「関係詞をマスターしよう!」シリーズ第3回は、関係代名詞whoseとwhatを取り上げる他、「関係詞を使う理由」に触れて、関係詞の学習を総仕上げします。
目次
ポイント1:「所有」という特別な関係を作るwhose
「先行詞がする」のか「先行詞でする」のかなど、関係詞の選択には先行詞と動作がどのような関係で結ばれているかが大切、とこれまで説明してきました。
これら関係詞の中でも、恐らくいちばん特別な関係性を表すのが、whoseという関係代名詞でしょう。
whoseは元々「誰のものか」を聞くときに使う語です。そのため関係代名詞としては、先行詞である名詞の「所有物」を指し示すときに使われます。
- an old woman whose hair is gray
白髪のおばあさん- a cat whose eyes are blue
青い目のネコ
1.では先行詞an old woman(おばあさん)の体の一部であるhair(髪)について、2.では先行詞a cat(ネコ)のeyes(目)について説明が加えられています。先行詞との関係性の表し方は「動作」だけでなく、いろいろあるのです。
ポイント2:「物事」を表す関係詞what
関係詞の中には、howのように先行詞を必要としない特殊なものがある ことを以前の記事で説明しました。whatもその仲間で、漠然とした「物事」を表すことができます。
That is what I wanted to say.
それが私の言いたかったことです。
You can buy what you want.
欲しい物を買っていいよ。
「なんだっていい」とやや大げさに強調したいときは、whateverという語を使うこともあります。
You can buy whatever you want.
欲しい物ならなんだって買っていいよ。
ポイント3:分かりきった情報が省略されることがある
place(場所)やtime(時間、時)という語は、明らかに「場所」と「時」を表すことが分かります。そこで、本来なら使われるはずのwhereやwhenが省略されたり、逆に先行詞自体を省略したりすることもあります。
Children need a place (where) they can play safely.
子どもたちには安全に遊べる場所が必要です。
This is (the place) where we live.
ここが私たちが住んでる所です。
I remember (the time) when we didn’t have smartphones.
スマホがなかった頃を覚えています。
関係詞は結構多彩なんです。木工用ボンドや瞬間接着剤など、「接着剤」にもいろんな種類があるのと同じですね。
ポイント4:関係詞には「接着剤」を超えた役割がある
関係詞はよく、2つの文をつなげる接着剤のようなものだと言われます。確かに英語の構造上は2文が組み合わさったようになっているので、その説明自体は間違いではありません。
では、2文で表現された場合と、関係詞を使って1文で表現された場合とでは何が違うか、考えたことはありますか?
使い方が難しい関係詞をわざわざ使う理由はいったいなんなのでしょうか。ここでは関係詞の「接着剤」を超えた役割について、理解を深めましょう。
注目してほしいところを「限定」する(制限用法)
今、あなたは公園を歩いていて、一緒にいる友人がこんなふうに話し掛けてきたとします。
- Look at the children! They are wearing the same T-shirts.
子どもたちを見て!みんな同じTシャツを着ているよ。
恐らくあなたは自分の近くにいる子供たちに目を向けて、本当に全員が同じTシャツを着ている光景を目の当たりにすることになるでしょう。学校行事や何かのイベントでもあるのでしょうか。
一方で、こんな言い方をされたら状況は少し異なります。
- Look at the children who are wearing the same T-shirts.
同じTシャツを着ている子どもたちを見て。
こうなった場合、あなたは近くにいる子供たちの中から「同じTシャツを着ている集団」を探すはずです。というのも、見つけるべきthe childrenが関係詞節(who are wearing the same T-shirts)によって「限定」されているからです。
別の言い方をすれば、1.の場合は「そこにいる子供たち全員が同じTシャツを着ている」けれども、2.の場合は「同じTシャツを着ている子たち以外にも子供がいる可能性がある」ということです。
このように、関係詞には先行詞を「限定」させる力があり、これを「制限用法」といいます。こういった意味の違いを生み出したいからこそ、関係詞によって2つの文をつなげていたのですね。
まとめ
- 関係詞を使って2つの文をつなげるのは、先行詞を「限定」させたいから!
「限定」してはいけないものもある(非制限用法)
名詞によっては、「限定」すると意味合いが変に伝わってしまうものがあります。例えば、下の英文は少し違和感があるのですが、それはなぜだか分かりますか?
I have a girlfriend who lives in Tokyo.
東京に住んでいる彼女がいるんだ。
先ほどのthe childrenの例と比較すると、その違和感を感じ取ることができるかもしれません。つまり、関係詞で限定されたものは裏を返せば「他にもいる」ことをほのめかしてしまうのです。
「東京に住んでいる彼女」がいるということは、もしかしたら「大阪に住んでいる彼女」もいる可能性が捨てきれません。実際にそうである場合は別にして、変な誤解を生まないためにも「1つしかないもの」は関係詞で限定しないのが鉄則になります。
それと同じ理由で、「東京スカイツリー」のような固有名詞も関係詞を使って限定することはしません。
I want to visit Tokyo Skytree which is 634 meters high.
634mの高さがある東京スカイツリーに行ってみたいです。
少しひねくれた解釈ですが、これでは「634mの高さではない東京スカイツリー」があるかのように伝わる可能性があります。固有名詞を説明するときは、話し言葉では素直に2文で表現するか、書き言葉では関係詞の前に「,(コンマ)」を加える*だけで問題はすべて解決されます。
I want to visit Tokyo Skytree. It is 634 meters high.
I want to visit Tokyo Skytree, which is 634 meters high.
東京スカイツリーに行ってみたいです。それは634mの高さがあるんです。
関係詞の前に「,(コンマ)」が入ると、そこで文が一旦区切れるので、2文で書かれているのと同じ扱いになり、先行詞が限定されなくなるのです。これを関係詞の「非制限用法」といいます。2文で表現できるものをあえて関係詞で表しているので、当然これも硬い響きを持ちます。
まとめ
- 関係詞を使って「1つしかないもの」を説明するときには、関係詞の前に「,(コンマ)」を加えるか、思い切って2文で表現しよう!
ポイント5:関係詞を使うと大人の印象を与える
関係詞を使う理由は、先行詞の「限定」だけにとどまりません。関係詞には、情報を整理して伝える「大人」の響きが伴うのです。
- Look! This is a bag. I bought it in Harajuku.
見て!これバッグなの。原宿で買ったの。
- Look at this bag I bought in Harajuku!
原宿で買ったこのバッグ見てよ!
英文から受ける印象は人それぞれかもしれませんが、この場合は関係詞を使って情報を整理して伝えている2.の方が「大人」な印象があります。英語を学び始めたときには、難しい文法はなるべく使わずにシンプルな1.のような表現で話すのもよいかもしれませんが、いつまでもそういう言い方しかできないのは少しもったいない気がします。
「英語ネイティブは会話ではあまり関係詞は使わない」と思っている人も中にはいるかもしれませんが、そんなことはまったくありません。
2.のような関係詞を使った言い方は頻繁に登場しますし、会議やニュース、インタビューなどでもよく耳にします。書籍や新聞などの書き言葉で使われるのは、言うまでもありませんね。
例えば、過去の『ENGLISH JOURNAL』でBob Tobinさんという経営コンサルタントの方が、「自分がどんな人間か」についてこう語っていましまた。
I’m a creative person, but also I’m the kind of person that encourages other people.
私は創造力のある人間ですが、それと同時に他者を励ますような人間でもあります。
関係詞を使わなくても、複数の文で同じようなことを伝えることもできるでしょう。でもそうしないのは、「大人の英語」を話しているからです。「技巧を凝らした表現」という感じでしょうか。関係詞は確かに、学習者には難しく感じてしまうかもしれません。
しかし、それを乗り越えた先には洗練された大人の世界が待っているわけですから、努力のしがいがあるというものです。関係詞をスマートに使って、英語をかっこよく響かせましょう。
まとめ
- *関係詞には情報を整理して、英語を大人っぽく響かせる力がある!
イラスト:Satoshi Kurosaki
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