚えれば、英会話がスムーズになり、英語学習も今までより楽しくなること間違いなしです。皆さんもぜひ練習してみてくださいね!
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