「使わなそう」に思える英単語を覚えるには?大切なのは発想の転換!

「モチベーションの維持」。これは英語学習者の永遠のテーマと言えるのではないでしょうか。連載「飽きない英語 マナビツヅケル学習者」では、現役高校教員の大竹保幹さんが、授業で実践している飽きない英語学習の方法と、それを皆さんの英語学習に応用させるコツを紹介します。

英語を使って、どんな「自分」になりたい?

英語で仕事をしている自分。旅行先で、英語で買い物を楽しんでいる自分。

皆さんは英語を勉強してどんな「自分」になりたいですか?英語を真に学ぼうと心に決めたときにはどんな姿が頭に浮かんでいたでしょうか?単語の暗記や大量の英文読解などに苦しめられているうちに、そんな憧れの自分を忘れていませんか?

英語ができる自分の姿をイメージすることは長い英語学習を乗り切るために必要不可欠と言ってもいいくらい大切なことです。

もちろん、ただ想像するだけで すぐに 英語がペラペラと話せるようになるなんてことはありませんが、自分に対してポジティブなイメージを持つことができれば「勉強を頑張ろう」という気持ちも強くなるのです。

この連載の最後のテーマとして「自分のことに置き換える」テクニックを学びましょう。

「自分事」に変えていく

英語を始めた頃にはぼんやりと浮かんでいた「英語ができる自分」も、英語学習の現実と向き合うにつれてその姿が薄れていくような気がするというのは、誰しも経験があるでしょう。

英語は勉強すればするほど、ゴールの遠さに気が滅入ってしまいそうになりますよね。

私は普段は高校で英語を教えていますが、高校一年生になると多くの生徒が「英語の壁」のようなものを感じるようです。中学校までは得意だと思っていた英語が急に難しくなる。英語自体は何にも変わっていないはずなのに、新しく覚えるべき単語の数や細かい文法や語法にやられてしまうのかもしれません。

気持ちはとてもよくわかります。でも、本当はそういう「難しいこと」を学べる段階に進めたことを喜んでほしいんですけどね。

高校からの英語が難しく感じる理由の一つとして、新出語彙の量だけでなく、その難しさ、つまり使用頻度の低さがあります。中学校までは身のまわりのことを表現するための語句が中心だったのに、高校からは社会問題について話をしたり、抽象的な概念を説明したりするための単語が登場します。

日本語でもそんなに使わないよと思ってしまうような語も、少なくとも受験のためには学ばなくてはいけません。こんな単語、日常生活で使わないのに何で覚えなくちゃいけないんだ。こんなことを思い始めると、とたんにやる気がなくなってきてしまうのです。

しかし、英語を使いこなせるようになるためには、この壁を乗り越えなくてはいけません。そこで私は、そんな単語こそ、将来的に自分がどんな場面で使う 可能性がある か想像してみるように伝えています。

しかしたら、今は使わないと思っている語であっても、将来外資系の企業に勤めていてメールのやり取りの中で使うかもしれませんし、理科的な語であっても自分が好きなSF系の映画でセリフとして使われているかもしれません。

やってみるとわかりますが、よほどの専門用語でない限り使用場面をイメージすることができるものなんです。これだけで、その単語と少し仲良くなれた気がします。

自分は将来どんな英語を使っているか、その映画の中のセリフはどんな感じのものかなどを例文としてノートにメモするとさらに効果的です。このようなやり方でオリジナルの例文集を作っていけば、難しい単語も身近に感じるようになりますし、自分と関連のある例文だからこそ記憶に残りやすくなるのは間違いありません。

単語に限らず英語のさまざまな表現について「自分だったらどう使うだろうか」と常に考えるクセを付けると、「英語を使える自分」のイメージがより 具体的に なり、理想に近づける気がしてきて、学習に前向きになれるのです。

「憧れ」を大切に

学習内容を毎回自分に関連付けるのは大変だというのであれば、英語が使える憧れの人を決めるのもおすすめです。

英語は数年勉強したくらいでは思ったことを表現したり、相手の言ったことを難なく理解したりすることはできません。それだけに、テレビで芸能人が流ちょうな英語を話していたり、 同僚 が英語で 取引 先とやり取りをしていたりするのを目の当たりにすると「すごいな」とか「やっぱり英語ができるとかっこいいな」という感想を持つはずです。

こういう人たちに憧れませんか?私は憧れました。だからたくさん英語を勉強しようと思いましたし、今でもこういう努力を積み重ねた人たちを見るたびに「自分ももっと頑張らなくては」と気持ちが引き締まります。

一部の人は難癖をつけて「あの人は英語ができると言ってもその程度か」など意地悪な感想を持ったりもしますが、そういう人は英語ができるようになるまでに必要な努力を知らない人たちです。本気で勉強していないから「その程度」になるのがどんなに大変なことなのかがわからないのです。

外国語を習得するのって本当に大変なことですよね。英語の勉強を頑張っている皆さんなら、素直な気持ちで誰かに憧れることができますよ。

「できる自分」に近づいた状態をイメージ

憧れの力は人を動かします。私たちは「いいな」と思う人物に少しでも近づけるように自然と努力をするようになるからです。

ただし 、大切なのはファンとして近づくのではなく、「その人のようになるにはどうしたらいいかを考える」ことですよ。

当たり前のことですが、好きなアイドルのコンサートチケットを購入すればそのアイドルに会いに行くことはできますが、私たち自身がアイドルになることはありません。アイドルになるのを目標にして歌やダンスの練習をする人がいるように、私たちは憧れの人を目指して英語の勉強をしてみようということです。

スポーツ分野で活躍しているトップアスリートは、自分が得意技で勝利をおさめたりする姿を想像することで気持ちを高めるようです。

これには技の 動作 イメージを確認するという要素もありますが、「できる自分」を 具体的に イメージすることが今の自分を突き動かすよい例だと言えます。

私たちも、仕事で大事なプレゼンがあるときは、うまくいくのをくり返し頭の中でイメージしますよね。

ポジティブな未来を想像する力が、自分の気持ちや行動を変える力を生み出すということです。お先真っ暗な未来では、やる気を起こそうにもそれは無理でしょう。

時間をかけて「学び続ける」

英語を学び始めるのに遅過ぎることはありません。何歳から始めたってかまいませんし、留学などの海外経験だって、別になくてもまったく 心配 はいりません。

ただ絶対に必要なのは「時間」です。

英語ができるようになるには、誰もがとてもとても長い道のりを歩むことになるからです。しかし、毎日少しずつ進んでいけば誰にでもゴールにたどり着くことができます。

長いのりですから、ときどき疲れることもあるでしょう。寄り道をしたくなることだってあるはずです。でもまた戻ってくればいいのです。

英語ができるようになる秘訣(ひけつ)があるとすれば、それは「学び続ける」ことです。この連載で紹介したように常に学びを工夫して、ゴールに向かって歩みを進めましょう。

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文:大竹保幹(おおたけ やすまさ)
神奈川県立多摩高等学校教諭。1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省 委託 事業英語教育 推進 リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。

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