EJ新書『英検1級の語彙を極める!』刊行を記念して、著者の和泉有香(Joy)さんのインタビューをお届けします。本書の魅力はもちろんのこと、TOEIC対策、英検対策などの先生として活躍されているJoyさんご自身のことも教えていただきました。
- 作者: 和泉 有香
- 発売日: 2021/04/08
- メディア: Kindle版
「知らないモノに対する憧れ」が英語を面白くした
――Joyさんが、英語に興味を持ったきっかけはなんですか?
中学に入ったばかりの4歳上の従姉から「英語、面白いよ?」と聞いたのが印象的だったこと。そして祖母が従姉のことを「あの子、先生に“発音がいいね”ってよく褒められるんだって」と言っていたので「よ?し、私も中学に入ったら発音がうまくなるように頑張ろう!」と思ったこと・・・でしょうか。
残念ながらドラマチックな何かがあったわけでも何でもなく、今にして思えば単に「知らないモノに対する憧れ」程度のものだったのでしょう。
実は英語は中1で1学期中間試験時点から完全に落ちこぼれた後、中2の後半でなんとか追いついたのですが、その過程で英語が面白くなってきたのだと思います。
実に安上がり!留学しなくても英語力は伸びる
――どのように英語を習得しましたか?
取りあえず中2の後半で英語が得意になった後、高校時代は英語「だけ」しっかり勉強しました。
卒業後にECC高等英語専門学院(現・ECC国際外語専門学校)で特待生として1年数カ月学んだのが、私が教室で英語を教えてもらった最後の機会でした。この期間に集中して 英文暗唱などガッツリと勉強をしたのが今の英語力の基礎 となっています。
その後は NHKラジオの「英語会話」を聞いていた期間が長かった ですね。
生まれてこの方、日本を離れたのは10日くらいで留学もしていないので、われながら実に安上がりな英語力です。
授業の準備をすることが最大の勉強になっている
――英検1級と TOEIC 満点レベルをキーフ゜するために行っていることはなんですか?
あ、この質問はイタイ・・・(苦笑)授業の準備をすることが最大の勉強になっていることは間違いありません。正解を出せるだけではなく、全訳と解説ができるところまで理解しておくことが必要ですから。
春休みの間は非常勤講師の悲しさでほぼ暇だったので、 ネットで映画を1日1本ずつ観て いましたね。
アメリカやイギリスのベストセラー本は 翻訳本が出る前に英語で読む ことも多くあります。また ネットでの調べ物も英語で書かれたページを積極的に使う ことが多いですね。
インターネット上の情報で日本語表記のものは約2%、英語表記のものは60%だそうなので、手に入る情報量が格段に違います。
もっとも、 映画も読書もネットも「勉強している感」はゼロ です。
ほかには、 単語集を引っ張り出してきて1カ月ほどかけて復習 するぐらいでしょうか。ええ。やっぱり忘れることは得意なので。
発音記号を使いこなせると何かとお得
――最近気になる英語の語彙やフレーズはありますか?
cantankerous・・・!映画を観ていて出てきたときに「あ、コレは知らない」と思ったので取りあえず発音記号でメモっておき、映画が終わってから発音記号からつづりを逆算して調べました。
cantankerous
「怒りっぽい」とか「意地悪な」とかいう意味ですが、bad-temperedやmeanよりもずっと度合いが激しいときに使うそうです。
発音記号を使いこなせると何かとお得ですね。
効率よく英語を覚えたいならオモロい話でリラックス
――英語を教えていらっしゃるご経験から、「英語を学ぶ上での笑いの役割」を教えてください。
自分自身の経験から、理解したり覚えたりするためには眉間にしわを寄せて頑張るよりもリラックスする方が効率がいいと感じています。
まあ、私の場合は勉強以外でも笑うことや楽しいことが大好きですし、笑いを取らないと気が済まない関西人の血を抑えがたいこともありますが。
また1コマ90分の授業をすることが多いので、生徒さんたちの集中力が切れる前に意識的にひと息ついて集中力を回復してもらうために(そして実は時間調整のために!)オモロい話ができるよう、日頃から引き出しを増やすように心掛けています。
――Joyさんお気に入りの面白ネタがありましたら、ぜひ加えてください。
私の好きな小話(?)はコレです。
He drove his expensive car into a tree and found out how the Mercedes bends.
「聞いた瞬間に爆笑」もよいのですが、一瞬後にハハハと笑えるものが好きです。
劇団通訳は、宝塚ファンとしては夢のような仕事
――宝塚歌劇での通訳とはどんなお仕事ですか。印象に残るエピソードなどをお聞かせください。
ある作品(ショー)の振付のためにブロードウェイから来られた先生に1カ月ほどずっと付いていました。お稽古場での振付時はもちろん、演出家や外部との打ち合わせの通訳もかなりありました。宝塚ファンとしては夢のような期間でしたね。
振付家からの指示を訳すと全員が「はいっ!」と大きな返事をされることが印象的 でした。
また主にタップダンスの場面を担当していたのですが、振付時に「このときのプリエはグランまで行かずにドゥミで止めて」のようにクラシック・バレエの用語が出てきたことには驚きました。
タップダンス関係と舞台関係の用語は事前に用語集を作って頭に詰め込んでいましたが、さすがにバレエ用語は無警戒でした。・・・が! 娘が小さい頃にバレエを習わせていて私も口でバレエが踊れる(?)ため、無事に訳すことができてこの上なくホッとしました。
「会心の授業」を目指して90歳まで英語を教えたい!
―― 今後の展望、夢はなんですか?
夢は山ほどあるのですが、実現までの期日が長いものは「90歳まで英語を教えること」です。
アルバイトも含めれば20歳頃からほぼ途切れることなく英語を教える仕事をしてきましたが、それでもまだ「会心の授業」がほぼありません。
90歳まで粘ったらどうにかなるかな、というのがその理由ですが、そんな授業が何度かできたら教えることをサッサと辞めてしまうかもしれませんね。
英語と関係ない分野で言えば、小説を書きたいなあと思っています。芥川賞ではなく直木賞を狙います。(え。)
1級、準1級を目指す人、英語を教える先生にも役立つ!
――本書のアピールポイントをお願いします!
1級を目指す人だけではなく、準1級を受ける方にも読んでいただけること。また英語を教える方にも少しばかり参考にしていただけるかも、と思います。
短期間で集中的にボキャビルすることはもちろん必須ですが、並大抵の努力ではネイティブ並みに語彙を増やすことは不可能ですし、私もそのような段階ではまったくないことを自覚しています。同時に「気長に続けること」も大切なのだな、と少し肩の力を抜いていただければいいなあと思っています。
また英検1級二次試験についても自分の経験を少し書いています。ナゾに包まれた(?)試験室内の様子を楽しんでいただければうれしいです。
▼和泉有香(Joy)さん新刊の詳細・購入はこちら
『ENGLISH JOURNAL BOOK 2』発売。テーマは「テクノロジー」
現在、ChatGPTをはじめとする生成AIが驚異的な成長を見せていますが、EJは、PCの黎明期からITの隆盛期まで、その進化を伝えてきました。EJに掲載されたパイオニアたちの言葉を通して、テクノロジーの歴史と現在、そして、未来に目を向けましょう。
日本人インタビューにはメディアアーティストの落合陽一さんが登場し、デジタルの時代に生きる英語学習者にメッセージを届けます。伝説の作家カート・ヴォネガットのスピーチ(柴田元幸訳)、ノーベル生理学・医学賞受賞のカタリン・カリコ、そして、『GRIT グリット やり抜く力』のアンジェラ・ダックワースとインタビューも充実。どうぞお聴き逃しなく!
【特集】PC、IT、そして、ChatGPT・・・パイオニアたちの英語で見聞する、テクノロジーの現在・過去・未来
【国境なきニッポン人】落合陽一(メディアアーティスト)
【スピーチ&インタビュー】カート・ヴォネガット(作家/柴田元幸訳)、ケヴィン・ケリー(『WIRED』創刊編集長、未来学者)、レイ・カーツワイル(発明家、思想家、未来学者)、ジミー・ウェールズ(ウィキペディア創設者)、アンジェラ・ダックワース(心理学者、大学教授)、【エッセイ】佐藤良明