カリスマ英語講師Mr.Evineがお届けする、「大人の中学英語」シリーズ。今回は、英語初級者がよく間違える「前置詞の使い方」に焦点を当ててクイズ形式で解説します。記事では具体的な例文と解説を通じて、前置詞の誤用例を紹介。日常会話で自然な表現を身につける手助けとなること間違いなしです。
目次
前置詞の誤用例と学習法
Hi, there! Evineです。
さて、今回も僕の「やりなおし英語JUKU」に通う社会人の生徒(30~50代)たちによる英文法の誤用傾向に基づいたクイズを出します。今回は「前置詞の使い方」がテーマです。
英語初級者(中学英語の一般的な基礎内容は理解しているレベル)が勘違いしがちなネタをご用意したので、チャレンジしてくださいね。クイズは全部で6問。生徒の正答率は・・・クイズの後で発表します。早速、トライしてみましょう!
適切なものを[ ]の中から1つ選び、自然な英文を完成させましょう
- 「私は1階に降りていって、父と話をしました」
I went [to downstairs / downstairs] and talked to my father.
- 「チケット探してるんだ。ここに置いたんだけど」「あら、あなたの娘にあげちゃったよ」
I’m looking for a ticket. I left it here. — Oh, I gave it [for / to] your daughter.
- 「うわ、2014年まで1カ月切っちゃったよ!」
Wow, it’s less than a month [in / to] 2024!
- 「えっと、7時に目覚ましをセットしたよ」
Well, I set my alarm [for / at] 7 a.m.
- 「違うよ、僕が住んでいるのは5階だよ」
No, I live [in / on] the fifth floor.
- 「私たちは琵琶湖の湖畔をブラブラしました」
We chilled out [in / on / to] the shore of Lake Biwa.
さて、いかがでしたか?
前回に引き続き、今回も正答率約10%のクイズでした。
答え合わせで文法ポイントをチェック!
早速答え合わせをしていきますが、正解していても解説にあるポイントに一致していない場合は△ですよ。
- I went [downstairs] and talked to my father.
【副詞に前置詞は不要 正答率 12%】
まず前置詞の基本確認です。前置詞は動詞などとは違い、単独では表現力のない品詞で、「名詞の前に」置いて「前置詞+名詞」の形で使います。名詞とのセットが原則となるため、後ろの品詞が文法的なポイントの1つになり、今回のdownstairsは「下の階へ」という意味の副詞です。従って、前に前置詞を置くのはNGです。
ちなみに、なぜ副詞に前置詞が不要なのか?
副詞そのものに前置詞のニュアンスが含まれるからです。見方を変えれば、たいていの副詞は次のように「前置詞+名詞」で言い換えられます。
downstairs = to a lower floor(より下の階へ)
「前置詞to」+「名詞 a lower floor」
ということで、副詞の前にtoを入れてto downstairsとしてしまうとto to a lower floorのような重複の響きがあります。
- I’m looking for a ticket. I left it here. — Oh, I gave it [to] your daughter.
【場所の「到達」ニュアンスのto 正答率 12%】
「到達」のニュアンスを持つ前置詞toを用いたものです。「相手・到着地(人、場所)」に「人・物」が移動してたどり着くイメージで、相手(や移動先)がなければ成立しない他動詞 give(~を与える)のような動作(動詞)と相性がいい前置詞です。「与える」に「受け取る相手」が必ず必要と考えます。
一方、他動詞 buy(~を買う)のように1人でもできる動作は、toではなく「方向」のニュアンスがあるforを用いましょう。
(例)I bought it for Ayako.(僕はそれをアヤコのために買った)
買い物は1人でも可能ですが、「誰かのために」と「人」に「気持ちを向けて」買い物をするイメージが前置詞 for に合います。
ちなみに、1文目のlook forというイディオムは、look(見る)に「方向」の前置詞forをセットにすることで、「方向を変えて見る」→「探す」という表現になっています。
日常会話には動詞と前置詞を組み合わせたフレーズがたくさん登場しますが、こうした前置詞の感覚を持っていれば丸暗記せずにすむので、より定着しますよ。
- Wow, it’s less than a month [to] 2024!
【時の「到達」ニュアンスのto 正答率 8%】
「年号のときの前置詞はin」と中学英語では基本として叩き込まれるため、いまだに反射的にinを用いる学習は多いですね。しかし文意を考えると今回は誤りです。
問題2では「場所」に対する前置詞toの感覚をチェックしましたが、実は、toの「到達」ニュアンスは「時」に対しても用いることができます。「(あるとき)まで」という意味で、その時間に「達する」までの時間をtoで示すことができます。
※ less than ~(~より少ない)
- Well, I set my alarm [for] 7 a.m.
【時の「方向」ニュアンスのfor 正答率 2%】
「方向」を示すニュアンスを持つ前置詞forが正解です。(問題2の解説参照)
このforで「時」の「方向」を示し、この感覚が「先の予定」表現(予約)につながります。
一方、atは「時の点」で行動を開始した時点を指します。午前7時に起きるために(前夜に)アラームをセットしたわけではなく、アラームをセットする行為を「午前7時」にしたという不自然な意味になるため誤りです。
- No, I live [on] the fifth floor.
【「(面)接触」ニュアンスのon 正答率 18%】
前置詞onには「(面)接触」ニュアンスがあり、今回であれば5階フロアという「床面」 に触れているイメージがonに合います。これが正解です。
さてonは「~の上で」という日本語訳でよく知られていますが、「面」に触れている感覚があれば、「上」とは限りません。典型的な例で言えば「壁の絵」もa picture on the wallと表現できますので、前置詞onそのものが持つ感覚を押さえることが大切です。
- We chilled out [on] the shore of Lake Biwa.
【「(線)接触」ニュアンスのon 正答率 6%】
慣れていないと、とても難しい問題でしたね。この場面では、the shore(湖畔、岸)に「沿って」という感覚があるので、これも問題5と同様です。問題5では前置詞onの「面」接触ニュアンスでしたが、「面」は面をつくる「線」も含まれる(表現できる)ため、湖畔、岸の境界ラインに触れるイメージがonの感覚に合うと考え、これが正解になります。
※ chill out(くつろいで過ごす、[友人と]ブラブラする)
Mr. Evineの「やりなおし」学習ポイント!
前置詞も使う「状況」が大切
「時制」や「助動詞」では、話し手(書き手)の「感覚(気持ち)」が大切であることを話しました。では「前置詞」はどうでしょうか。前置詞では「状況」が大切になります。そして、前置詞は名詞とセットになってフレーズとして機能する品詞なので、名詞との相性も重要になります。
「in+大きな場所」「at+時刻」のように単純化して覚えることも、学生にとっては有効かもしれませんが、この情報だけでは問題4、5は解決できません。それぞれの前置詞のコア感覚と実際の場面・状況にひも付けなければ、より自然な英語発信スキルはいつまでたっても磨くことができません。
「脱」日本語! 英語で前置詞が持つ感覚をとらえよう
助動詞もそうでしたが、前置詞がうまく使えない原因として、日本語の意味に重きを置いて学習していることがあります。日本語はあくまでもダブルチェックのような位置付けで、今回の解説にあるように、まずはそれぞれの前置詞のベースになっているニュアンス感覚を、辞書などを参考に整理することが大切です。
こうした大きな1つのベースの感覚を養えば、問題2、3の前置詞toのように、「時」や「場所」など表現内容が変化しても、少し角度を変えて対応するだけで、同じニュアンスで対応できるようになります。「日本語」だけで押さえようとすると、まるで別々の用法として学習しなければならないので注意が必要です。「脱」日本語で文法を整理する意識が日常会話力につながります。
それでは今日はここまでにしましょう。次回もよろしくお願いします。
See you next time!
トップ写真:Laura Rivera from Unsplash
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