英語が苦手な人も、勉強が嫌いな人も、ひたすらたくさん勉強すれば上手になると信じていませんか?そんなあなたにおすすめなのが、連載「イングリッシュ・ドクター 西澤ロイの英語お悩み診療所」。第5回は、英語学習によくある病気「左脳リスニング病」の治療法をお教えします。
英語のリスニング中にやってはいけないこととは?
日本人で英語のリスニングに対して自信を持っている人はあまり多くはありません。 そもそも 、スピードが速すぎてついていけない、という人も多いでしょう。
ある程度聞き取れるようになった人さえ、TOEICのリスニングセクションの問題は聞き取れても、ニュースや海外ドラマ、映画などでネイティブ・スピーカーが話すナチュラルな英語のスピードにはついていけない・・・というケースが少なくないのです。
その 原因 となる「左脳リスニング病」を治す方法について、今回はお伝えします。 英語が聞き取れるようになるために、英語教材でリスニングをしたり、発音からやり直したり、ディクテーションやシャドーイングなどのトレーニングを行なったり・・・とさまざまなやり方があると思います。
では、ここでクイズです。英語のリスニング に関して 、以下の3つの中で、やってはいけないことや、注意が必要なものはどれだと思いますか?
間違った英語の聞き方をしていませんか?
まず【a】ですが、初心者で全く聞き取れないので字幕やテキストを見ながら聞いている、という人もいるかもしれません。字幕やテキストを見ながら聞いてしまうと、目に意識が行ってしまい、耳から入っている音に集中できなくなります。
耳だけに集中してリスニングをしない限り、リスニング力は伸びません。 字幕などは、確認のために見るだけなら良いのですが、リスニング中にいつまでも読んでいてはダメなのです。
また【b】のように、大量の英語音声を聞いている、という人も多いのではないでしょうか。「とにかくたくさん聞いて慣れなさい」という指導を受けた、という人もいるかもしれません。
もちろん、たくさん聞くことも必要ですが、特に初、中級者の場合には、量よりも質を重視することをおすすめします。量は少なくて良いので(例えば30秒程度の音声)、パーフェクトに聞き取れるようにする、ということです。
ところであなたは、 耳に入ってこなかった箇所や、聞き取りが怪しい箇所 に関して 、しっかりと字幕やテキストで確認 をしていますか?
また、確認した後に、その箇所を何度も何度も聞き直していますか? こういった聞き方は「基本中の基本」と言えるのですが、これをやらないことが、多くの人が上達できない大きな 原因 の1つです。ただなんとなく聞いているだけでは、リスニング力は上がらないのです。
原因 ">日本人の英語リスニング力がUPしない根本 原因
以下の画像をご覧ください(講談社『 日本人の脳に主語はいらない 』(月本洋 著)より引用)。
これは、日本人とアメリカ人に「ア」という音を聞かせたときの、脳の活動を示しています。アメリカ人は音楽脳といわれる「右脳」が優位なのですが、日本人は「左脳」が優位になっています。また、「s」などの子音を聞かせた場合には、アメリカ人も日本人も「左脳」が優位となります。 つまり、 日本人は言語脳といわれる「左脳」ばかり使っている ――。
実はこのことが、日本人の英語リスニング力の向上を阻害しています(ですので、私はこれを「左脳リスニング病」と呼んでいます)。
そもそも 英語は、日本語とは周波数が違うとも言われますが、少なくとも日本語よりも音の数がずっと多いのです。逆に言うと、 日本語は紛らわしい音がもともと排除してある言語 で、例えば right とlight、sinとshinとthinのような区別がありません。
ですから本当は、日本人はまず 耳を鍛えたり 、 音に対する意識を変えたり するところから始める必要があります。 具体的に は例えば、日本語に存在しない英語音の発音トレーニングをすることや、音に集中してリスニングすることが欠かせません。
日本語と同じ感覚のままでリスニングをしていては、生の英語はいつまで経っても聞き取れるようにはならないのです 。
英語のリスニングとは、意味が分かること?
ところで、「英語でリスニングができる」というのは一体何ができることでしょうか? もちろん「相手の言っている英語が聞き取れて、意味が分かること」ですよね。
ですから、リスニング中に【c】のように意味を考え、内容を理解しようとしながら聞く人が多いでしょう。人によっては、知っている知識を総動員し、前後関係などから推測し、頭をフル回転させて聞いていたりします。
実はそのような聞き方をしていては、リスニング力は上がりません。これは多くの方にとって「盲点」だと思います。最終的にはもちろん意味が分かる必要がありますが、最初から【c】のように意味を考えながら聞いてはダメなのです。
意味を考えてしまうと、音への意識が弱くなります。 意味を考えながら大量のリスニングを頑張っている人は、(聞き取れないところを)知識と経験・推測などでカバーする練習をひたすらしている ようなもの。
「英語が聞き取れる耳を作るトレーニング」には、残念ながらなっていないのです。 (※なお、リスニング中に意味を考えたり、推測をしたりすることがクセになってしまっている人が多く、それは「左脳リスニング病」の典型的な症状です) ここは誤解されることが多いのですが、 「練習」と「本番」を分ける のも重要なことです。
本番であればもちろん、相手の言わんとすることを必死で理解するしようとするでしょう。しかし、リスニング力をUPさせたいならば、耳を鍛える必要があるのです。そのためには 普段の練習で、リスニング中に意味を考えたり、推測したり・・・ということは一切やってはいけない のです。
なお、「意味を考えないと、意味が分からないじゃないか」と疑問に思う人もいることでしょう。意味 に関して は別のお話になります。意味が分からないという場合には、後からテキストを見て、きちんと英文を解釈し、意味をつかむことをもちろんやってください。
リスニングは、いわば「耳で行なうリーディング」。これまで説明したのは、耳で聞き取るところのお話です。後からテキストを見て、きちんと英文を解釈し、意味をつかむことも、もちろんやってください。
今回の"処方箋"
音だけに集中し、耳を鍛えよう
リスニング力をUPさせるための正しい英語の聴き方のポイントはこちらです。
1. 音だけに集中して、真剣に英語を聴く (意味を考えたり、推測したりしない)意味を考えたり、推測をしたりしてしまうと、音に対する意識が弱くなってしまい、耳のトレーニングにならなくなります。2.聞き取りが怪しい箇所は テキストや字幕などでしっかりと確認 する
3.意味が分からない箇所は、英文解釈をし、 しっかりと意味をつかむ
ですから、意味を考えず、推測もせずに、音だけに集中して真剣に英語を聴くことが、本当の意味でリスニング力を高めるためには欠かせないのです。
この辺のお話をきちんと理解している人は、英語の先生の中にもなかなかいません。だからこそ私が声を大にして語らなければならないと思っており、正しいリスニング方法について解説した特別講座の動画(30分強あります)をYouTubeで公開しています。
字幕なしで海外ドラマや映画を分かるようになりたい人や、英語を指導する立場にいらっしゃる方にこそぜひご覧いただけましたらうれしいです。意味を考えず、音だけに集中して真剣に英語を聴く――。私はこの方法で今まで500人以上に指導をしてきていますが、以下のようなうれしい感想をたくさんいただいています。
ちなみに その中には、TOEICで満点の990点を持つ英語講師の方も含まれています。
- 今まで分からなかった音が、不思議なくらい聞き取れるようになりました
- 映画を見ていたら、意味は分からないのですが、英語がポンポン耳に入ってきました
- LとRが初めて聞き取れました
- TOEICのリスニング問題が、とても簡単に感じられました
つまり、日本で英語の上級者とされる人の中にも、左脳リスニング病にかかっている人は結構な数がいるはずです。そのくらい「盲点」になっている話であり、私は日本人の 国民病 だと思っています。
まずはダマされたと思って、意味を考えないリスニング方法をぜひ試してみていただけたらと思います。
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執筆:西澤ロイ
イングリッシュ・ドクター(英語のお医者さん)。
英語への「苦手意識」や「英語嫌い」を解消し、英語が上達しない 原因 である「英語病」を治療する専門家。獨協大学英語学科卒業。TOEIC満点(990点)、英検4級。アメリカのジョージア州に1年間の留学経験あり。「英語感覚」や「英語の考え方」を分かりやすく日本語で伝えるスキルには定評があり、「長年の疑問がすっきり解消した!」「そんな風に英語を捉えたことがなかった」「目からウロコ!」という多くの感動や喜びの声が寄せられている。著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、「TOEIC L&Rテスト最強の根本対策」シリーズ(実務教育出版)など、計9冊で累計15万部を突破。メディア出演多数。木8(木曜夜8時)の知性を育む爆笑系(?)教育ラジオ番組「めざせ!スキ度UP」の他、コミュニティFMにてレギュラー番組・コーナーを4本オンエア中。
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