『プラダを着た悪魔』に『レ・ミゼラブル』!アン・ハサウェイの英語をモノマネ

はじめに                                       

映画の英語をシャドーイングし、英語力を鍛えることを目標としてきた本連載。初回のブラッド・ピットを皮切りに、デンゼル・ワシントン、トム・ハンクス、メリル・ストリープと、有名ハリウッドスターを毎回一人ずつ取り上げ、彼らの代表作のシーンを見ながら英語学習をしてきました。いよいよ最終回となる今回は、これまでの大ベテラン俳優から少し若返りをはかり、アン・ハサウェイを取り上げます。

『プリティ・プリンセス』でデビューを果たして以降、ちょっとドジで、それでいて憎めないチャーミングな女性を演じることが多かった彼女ですが、髪をバッサリ切り落とし、全く別人の雰囲気で挑んだミュージカル映画『レ・ミゼラブル』では、アカデミー俳優の仲間入りを果たしました。

今回もできるだけ多くのジャンルの映画を通して、英語学習につながるポイントをご紹介します。

まずは短いセリフから

まずは短い英文からです。次のシーンでは、宇宙でのミッション中に命の危険を察知したクルーたちが、緊迫した会話を交わします。

Brand : We need the recorder.
ブランド:記録器を回収しないと。

Cooper : Brand, Doyle, back to the Ranger now!
クーパー:ブランド、ドイル、すぐに船に戻れ!

Brand : We’re not, leaving, without, her data.
ブランド:データ無しでは帰れないのよ。

(『インターステラー』より)

ここでは、すぐに宇宙船に戻るべき緊急事態ではありつつも、ブランドはレコーダーを絶対に回収すると繰り返しています。その強い意志の現れと、重い宇宙スーツを着ての運動中のため、息をきらしながら、一文を細かく区切って発音しています。通常の英語教材ではあまり聞くことの発音方法(=リアルな英語)なので、忠実にリピートしてみましょう。なお、この会話のあと、身動きが取れなくなったブランドは、I can’t make it.やI’m not gonna make it.と繰り返し述べます。このmake itは「(何かを)達成する」という意味で、これを否定文で使うと「無理だ、できない」という、あきらめを伝える表現になります。

授業中のプレゼン、明瞭な英語

次のシーンでは、授業中にクラスメートに対して、プレゼンテーションを行っています。そのため、非常に聞き取りやすく、リピート向けの英語です。

Elves, giants, ogres and humans used to exist in harmony, but when King Florian was killed, allegedly by an ogre, Sir Edgar saw it as an opportunity to exile all nonhuman creatures to the forest, keeping their land for himself.
かつてはエルフ、巨人、鬼、人間が共存していました。しかしフロリアン王が殺されると、鬼によるとされますが、エドガー卿は、これを機に人間以外の生き物をすべて森に追放し、彼らの土地を自分のものにしようと考えました。(『魔法の国のプリンセス』より)

抑揚のつけかたや、強調したい箇所でのアクセントの置き方、さらには聴衆に向けてのジェスチャーやアイコンタクトなど、さまざまなプレゼンテーションの基礎が学べるシーンです。自分がプレゼンをしている気持ちになって、忠実にモノマネしてみましょう。

自分を積極的に売り込むポジティブな英語

次は、仕事の面接での会話です。ここでは、面接官がThat’s all.「もういいわ」と述べて、面接を強制終了しようとしたあとの、(アン・ハサウェイ演じる)若い女性の発言に注目です。それまではずっと過去の栄光ばかりを述べていた彼女は、That’s all.の宣言を受けて腹をくくり、その後は自分を売り込むための、未来志向でポジティブな発言に切り替えます。このような、前向きで自信を持った英語をリピートしましょう。

Yeah. You know, okay. You’re right. I don’ fit in here.
確かに、その通り。私はここに不向きです。

I am not skinny or glamorous, and I don’ know that much about fashion.
体は細くないし、魅力的でもないし、ファンションの知識はゼロ。

But I’m smart. I learn fast and I will work very hard.
でも頭はいいです。物覚えも早いし仕事熱心です。

(『プラダを着た悪魔』より)

テレビ画面越しの愛の言葉  

最後は、難病を患った女性が放つ、深い愛の言葉です。セリフは、録画された映像として流れます。映像の前半は下ネタなどを言ってふざけていますが、男性にWhat else?「他には?」と聞かれて以降は、生きている「今」のこの瞬間の、たくさんの幸せを噛みしめた言葉が続きます。囁くような口調を真似しながら、リピートしてみましょう。

Just how happy I am, in this moment, right now.
すごく幸せ。今の、この瞬間が。

The way the light’s hitting that face of yours. There’s this little breeze coming in through the window.
あなたの顔に差す陽の感じ。窓から入るそよ風。

It doesn’t matter if I have 10,000 more moments like this, or just this one, because it’s all the same.
こんな瞬間があと1万回あるか、もうこれで終わりか、そんなのどうでもいい。全て同じだから。

Yeah. Just that. Right now, this moment. I have this.
そう。同じなの。大事なのは、この瞬間。この瞬間があるってこと。

(『ラブ&ドラッグ』より)

まとめ                                        

今回は、アン・ハサウェイの作品と英語を取り上げました。本連載でこれまで見てきた俳優の中で、最年少のハリウッドスターが放つ英語、楽しんでいただけましたでしょうか。

ハリウッドスターの英語を “モノマネ” しながら英語を学ぼう、という本連載は今回で最後です。映画英語は、発話スピードが速めだったり、訛りのある発話だったり、後ろにBGMが流れたりと、通常の英語学習用の音声とは異なる点が多々あります。しかし一方で、喜怒哀楽の感情が込められた英語や、ハラハラドキドキするような緊迫したシーンでの英語など、教科書では味わえない英語を体験できるのも、映画英語の魅力です。これからも映画を楽しむことを忘れず、同時に英語学習も継続していきましょう。

飯田泰弘
飯田泰弘

岐阜大学教育学部准教授。趣味である映画鑑賞と、中学校から大学までの教員経 験を活かし、映像メディアを活用した英語学習や英語教育を考え、発信している。 とりわけ、一般の英語学習書には出てこない実例採取が大好き。博士(言語文化学)。研究対象は、言語学と英語教育。

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