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人間関係を円滑にする方法は万国共通!齋藤孝が教える「雑談力の伸ばし方」

人間関係を円滑にする方法は万国共通!齋藤孝が教える「雑談力の伸ばし方」

コロナ禍で対面のやりとりが減少したことに伴って、最近では雑談の大切さが見直されるようになってきています。人間関係を円滑に維持するための「雑談力」について、明治大学文学部教授で『雑談力が伸びる英語の話し方』(アルク)の著者である齋藤孝先生に話を聞きました。誰でも簡単に実践できる「雑談力」の伸ばし方を学びましょう。

「お世話になっております」「よろしくお願いします」「失礼します」──。

メールやチャットで行うリモートワーク中のコミュニケーションは、ついつい淡白なものになりがちです。在宅ワークが増え、一人で過ごす時間が増加し、孤独を感じたり、表情の見えないやりとりにモヤモヤを感じている人も少なくないようです。

コロナ禍で対面でのやりとりが減少したことに伴って、人間関係を円滑に維持することが難しくなっているとも指摘されています。未だ収束の兆しが見えないコロナ禍において、私たちにはどんな工夫が求められているのでしょうか?

「人間関係を作るコツは昔から万国共通、それも古今東西で共通だと思うんですね。それは雑談力です。ビジネス業務をこなすだけなら、特に雑談をしなくてもやっていける。ただそこで、人間的な関係を築けるかといったら難しいですよね。これからはどんどんオンライン化が進んでいきますし、そこにうまく雑談をとりいれていくことが重要になると思います。お互いに打ち解けるために必要なのは、どんなときでも雑談力なのです」

こう語るのは、明治大学文学部教授で『雑談力が伸びる英語の話し方』の著者である齋藤孝先生。コミュニケーションの新しい在り方が問われている今、なぜ「雑談力」が重要なスキルになるのかについて、お話をお聞きしました。

オンライン会議で「雑談」する重要性

2021年3月19日に発表された東京都の「テレワーク導入率調査」によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は59.0%にまで上昇、多くの企業がテレワークを取り入れるようになっています。かつては出社が必須だと思われていたことも、うまくテクノロジーの力を取り入れることができれば、問題なくやっていけることがわかってきました。

とはいえ、家で1日中パソコンの前に座って仕事をしていると、人間関係には多少の不自由が生じるかもしれません。会社の廊下や休憩室などで、何気なく同僚と交わしていたあいさつやおしゃべりの機会はめっきり減ってしまい、雑談によってお互いの近況を知ることなどはあまりなくなってしまいました。

大学に通う学生たちも、これと同様の問題を抱えています。学生の多くは、現在オンラインで授業を受講しているので、いわゆる「キャンパスライフ」を楽しむことはできません。そうすると、深い人間関係を作ることができないまま、貴重な大学生活の大部分が終わってしまうということもあり得ます。

今まで当たり前のように享受していた人と人とのつながりに、コロナ禍で変化が起き始めています。テレワークやオンライン授業の導入が進んだ反面、私たちには人間関係をケアするための新しい工夫や考え方が求められています。

齋藤先生の授業では、学生たちの人間関係の一助となるよう、積極的に「雑談」を取り入れる試みを行っており、これが効果を発揮していると言います。人間関係が希薄になりがちな今、これまではあまり重要視されてこなかった「雑談力」の大切さに注目が集まっているのです。

「例えば授業の始めに、学生に1週間の近況報告をしてもらっています。特に大きな出来事がなくても、『髪を切った』とか本当に日常的なことでもいいから、出席を取って『はい』と答えてもらう代わりに、10秒から15秒くらいで近況報告をしてもらうんです。一つ一つの話は平凡で特に大きな意味はないのですが、これだけでも、学生たちの相互のキャラクターがものすごくわかりやすくなって、クラス全体が生き生きしてきたんですね。これこそが雑談の力だと思うのです」

たとえオンラインであっても、「雑談」で場の一体感や雰囲気を作ることができれば、人間関係は円滑になり、テレワークで感じる孤独感なども軽減されるのではないでしょうか?これはビジネスの現場でも同じことです。テレワーク中のオンライン会議でも「雑談」を積極的に取り入れれば、チーム全体の力を生き生きと発揮させるきっかけとなるかもしれません。

英語の雑談に備えて小ネタを用意

テレワークが普及したことで、外国人とオンラインで会議を行うことも増えてきていますが、「雑談」が重要なのは、もちろん英語であっても同じことです。特にビジネスの場では、異なるバックグラウンドを持つ取引先と信頼関係を築くためにも「雑談」は不可欠です。逆に「雑談」の重要性を無視してしまえば、「社交的でない」、「自信がない」、「信用できない」など、ネガティブな印象を相手に与えてしまう危険さえあるのです。

少なくとも、会議を沈黙が支配するような、気まずい雰囲気だけは避けたいものです。一対一の場合であれば、沈黙は暗に「あなたとは話すことがない」というメッセージになりかねませんし、相手のことが気に入らないわけではないのに、お互いに嫌な雰囲気を感じてしまうのは、信頼の上で成り立つビジネスにとって大きなデメリットです。

ただし、母語であるならばまだしも、英語だと、とっさに「雑談」をしようと思ってもなかなか言葉が出てこないということはありそうです。例えば、最近の近況について話そうと思っても、単語や表現が出てこず、不本意にも沈黙してしまうといった場合です。このような事態に陥らないためには、普段から何を心がけていればよいのでしょうか?齋藤先生によれば、普段から「雑談の小ネタ」を準備しておくことが肝心です。

「お勧めなのが、普段から小ネタを英語で仕込んでおくことです。英語でネタ帳を作っておくわけです。いざ沈黙が訪れたら『ここであのネタを話そう』と、前もってストックを作っておくのです。用意していた小ネタを披露して、場の雰囲気を和ませる。これだけでも、人間関係にいい変化が生まれるはずです。英語に限らず外国語の場合には、『用意してあるから話せる』ということが安心につながります」

英語での「雑談」に自信を持つためには、身近な体験談などを小ネタとして準備しておいて、それをタイミングに合わせて披露できるようにしておくことだと言います。日本人の場合は、「このネタ面白くないんじゃないかな」などと気にしすぎる傾向がありますが、あくまで雑談の狙いは「場の雰囲気を和ませる」ことにあります。どんな話でも、20~30秒くらいであれば相手は嫌がらずに聞いてくれますから心配はご無用です。

例えば、相手との間に「犬好き」という共通点があれば、それをネタにして準備しておくのが良いです。『雑談力が伸びる英語の話し方』では、以下のような会話パターンが紹介されています。*1

A(あなた): You know, my dog turned 15 years old last month.

(実は、うちの犬は先月で15歳になったんです。)

B(相手): Oh, he’s pretty old. Is he all right?

(えっ、かなりの歳ですね。元気なんですか?)

A: He’s OK. But he seems to be out of it more often than not these days.

(ええ。でもこのごろ前よりぼーっとしていることが増えました。)

B: The same could be said of us.

(人間も同じですよね。)

とにかく褒める!気まずくならない英会話

とはいえ初対面の場合など、相手の好きなことや共通点がまったくわからないときには、話題に困ってしまうこともありそうです。そんなときには、とにかく相手を褒めるのがお勧めだと言います。

「ジャケットを褒めるとか、バッグを褒めるとか、パッと目についたところでなんでもOKです。特にアメリカ人は雑談で相手のことを褒める文化がありますし、英語には褒めるためのフレーズがたくさんあります。日本人だと褒めることを照れてしまうこともありますが、相手を褒めるのにいちいち恥ずかしがっていてもしょうがないわけです。積極的に相手を褒めれば、自ずと会話は盛り上がります」

褒めるのは「雑談」の最も重要なテクニックの一つです。理由は簡単で、雑談とは場の空気を温め、距離を近づけるためのものだからです。 褒められてうれしくない人はいないし、相手に一歩近づくためには、いちばんの近道です。

「Today's tie is very stylish.(今日のネクタイ、すごくおしゃれですね)」などのひと言を掛けられれば、よほどのひねくれものでもない限り、「この人は自分を悪くは思ってないな」と感じるものです。例えば、『雑談力が伸びる英語の話し方』では、次のような会話パターンも紹介されています。*2

A: Hello, Cindy.

(やあ、シンディー。)

B: Good afternoon, Mr. Wan. Wow, what a nice jacket!!

(こんにちは、ワンさん。あら、ステキなジャケットですね!!)

A: Thank you. I found it in London last year.

(ありがとう。去年、ロンドンで買ったんだ。)

B: Oh, did you? It looks classy.

(そうですか。高級そうな感じですね。)

A: Well, it was pretty cheap actually. But I like it.

(実はかなり安いんだ。でも気に入ってて。)

B: I do, too! You have great taste. It looks good on you.

(すてきですもの!! センスいいですね。似合ってます。)

もしどうしても話すことが難しければ、「笑顔でうなずく」だけでも大きな効果です。きちんと自分の意見を相手に伝えなければいけない会議やプレゼンとは異なり、雑談の目的は「場の雰囲気を和ませる」ことにあります。ある程度は割り切って考えることが重要かもしれません。

「笑顔でうなずくことは、とても大切なことです。またそのときに使える相づちの英語表現を用意しておくことが重要です。特に便利なのは、Me tooですね。どういうことかというと、なんでもとりあえず同調しちゃうわけです。相手がイヌが好きって言えばMe too、ヘビが好きと言えばMe too。ちょっと極端ですが、場の雰囲気をよくするという意味では、もう全部Me tooで取り繕っとけばよいという考えもあながち悪くありません」

まずは「こんなに簡単な単語やフレーズで雑談ができるんだ」と、実感することが重要です。少しずつでも準備をしておき、ここぞというときに使ってみれば、雑談への不安感もなくなっていきます。雑談が不安ではなくなると、良好な人間関係を築くことができ、思いも寄らないチャンスも飛び込んでくるかもしれません。英語の雑談力アップに向けて、第一歩を踏み出しましょう。

2021年4月16日発売!『雑談力が伸びる英語の話し方』

この記事の中で紹介されている『雑談力が伸びる英語の話し方』が、4月16日に発売となりました。 コミュニケーションのプロ、齋藤孝先生と、英日バイリンガルで著書多数のカン・アンドリュー・ハシモト先生がタッグを組んで、雑談上手になれる心構えとコツ、英語表現を伝授します。「英語で要件は伝えられるが合間の雑談ができない」、「英語で商談、プレゼンはなんとかできるが休憩時間や会食で沈黙してしまう」などの悩みを解決します!日本語でも苦手なのに、英語ではなおさらという、口下手な方でも大丈夫。雑談上手になれる心構えとコツ、英語表現を伝授します。

 

 

*1:齋藤 孝, カン・アンドリュー・ハシモト『雑談力が伸びる英語の話し方』,アルク, 2021年, P.112。

*2:Ibid., P.59。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

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