「関係詞(関係代名詞・関係副詞)」について、「文と文をくっつける」役割を持つと教わり、「先行詞」「主格・所有格・目的格」「制限/非制限用法」といった意味がよくわからないままの文法用語だけが記憶に残っている、という人もいるのでは?これだけは押さえておきたい「関係詞を使いこなすポイント」について、現役の高校教諭、大竹保幹先生と一緒に学んでいきましょう!
関係詞が苦手な理由とは
皆さんにとって英語で苦手な文法はなんですか?
「全部です」という回答が今にも聞こえてきそうですが、具体的に一つか二つ挙げてくださいと尋ねると、「関係代名詞」とか「関係副詞」という答えがよく返ってきます。
関係代名詞や関係副詞などをまとめて「関係詞」といいますが、これはwho、which、whereなどの疑問詞としても使われる語を用いて、名詞にさまざまな情報を付け加えることができる、とても便利な文法です。それなのにどうしてこんなにも苦手意識があるのでしょうか。
一番の原因は、英語では名詞に多くの情報を加えるとき、「後ろ」に説明が付くことになるからかもしれません。例えば、日本語では「僕が昨日原宿で買ったジャケット」のように「ジャケット」という名詞の前に説明が加えられますが、英語は違います。
僕が昨日原宿で買ったジャケット
a jacket I bought in Harajuku yesterday
こんな具合に、名詞の後ろにどんどん情報が足されていくのです。これを「後置修飾」といったりしますが、このおかげで文の読み方のリズムが狂わされて困ってしまうというわけです。
そのため、「関係代名詞を日本語に訳すときは後ろから」などとよく言われますが、そうなってしまうのも無理はありません。だからといって漢文の「レ点」のようにいつまでもずっと巻き戻しをしないと英語が理解できない、なんていうのは卒業したいですよね。百歩譲って読むときはいいのかもしれませんが、リスニングのときはどうすればよいのでしょう。音声を本当に巻き戻すのでしょうか?でも実際の会話は戻せませんよね。
つまり、関係詞の克服には英文理解のリズムを変えることが必要なのです。英語を後ろからではなく、頭から順番に理解すること。これが何より大切です。
そこで今回は、関係詞の苦手を克服するためのポイントと練習問題をたくさん用意しました。関係詞を英語のリズムで理解する方法、「接着剤」を超えた関係詞の役割、訳し方のコツなどをご紹介します。関係詞にさまざまな角度から触れることで、この文法と少しでも仲良くなれるはずです。これからは関係詞をスマートに使いこなしてみませんか?
Point 1:関係代名詞のリズムに慣れよう!
関係代名詞を使うときは二つの文を同時に考えなくてはいけないのでしょうか?――確かに、英文の構造としてはそうかもしれませんが、毎回二つの文を頭の中で考えるのはやはり大変です。そこで必要になってくるのは、名詞に対して情報を後から足していく感覚です。まずはその感覚を、短い英語で練習してみましょう。
「誰が」「何をする」を足す
関係代名詞の特徴として、ある名詞に対して「誰が」「何をする」という、SVに当たる二つの情報を付け加えることができる、というものがあります。同時に二つの情報を扱うために難しさを感じてしまうわけですが、基本的には以下のSTEPで出来上がっていると考えてみましょう。
STEP 1
主役となる名詞を決めます。説明が加わる名詞を「先行詞」といいます。
a computer(コンピューター)
STEP 2
その名詞に対して 「誰が」「何をする」を付け加えます。
a computer + I use → a computer I use
(私が使うコンピューター)
あっという間にSVの情報が入った名詞句の完成です。このような感じで、名詞に「誰が」「何をする」という二つの情報を加えるぶんには関係代名詞(who、which、that など)を使わなくてもよいので、後置修飾のリズムを体得するにはもってこいなのです。使う語を変えれば、こんな例も作り出せます。
a dress I want 私が欲しいドレス
an old man Tom respects トムが尊敬している老人
a house the couple built その夫婦が建てた家
こういった短い語句を作る練習をたくさん繰り返すことで、関係詞節を含んだ名詞句を一つのパーツとして認識する力が高まるはずです。すると、下のように文の中で使うのもそんなに苦ではなくなるのではないでしょうか。
That’s the dress I want!
あれが私の欲しいドレスなのよ!
まとめ
先行詞に「誰が」「何をする」の二つの情報を足すときには、関係代名詞は必要なし!
これで後置修飾のリズムを身に付けよう。
関係代名詞はいつ使うのか?
では、肝心の関係代名詞はいつ使えばよいのでしょうか。もちろん、先ほどのSTEP 2において関係代名詞を使っても構いません。
STEP 2
「誰が」「何をする」の前に関係代名詞を挟み込みます。
a computer + that + I use → a computer that I use
(私が使うコンピューター)
関係代名詞は、ある名詞について「これから説明を加えますよ」と相手に知らせるサインです。これについては後で詳しく扱いますが、名詞の説明がどこから始まるのかがわかるのであれば無理に使わなくてもよい、と覚えておきましょう。逆を言うと、それでもあえて関係代名詞を使うことで、より丁寧でかしこまった大人の印象を与えることができるというわけですね。
a dress that I want 私が欲しいドレス
an old man who Tom respects トムが尊敬している老人
まとめ
関係代名詞は、ある名詞の説明が始まるサイン!
――先行詞が「物(人以外)」ならthat(またはwhich)、「人」にはwhoを使おう。
「何をする」だけを足す
名詞に説明を加えるときには、「よく食べる男性」や「よく切れるナイフ」のように、先行詞に対して「何をする」という動作の情報だけを加えることだってあります。これも先ほどと同じように二つのSTEPで作れるのですが、このパターンのときだけは関係代名詞が必須となります。その理由がわかりますか?
STEP 1
主役となる名詞を決めます。
the man(男性)
STEP 2
whoと「何をする」を加えます。
the man + who + eats a lot(よく食べる)
→ the man who eats a lot(よく食べる男性)
関係代名詞が必要な理由は単純で、もしここでwhoがないと、The man eats a lot.(その男性はよく食べる)という一つの「文」になってしまうからです。自分が作りたいのが名詞句なのか文なのかの違いを表すためにも、説明開始のサインである関係代名詞が必要となるのです。もちろん、先行詞が「物(人以外)」であればthat(またはwhich)を使うことになります。
a dog that runs fast 速く走る犬
a knife that cuts well よく切れるナイフ
I’m looking for a paper knife that cuts well.
よく切れるペーパーナイフを探しているのですが。
まとめ
「何をする」という動作の情報だけを加えるときは、関係代名詞が絶対に必要!
関係代名詞は名詞の後ろに、英語の語順で情報を加えていくイメージを大切にしよう。
Point 2:先行詞と「何をする」の関係に着目
関係代名詞を使った情報の加え方には、Point 1で説明したように主に①「何をする」、②「誰が」「何をする」の二つのパターンがありますが、先行詞と「何をする」の関係はとても大切です。次の二つを見比べてみてください。
① a dog that runs fast 速く走る犬
② a dress that I want 私が欲しいドレス
①のruns(走る)は先行詞a dogが行う動作を表しています。まるで関係代名詞が主語のような役割をしているので、「主格」といいます。
一方、②では、先行詞a dressがwant(~が欲しい)という動詞の対象(目的語)となっていますよね。よって、このパターンで使う関係代名詞を「 目的格」といいます。
この二つの用語を使うことで、関係代名詞の使い方を整理することができます。
■関係代名詞が主格となるとき
・「人」にはwho(またはthat)
・「物(人以外)」にはthat(またはwhich) を使う
■関係代名詞が目的格となるとき
関係代名詞を使わなくてもよいが、もし使うなら、
・「人」にはwho(またはthat)※ごくまれにwhom
・「物(人以外)」にはthat(またはwhich) を使う
日常会話においては、「人」にはwho、「物(人以外)」にはthatを使うのが一般的です。whichはやや硬い響きがありますし、書き言葉のときを除いてwhomは前置詞の後ろ以外で使うことはほとんどない、ということを覚えておくとよいでしょう。
Column:加えてはいけない情報?
関係詞節を使えば、基本的にはどんな情報も無限に加えることができます。先行詞に加えたい情報がSとVでは足りないのであれば、以下例文の太字部分のようにどんどん後ろに加えていって構いません。
a computer I usually used at home
私が家でよく使っていたコンピューター
a dress I want to wear at the wedding party私が結婚披露宴で着たいドレス
a man who eats a lot of vegetables every day毎日野菜をたくさん食べる男性
a house which was built on the hill last year昨年、丘の上に建てられた家
では、こんな情報を付け加えるのは「あり」でしょうか?
a computer I use the computer
私がコンピューターを使っているコンピューター??
an old man Tom respects the old manトムが老人を尊敬している老人??
これだけは「なし」です。というのも、先行詞と同じものを情報として加える必要がないからです。先行詞と重複するものは関係詞節に入れてはいけないということですね。
特集「スマートに使いこなす関係詞」をEJ3月号でチェック!
※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年3月号に掲載している記事を再編集したものです。
イラスト:Satoshi Kurosaki
大竹保幹明治大学文学部文学科卒業。神奈川県立多摩高等学校教諭。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(いずれもアルク)など。