「楽しく、ためになる」授業や企業研修に定評のある、東洋英和女学院大学教授の高橋基治さんに、これだけ押さえれば英語で意思疎通できるというポイントを教えていただきます。第1回のテーマは「発音」です。ビートルズがきっかけで英語の世界へ入り、英語ナレーターとしても活躍する高橋さんのアドバイスとは?
目次
大きな声で、息を強めに出そう!
英語らしく発音するには「息」が大事です。一般に、日本人の多くは息が弱いため、英語を話すときに声に力がなく、自分が思っている以上に小さいボリュームで聞こえてしまいます。さらに、口先でぼそぼそと発音するため、音が伸びず、響かず、メリハリも出ません。
英語で話しているときに相手にWhat?と聞き返されるという人がよくいます。原因は「自分の発音が悪いからだ」と思い込んでいるようですが、実は違います。ネイティブスピーカーに聞いたところ、そのほとんどは「声が小さ過ぎて聞こえなかった」という、声の大きさの問題でした。声量が小さかったため、相手まで音が届かなかったというのが本当のところです。英語を話すときは、息を、おなかから喉を通過させて吐き出すイメージで、落ち着いた深みと張りのある声を出すように心掛けましょう。
英語を発音するときの息は、日本語の場合と比べて数倍強いと言われます。単語のストレス(強勢)や文の強弱リズムも息の強さに関係しますので、「息の強さ」に注意を払いながら発音するようにしましょう。
単語のストレス(強勢)がポイント
バナナ、オレンジ、チョコレート、バニラ、マクドナルド
海外で英語が通じなくて困る原因の一つに、カタカナ英語があります。日本語の言い方と実際の英語の発音が異なっているため、なかなか相手に理解してもらえません。特に、強く言うところ(ストレスの置かれるところ)を間違えたばかりに、食べ物や飲み物を頼んだら全く違うものが出てきたという笑い話は、誰もが経験する「あるある」と言えます。
カタカナ英語の例をいくつか挙げます。正しい発音を聞いて、ストレスの位置に気を付けながら声に出し、体得するまで練習してみてください。
- banana(バナナ)/bənǽnə/
「バナナ」の真ん中の「ナ」にストレスを置いて発音します。
- orange(オレンジ)/ɔ́(ː)rindʒ/
「オランジィ」のように出だしの「オ」にストレスを置いて発音します。「オ」は、口を縦に開けて、喉の奥から声を出すことがポイント。うがいをするときの感じです。
- chocolate(チョコレート)/tʃɔ́(ː)kələt/
「チョコリットゥ」のように出だしの「チョ」にストレスを置く感じで発音します。これも、口を縦に開けて、喉の奥から声を出す感じで発音しましょう。
- vanilla(バニラ)/vǝnílǝ/
「ヴァニラ」のように「ニ」にストレスを置いて発音します。出だしの/v/の音は、上の歯で下唇をこするようにして出しましょう。
- McDonald’s(マクドナルド)/mǝkdɑ́ːnldz/
日本人泣かせの定番。「マクダノゥヅ」のように発音して、ストレスは「ダ」のところに置きます。ここを間違えると通じません。出だしは/m/の音なので、Mcの部分は唇を閉じて「ムマク」のように言います。最後は発音が/dz/のため「ヅ」のようになります。
いかがでしたか?どれも最初は手ごわいですが、何度も繰り返し発音練習するうちにできるようになります。海外へ行ったら、ぜひ積極的に使ってみましょう。インターネットなどで他の例もたくさん調べられますから、チェックしておくといいですよ。
全く違う発音になる海外のブランド名
イケア、コストコ、ゴディバ
ストレスの位置のために、発音がカタカナ英語とは大きく違って聞こえる英単語を紹介しました。続いて、ストレスだけでなく発音(の一部)が全く異なるものも紹介します。どれも日本でもなじみのあるブランド名です。
では、ここでクイズです。以下のブランドは英語でどう言うでしょうか?
- (1) IKEA
- (2) COSTCO
- (3) GODIVA
日本語では、(1)「イケア」(2)「コストコ」(3)「ゴディバ」ですね。英語では次のような発音になります。音声も聞いて確認しておきましょう。
- IKEA
英語では「アイキア」。
- COSTCO
英語では「コスコゥ」。
- GODIVA
英語では「ゴダィヴァ」。
最後の「ゴダィヴァ」なんて、ぼっとーとして聞いてると、まさに「お台場」に聞こえますね。面白いでしょ?
英語と勘違いしやすいカタカナ英語に注意!
「カタカナだからてっきり英語だと思っていたら実は英語じゃなかった」という言葉にも要注意 です。これも、海外旅行の体験談で、英語が通じなくて困ったというエピソードとして登場する「あるある」の一つですね。
クイズ
再びクイズです。次の言葉の意味を当ててください。どれも日常で身の回りにある物ばかりです。分かりますか?
- outlet
- cream puff
- cards
- plastic bag
- condominium
- complaint
- microwave
- autograph
- pancake
- laundromat
正解は記事の最後に載せています。
このように、英語を使う際には、カタカナ英語に注意が必要です。日本語を英語っぽく発音すれば通じるだろうと、困ったときについつい使ってみたくなりますが、意外と通じなかったという経験を多くの方がするはずです。インターネットで調べれば他の例もたくさん出てきますので、海外に出掛ける前にチェックしておくと役立つでしょう。
英語らしいリズムを体得する方法
最後に、英語らしく聞こえるように発音するコツを紹介します。
英語は強弱のリズムが特徴で、これが「英語らしさ」を生み出しています。英語を話すときの「自然さ」や「明瞭さ」に重要な役割を果たしているのもリズムだと言われています。
英語のリズムは緩急がポイントです。文中では、動詞や名詞、形容詞などの内容語は強く発音され、ピッチも高く長めになります。それ以外の冠詞や前置詞といった機能語は、短く弱めに言います。この差によってリズム感が出るのです。これができるようになると、発音が「英語らしい」印象になります。
ただし、日本語を母語とする人は、すでに日本語のリズムが身に付いてしまっているので、一朝一夕に英語のリズムをマスターすることはできません。どうしても、継続的な練習が必要になります。
そこで、英語特有のリズムを習得するのに格好の教材があります。洋楽です。筆者もそれで学びました。
英語学習に歌を使う利点はたくさんあります。何より、アーティストとそっくりに歌えるようになろうとすることで、強く発音する箇所と弱く発音する箇所のメリハリを付けられるようになります。歌を聞きながらそれに合わせて歌えることの快感も加わり、結果、学習の継続につながります。また、継続的に練習を繰り返すことで、頭の中で文字と発音の結び付きが強化され、文字を見て発音するまでの高速化が進むという恩恵にもあずかれます。さらに、いっぺんにたくさんの単語や構文を知ることができて、そこから知識が広がる効果も期待できるのです。
歌は、単なるドリル練習をはるかに越えた、感覚にアピールしてくる心地よい素材です。これだけのメリットがあるのですから、使わない手はないですね!
クイズの解答
- outlet:コンセント
- cream puff:シュークリーム
- cards:トランプ
- plastic bag:ビニール袋
- condominium:マンション
- complaint:クレーム
- microwave:電子レンジ
- autograph:サイン
- pancake:ホットケーキ(※最近は日本語でも「パンケーキ」と言いますね。以前は「ホットケーキ」と呼ぶのが主流でした。)
- laundromat:コインランドリー
英語の「発音」におすすめの本
高橋基治さんの本
- 作成:2019年4月9日、更新:2024年9月3日
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