英語学習を続けたいなら「強制力」より「自発力」!

「モチベーションの維持」。これは英語学習者の永遠のテーマと言えるのではないでしょうか。連載「飽きない英語 マナビツヅケル学習者」では、現役高校教員の大竹保幹さんが、授業で実践している飽きない英語学習の方法と、それを皆さんの英語学習に応用させるコツを紹介します。

「自分で決める」ことの学習上の効果

自分で英語の勉強を進めるときと、中学校や英会話学校などで英語を勉強するときの大きな違いは何でしょうか?

比べていけばいろいろな違いは見つかるかもしれませんが、いちばん大きいのは教材や時間、場所などを「 自分で選べる かどうか 」です。

誰かに「ああしろ、こうしろ」と言われるよりも、「ああしたい、こうしたい」と自分が思っているように事を進めていける方が、格段にやる気が出ます。というのも、 自分で決定を下していくことは、学習の動機付けに非常に重要な意味を持つ といわれているからです。では、私たちはこれをどのように日々の学習に取り入れていけばいいのでしょうか。

今回のテーマは「 自分で選択する 」です。

勉強はやらされるもの?

人に言われないと勉強できない

自分で教材を決めるのは大変だから、誰かから与えてもらった方がいい。

皆さんにも、「多少の強制力があるからこそ、あまり好きではない勉強をやろうと思える」という経験があるかもしれません。

えば、学校の宿題はどうでしょうか。

家庭で 取り組む べき課題が先生から与えられて、丸付けの仕方まで指定されます。 提出 日に間に合わなかったら、先生から何を言われるかわかりません。宿題を後でやろうと思ってリビングで休もうとしても監視の目は家にもあります。親から「宿題やったの?」と何度となく言われることでしょう。

確かに、どんなにやりたくないことでもここまで逃げ道をふさがれては「やるしかない」という気持ちになります。でもこの気持ちは一時的なもので、先生や親という強制力がなくなった途端、気持ちもなくなってしまうことがあります。

受験勉強でも同じことが言えます。誰に言われなくても自分が行きたい大学があればそれを目標にいろいろな科目の勉強をしますが、受験が終わり、勉強しなくてはいけない理由を失ってしまうと、あんなに勉強していたのがうそのように何もしなくなるのです。

これらの例に共通しているのは、「 自分で選択する度合いが低い 」ということです。怒られるのを恐れてする勉強は「鬼」がいなくなればする必要はなくなりますし、これよりやや前向きに勉強しているように見える受験勉強だって、英語や数学を好きで勉強しているのではなく、ただ大学などに受かりたいからやっている、ある意味で「やらされている」勉強にすぎないわけです。

もちろん、誰だって最初からやる気全開になれるわけでもなく、やらされていたことが徐々に楽しくなってきて、自ら進んで勉強していこうという気持ちに変化していくのが普通です。そして、それを可能にするテクニックの一つが、 「自分で選択する」 ことなのです。

生徒にやる気を出させる宿題の出し方

突然ですが、おやつの話です。皆さんはどちらのセリフを言われたいですか?

日のおやつは、ポテトチップスだよ」

「今日のおやつは、ポテトチップスかアイスのどっちか好きな方を食べていいよ」

おやつやご飯だけでなく、どんなことでも選択肢があるとちょっとうれしい気持ちになるもので、実は学校の宿題でも同じことが起こります。

「次回までの宿題は、今日読んだ文の和訳を全部ノートに書いてきてね」

「次回までの宿題は、今日読んだ文章の和訳を全部ノートに書いてくるか、この文章についての感想を約50語の英文でまとめるか、どっちか好きな方を選んでいいよ」

本当はどちらもやりたくなくても、 多少なりとも選択できる余地があると、「自分で選んだのだからやるか」という気持ちになりませんか?

学校では生徒たちが自由に担当の先生や教科書を選ぶことができない分、学校の先生たちはいろいろな場面で生徒たちに選択肢を与えて、少しでも前向きに学習に取り組めるよう工夫をしていたりするものなのです。

「自分で決める」から、続けられる

では、自分であらゆることを決めることができる家庭学習では、何をどのように選択していくとよいのでしょうか。

いちばんわかりやすいのは教材です。学校や予備校などでは指定の学習教材が与えられることが多く、とてもいい教材が使われることもあるのですが、 自分で選ぶに越したことはありません 。何がいい教材なのかわからないという場合は、書店やネットなどで「よく売れている本」や「おすすめの本」を探して、 候補 をいくつか挙げた上でじっくりと見比べて一つに決めるのがいいでしょう。

結果的に学校などで使われているものと同じになっても、「自分で決めた」という事実が気付かないうちに学習を後押しする力になっていきます。

学習場所については、自分のお気に入りの場所や集中できるスペースがあるのであれば、無理に変える必要はありませんが、特に定まっていないという人は 「自分の部屋」「図書館」「カフェ」などの選択肢を挙げて、毎回そこから一つを選ぶ習慣をつけるのがおすすめ です。

その日の気分に合わせて学習環境を変えられるだけでなく、自分で「ここ」と決めた場所に入ると、自然と勉強モードに気持ちが切り替わることがあります。

また、自宅以外だと人の目があるため、だらだらと続けることも少なくなります。場所によっては長居もできませんから、短い時間でしっかりと集中することにもつながるはずです。

学生の頃、「好きな席に座っていい」「好きな人とペアを組んでいい」「朝の読書時間は好きな本を読んでいい」といった 指示 があると、ちょっとだけ授業に前向きになれませんでしたか?日々の学習でもそういうささいな要素を自分で楽しみながら選ぶことが、学習を長く続けるコツなのです。

考えてみれば、「自分で選べる方がいい」というのは当たり前のことで、将来の夢だって「教師になりなさい」と言われるより、「好きな仕事をしていいよ」と言われた方がうれしいに決まっています。

たとえ自分が元から教師志望であったとしても、親から 改めて 「教師になりなさい」と言われると「言われなくてもそうするよ」となんとなく反発心が芽生えたりもするのではないでしょうか。

私たちは、やらされている仕事よりも、自ら進んで選んだ仕事の方がやりがいを感じられるはずです。きっとそこには自分で選んだという喜びだけでなく、責任があるからでしょう。

勉強もそれと同じです。人から与えられた学習は、どこまでいっても「やらされた感」がぬぐえませんし、行き詰まると他人のせいにしてしまいがちです。もちろん、誰かに用意してもらった道を進むこともたまにはいいのですが、その道を自分なりに踏みならしていく感覚は非常に大切です。

学習を「人から与えられるもの」から「自ら身に付けていくもの」に変えていく ためにも、自分自身で選択することを忘れないでくださいね。

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文:大竹保幹(おおたけ やすまさ)
神奈川県立多摩高等学校教諭。1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省 委託 事業英語教育 推進 リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。

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