アルクの新刊『なぜ、英語では「虹は出ない」のか?』は、日本語と英語の違いに「なるほど!」と気付きを楽しみながら英文法をマスターしたい方に特にお薦めの一冊です。その内容からポイントを紹介します。
出発点が日本語!新しい「やり直し」の文法書です
英語をきちんとマスターするカギは、日本語の正しい理解にあります。
やり直し英語本のほぼすべては、英語が出発点ですが、本書は日本語が出発点です。例えば、日本語の文章には主語がない場合が多いのですが、英語には不可欠です。そのため「おなかが空いた」「虹が出た」などを英語で言うときに、何を主語にすればいいのか迷ってしまうことはありませんか?
また、日本語の「~ている」という1語が、英語では現在進行形・現在形・現在 完了 形の3つの時制にまたがっています。どう使い分けていったらいいのでしょうか。
本書は、このように日本語を起点に考えて英語で話そうとしたときに、うまく表現できない経験をした方にお薦めの一冊です。日本語と英語の話者の視点の違いを知れば、文法が面白いほどよく理解でき、発信力の向上につながるでしょう。
「公園でお姉さんを見ました」でわかる、日本語vs.英語の捉え方の違い
英語を学んでいく中でつまずきやすい急所・要所、言ってみれば英語のツボを、日本語と比べながら集中的に押さえて、日本人が陥りがちな英語の落とし穴にはまらないコツを学んでいくことが大切です。
本書の第1章「英文の組み立て方」から、一例を見てみましょう。
I saw your sister in the park this morning. けさ公園で(あなたの)お姉さんを見ました。英文は通常「①主語(誰が)→ ②動詞(どうする) → ③目的語(何を) → ④副詞句(どこで) → ⑤副詞句(いつ)」の語順 で並びます。最後の副詞句は、強調するとき文頭に出ることもあります。
例文では「① I(私) → ② saw(見た)→ ③ your sister(あなたの姉/妹)→ ④ in the park(公園で)→ ⑤ this morning(この朝)」で、まさにこの語順です。
一方、 日本語で自然に響く語順は「(①誰が→)⑤いつ→④どこで→③何を→②どうする」 です。主語「誰が」は自明なら言わないことが多く、上の日本語のように「けさ公園でお姉さんを見た」となります。
この例文で日本語と英語は、鏡に映った左右反対の像のように語句の並び順が見事に反転しています。 日本語と英語の物事の捉え方と述べ方の順番は、映像のズームインとズームアウトの関係に例えて比較すると理解しやすい でしょう。
日本語の「けさ公園でお姉さんを見た」は、朝の街全体を遠景で捉え、その中の公園に寄っていき、さらに公園にいる人物「お姉さん」を大写しする、いわゆるズームイン(広角から寄りのアップに移行する映像)の手法を感じさせます。
これに対して英語は、I saw your sister(あなたのお姉さんを見た)でまずお姉さんのアップから始まり、やや引いていくと公園にいることがわかり(in the park)、公園からさらに広角に引くと(this morning)朝日が昇って間もない街の全景が俯瞰(ふかん)されていくズームアウト(寄りの画像から広角に移行する手法)を感じさせます。
ズームインする日本語:けさ>公園で>お姉さんを見た日本語のズームイン(引きから寄りへ)と、英語のズームアウト(寄りから引きへ)の対照的な関係は、住所の表記にも見られます。ズームアウトする英語: I saw your sister < in the park < this morning.
住所で比較してください。
ズームイン:東京都>千代田区>永田町1-7-1>国会議事堂「英文はズームアウト」で表現する、まず対象をアップで見せてから、次第に背景となる情報を加えていく 手法を身に付けると、英文の組み立ても楽になっていくはずです。ズームアウト: National Diet Building<1-7-1 Nagata-cho, <Chiyoda-ku, <Tokyo
日本語と英語の違いに着目すると、「英文の組み立て方」だけではなく、さまざまな発見があります。
本書は、英語ネイティブの感覚が理解できる選りすぐりのポイントが6つの章で構成されています。第1章では、本書のタイトルでもある『なぜ、英語では「虹が出ない」のか?』という謎が解き明かされますよ。
本書の構成
第1章 「 英文の組み立て方」
主語の立て方など日本語と英語の文構成の根本的な違いに注目します。
第 2章 「 万能動詞have を使いこなせ」
英語らしさが凝縮されているhave の表現を集中的に学びます。
第 3章 「 時間のとらえ方の違いを知る」
言語によって切り取り方の異なる「時間」をめぐる表現がテーマです。
第 4章 「 英語と日本語のものの見え方」
同じ出来事に対して日本語と英語の見え方の違いを比較します。
第 5章 「 英語で心の思いを表現する」
話し手の心の機微が映し出す英語の助動詞表現を学びます。
第 6章 「 英語の名詞と冠詞の関係」
英語の名詞の感覚、そして日本語にはない冠詞について掘り下げます。
本書では、日本人にとっての英語の急所を重点的に取り上げています。これまで英語を学んできたのに、発信するのにはまだ自信が持てないという方は、ぜひ一度、手に取ってみてください!
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