もう すぐに 迫る小学校での「英語必修化」!お子さんが宿題を持って帰ってきたとき、自信をもって教えてあげられますか?昔習ったはずの英文法、その内容を「子どもにも説明しやすいようにわかりやすく」大竹先生と一緒に復習しましょう!
助動詞って何だっけ?
「助動詞」という言葉を聞いて、どんな語を思い出しますか。can、will、 may などが すぐに 頭に浮かんだ人は、きっと英語が得意だったはずです。みなさんの中には、この「はずです」というのも must で表現することを覚えている人がいるかもしれませんね。 ちなみに 「 かもしれない 」は may を使います。この must や may のような語を「助動詞」というのでした。
It may be rainy tomorrow.(明日は雨が降るかもよ)とか It must be rainy tomorrow.(明日は雨が降るはずだよ)などと言えば、天気の話もできてしまいます。「助動詞」を変えるだけで、「雨が降る」ことについてどのくらい自信を持っているかがずいぶん違ってきますね。
このように、 「助動詞」はある 動作 や出来事に対して「自分がどのように捉えているか」を表すことができます 。play the piano(ピアノを弾く)という 動作 に対して、「これならできる」と考えているなら、can(~することができる)を使って I can play the piano.(ピアノが弾くことができます)のように「能力」があることを伝えることができるというわけです。 例を挙げるときりがありませんが、can、will、 may 、must など さまざまな「助動詞」を使い分けることで、「動詞」の表現はどんどん豊かになっていきます 。
have to は同じなの?">mustと have to は同じなの?
must(~しなければならない)、 should (~した方がいい)、 may (~しても良い)といった助動詞を使うと、「義務」や「許可」を表すことができます。日本語訳を見るだけでも違いは明らかですが、話し手と相手の関係性に注目するとその違いがよりわかります。You should take a rest .(休憩しなよ)なら「体調を気遣ってくれる友人」の発言に聞こえますが、You may take a rest .(休憩を取ってよろしい)はどう考えても目上の人、例えば「上司」などから言われているかのようです。
このように 助動詞の使い方ひとつで受け手の印象は大きく変わる のですが、場合によっては、ややこしい問題も起こります。
例えば、お子さんにこんなことを聞かれたら、どう答えたらいいでしょうか。
mustと have to は同じなの?
助動詞が変われば、当然、伝わる意味も変わります。とはいえ、mustと have to はどちらも「~しなければならない」という意味で習いませんでしたか。「同じ意味」を持っていると言ってしまえばたしかにその通りなのですが、もし本当にまったく「同じ意味」ならばなぜ2通りの言い方があるのでしょうか。
【答え】 健康診断で悪い数値が出ていたり、医者などから減量するように言われたりした 可能性 が考えられます。ここで must と have to を使い分けるために大切なのは、 ある行動を取ることになった理由がどこから生まれたか です。基本的に、 have to は「誰かから言われたため」やることになったことに使い、must は「自分の考え」でやらなくてはまずいと考えていることを表します。今回は have to と言っているので、自分の意志に反して減量することになった無念さが伺えます。
もし、この場面で 同僚 が I must lose weight.と言ったとしたら、「最近なんとなく体重が気になっているから、ごめん」くらいの意味かもしれませんし、医者に言われたのが きっかけ でダイエットを決意したのかもしれません。いずれにしても、食事の誘いを断られていることに変わりはありませんね。
ちなみに 、同じような意味を持つ must と have to も、not が付くと違いがはっきりとするのをご存じの方は多いかもしれません。もし知らなければ、ここで覚えておきましょう。
must not ~:~してはならない(禁止)お子さんにはこのように言ってみてはいかがでしょうか。
don’t have to ~:~する必要がない(不必要)
同じ「しなければならない」でも、少し違うんだ。やる気がなくても「宿題をやることになっている」なら have to で、「そろそろやらないとマズイ」と本気で思っているときは must を使うんだよ。夏休みの終わり頃にみんなが思うのは、I must finish my homework! だね。
willの過去形ってどういうこと?それって「未来」なの?「過去」なの?
must や may といった助動詞の使い方ひとつで、相手へ伝わるメッセージが変わることがわかりました。間違っても、目上の人に対して You may open the window.(窓を開けてよろしい)などと「許可」を与えるような言い方をしてはいけません。
目上の人といえば、「英語には敬語がない」とよく言われます。たしかに、相手によって「食べる」ではなく、「召し上がる」や「いただく」という別の語を使わなくてはならない日本語と比べると、英語は単純です。相手が誰であっても、eat の1語だけ知っていればいいからです。そういう意味では、英語に「敬語」はありません。しかし、だからと言って英語に「丁寧表現」がないというわけではないのです。
please を使うのは「丁寧表現」の基本ですが、助動詞と組み合わせるとより丁寧になります。 Close the door, please.(ドアを閉めてください)に Will you ~?(~してくれませんか)を付ければ Will you close the door, please?(ドアを閉めてもらえますか)という丁寧な依頼になります。 Would you ~?(~してくださいませんか)というさらに丁寧な表現だってあるんですよ。ところで、 would は will の「過去形」だったことを覚えていますか。
willの過去形ってどういうこと?それって「未来」なの?「過去」なの?
willは「~するつもりだ」という「未来」を表すのに「過去形」があるというのは、なんだか不思議な気もしてしまいます。 そもそも なぜ willを「過去形」にすることで、より丁寧な表現になるのでしょうか。
実は、willだけではなく、 助動詞の「過去形」は少し特殊な働きをします 。天気の話から考えてみましょう。
① It may be rainy tomorrow.
② It might be rainy tomorrow.
実は、 助動詞の過去形は「過去」ではなく、「控えめな気持ち」を表すことができます 。そのため、 may ~が「~ かもしれない 」という意味なら、過去形の might ~ は「ひょっとしたら~ かもしれない よ」という控えめな 予想 をしていることになります。形としては「過去形」ですが、実際には「今、そのことについてどう思っているか」を伝えているというのがポイントです。
そして、この「控えめな気持ち」が英語では「丁寧表現」となります。先ほど紹介したWill you ~? は丁寧な依頼ではありますが、「やるつもりがありますか?」という相手の意志を尋ねる聞き方なので、命令文よりはましだというくらいです。しかし、ここでwill を過去形にして Would you~? にすると、「これをやっていただけないでしょうか」と非常に丁寧にお願いしていることになるのです。人を敬う気持ちは日本語も英語も同じです。助動詞を上手に使って、素敵な人間関係を築いていきましょう。
お子さんには、このように伝えてみましょう。
助動詞の過去形は、「控えめで丁寧な気持ち」を伝えられるんだ。だから、 would は「未来」とか「過去」とかじゃなくて、「~だといいのですが」ってすごく丁寧な言葉づかいになるんだよ。
助動詞クイズに挑戦!
自分の気持ちを伝える助動詞を使いこなせる かどうか は、「大人の英語」になるための第一歩です。今回はクイズ形式で「丁寧表現」についてもう少し考えてみましょう。
Q1.プロポーズの言葉として適切なのは①と②のどちらでしょうか。
Q2.あなたは友人たちと食事をしています。「塩を取ってほしい」と伝えるのに適切な表現は次の①~③うちどれでしょうか。
【Q1の答え】②です。プロポーズは相手に結婚の「意志」がある かどうか を尋ねるわけですから、will を使った方が良いでしょう。Can you ~? も「~してくれますか」とお願いするときによく使う表現ですが、Will you ~? とは意味が少し異なり、それができる状態 かどうか を聞いていることになります。人生における大切な場面だからこそ、助動詞の意味の違いには気を配りたいですね。
【Q2の答え】一緒に食事をしているのは「友人」ですので、①が適切です。もちろん、②でも問題はありません。 ただし 、③の Would you mind ~ing?(~してくださいませんか)は、ここでは丁寧すぎます。「親しき仲にも礼儀あり」とは言いますが、仲の良い相手に対して丁寧すぎる表現を使うと、それがかえって「皮肉」に聞こえたり、「いらだち」を伝えたりすることになるので注意が必要です。相手によって言葉を使い分けるのは、コミュニケーションの基本ですね。
さて、こちらはロンドンのケンジントン公園にあるピーター・パンの銅像です。
ピーター・パンは “The boy who would not grow up(大人になろうとしない少年)” だったようですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。自分の気持ちを正確に伝えるためにも、「助動詞」の使い方を知ることはとても大切ですね。初対面や目上の人に丁寧な言葉を使うのは日本語も英語も同じです。「丁寧表現」を身に付けて、まわりから好かれる存在になりましょう。
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文:大竹保幹(おおたけ やすまさ)
神奈川県立厚木高等学校教諭。1984年横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省 委託 事業英語教育 推進 リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーブン・キング。
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