吉本興業と立命館アジア太平洋大学共催の「APU M-1グランプリ」インターナショナル漫才(日英両言語を使用)での優勝を きっかけ に、バイリンガルMCとしてさまざまなイベントで活躍中のHalupachi(はるぱち)こと上小澤明花さん。連載「笑わせる英語」最終回の7回目は、英語で愛される笑いを取る方法についてお届けします。
“Who?”と“Why?”で英語のお笑いネタが思い浮かぶ
Hello everybody!笑わせる英語シリーズ、今回の連載はいよいよ最終回となりました!
今日はこれまでの内容も軽く振り返りながら、場面を問わずあなたが英語で笑いをとりたいとき、心にとどめておくべき「全体像」について、お届けしたいと思います!この全体像をしっかりとらえておくだけでも、英語で笑いをとりたいときにうまくいく確率がグンとUPすること間違いなしです♪
What is your goal?
さてさて、まずは英語を使って笑いを取る話し手になるための、ウォーミングアップです。以前も記事の中で似た質問をしたことがありますが、 改めて 、私は自分自身にも、読者の皆さんにも、問いかけたいと思います。
- あなたは誰を、笑顔にしたいですか?
- どうして、その人を笑顔にしたいと思いますか?
そしてなぜこの2つが大事かと言うと、これらをハッキリさせておくことで相手によりマッチした話ができ、笑いを提供しやすくなるからです。少し例を挙げてみましょう。
日本の文化に関するネタで笑いをとろう
Who?→留学生の友達!(を笑わせたい)
Why?→日本にいる間にもっとenjoyしてほしいから!
であれば、日本食や日本語など、日本の文化に関するネタで笑いをとろう、と考えることができます。アメリカ人留学生が日本のマクドナルドで注文したハンバーガーの小ささに衝撃を受けて、
How small!!と言ったなら、なんて小ささだ!
Yeah, welcome to Japan!と笑顔で返すと、日本のものはアメリカのものに比べてサイズが小さいことを、自虐を込めた笑いに変えることができます。笑いに変えてあげることで、留学生からしたらただの衝撃で終わるのではなく、ちょっとした思い出にもなることでしょう。日本へようこそ!
日本人の生徒らしい行動をアピールして笑わせよう
Who?→海外からきている英語の先生
Why?→日本で授業をするのが面白いと思ってほしい(文化の違いなど)
であれば、何かいわゆる日本人の生徒らしい行動をアピールして笑わせようと考えてみます。
It’s great that everybody is here on time !と、生徒たちが遅刻せずに感心している先生にすかさずみんな時間通りに来て素晴らしいわね!
Because we are Japanese!と言うと、日本人なので!
You are right !と笑ってくれて、逆に海外ではどのような学校生活がおくられているのか先生の方が伝えたくなってしまうこともあるでしょう。海外の人には、日本人は時間を守るというイメージをかなり強く持たれているようです。(笑)その通りね!(笑)
いかがでしょうか、この2つの例のように、“Who?”“Why?”をハッキリさせておくと、より相手がより親しみを持つ笑いを提供できるようになっちゃうんです!
ぜひ、皆さんも英語で楽しく話したい、または海外の人を笑わせたいという場面があれば、この2つのクエスチョンを思い出してみてくださいね。きっと、笑いのネタが思い浮かびやすくなるはずです!
「愛される笑い」は言葉の壁を超える
さて、本題に入ります。英語で笑わせるときの全体像についてですが、これまでこの連載でいろいろなtipsをご紹介する中で、私が「笑い」を取る上で大切だと思う<ある狙い>をこっそりと散りばめてきました。
その狙いとは・・・ただやみくもに笑いを生むのではなく、 「愛される笑い」を生むことです。愛される、つまりその笑いに好感を抱いてもらえるような内容にすることで、たとえ言語の壁があってそれ以上の会話は続けられないとしても、その後の「コミュニケーション」には必ず繋がってくる からです。
決して流暢な英語で会話が続かなくても、コミュニケーションというのは言語によるものだけではありません。スポーツやエクササイズを通じて意気投合したり、一緒に買い物に出かけて日常生活で困っている部分を助けあったり、映画や音楽を鑑賞して共に時間を過ごしたりと、仲良くなる方法はたくさんあります。
私は「笑い」は魔法のようなものだと思います。たとえ初対面の相手同士であっても、雰囲気を和ませ、「また会いたい」「もっと一緒にいたい」という気持ちや、たくさんの きっかけ を生むからです。
ぜひ皆さんにも、この「愛される笑い」を きっかけ に、この地球上で1人でも多くの人とコミュニケーションを取ることを楽しんでもらえれば幸いです。
笑いを取るためのよいスタートを切るには
相手を笑わせるのに第一印象はとっても重要 です。
出身はどこであれ互いに「外国人」である以上は、ただでさえ異文化の中に生きている未知な人間であるのに、最初にマイナスの印象をもたせてしまおうものなら、それ以上の交流の発展はなかなか期待できないですよね。
海外では日本と違って、スタンダップコメディという種類のパフォーマンスがコメディの中でも主流となっていますが、ここでは 導入が命 だと言われています。
とある有名なスタンダップコメディアンが、「導入で滑ってみようものなら、それ以降ステージに立っているのはhell(地獄)にいるようなものだね」とも言っていました。笑
じゃあ、笑いをとりたい人がよいスタートを切るにはどうすれば・・・?
はい、ここで、「笑わせる英語」シリーズのおさらいです!
第4回 の記事で、私は「笑い」を誘う土台として重要な役割を果たす、〇〇について書かせていただきました!
その〇〇とはなんだったでしょう?
正解は・・・「好感」です!
第4回 の記事でご紹介した、導入として相手を 安心 させ、オープンマインドにしやすくする「3つの好感」を参考にしてみてください。
- 笑顔をみせる
- 感謝 の気持ちを示す
- 自分について語る
I’m very happy to be here with you.あなたとここにいられてとても幸せです。(会えて嬉しい、来てくれて嬉しい、などの意味を含む)
I’ve been looking forward to this special time.といった表現を使うと、今この空間に好意を持っている人物であることも示し、好感を抱かせることができますね。ずっとこの時を楽しみにしていました。
さて、導入がうまくいったあなたにいよいよ盛り上げたい場面が訪れます。
笑いを提供したいときには 前回 ( 第6回 )と 前々回 ( 第5回 )で 具体的に 取り上げたようなツッコミやリアクションの違い、気を付けるべき話題などをあらかじめ 把握 し、相手によってしっかりと 判断 していきましょう!
英語を使ってがっつり笑いを狙いにいくぞ!というあなたへのワンポイントアドバイスは、 「ウケそうなネタをゼロから作る」<「観察し、独特の視点から表現する」 です。
ただでさえ不慣れな他言語(英語)で、しかも文化の異なる人たちに、オリジナルのネタを披露するというのはほんの少し、ハードルが高いというのが事実ですが、そんな状況でも笑いを取りやすくしてくれるのがこの、「観察」なんです。
相手や自分の日頃の言動を、少しだけ意識して、観察してみてください。そうすると、似ている点から異なる点まで、独特の視点から批判したり褒めたりしやすいポイントがわかり、オチを作ったり笑いを誘ったりするテーマが見つけやすくなります。
例えば、パフォーマンスを観て多くの人が感動している会場で観客の様子をよく観察してみます。すると、
日本人→座ったまま手元だけで拍手する
他国の人々→立ち上がって大きく腕を使って拍手する
といった違いが見えてきますね。その違いが見えたら、あとはそれを独特な視点からその光景を表現してみましょう。
As you can see , it’s very hard to make Japanese people feel excited. So , don’t let it get you down even if they look super bored. ご覧の通り、日本人を感激させるのはかなり至難の技です。(本当はそういうわけではない)なので、たとえ彼らが超つまらなさそうにしてても落ちこまないでくださいね。ここではただ日本人にスタンディングオベーション( Standing ovation)の習慣がないだけであるのにも関わらず、「かなり至難の技」と、日本人のリアクションの薄さに対して少しの皮肉をこめて表現することで、観察した事実を独特な視点から表現し、笑いに転換しています。
このように、身の回りにある異文化を観察してみると、数えきれないほどの「ネタ」が見つかるはずです。
これまで7回にわたって、あれこれと笑いのtipsを並べてきましたが、やっぱり私が大切だと思うのは、あなたが誰かを笑わせたいその時の、ゴール(Who?Why?)は何であるのかということです。
この記事を読んでくださった皆さんがまた1人でも多くの人と笑顔になり、 「笑い」という優しい魔法 によってこの世界にもっともっと多くの笑顔が生まれることを願っています。
Everybody can be the reason somebody smiles today.
Thank you for reading!
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文:上小澤明花(かみこざわはるか)
立命館アジア太平洋大学(APU)で国籍や宗教のほかにも多様性あふれる環境に身を置いたことを きっかけ に、自身の生まれ育った環境にとらわれない自由なアイデンティティーを確立。学生時代から幅広くMCのオファーを受け続け、2018年夏よりフリーMCとして本格始動(後に大学は中退)。「人々の<無関心>をエンターテインメントの力で『わくわく』に変える」ことをテーマに、若い世代へ向けたイベントプロデュースも自ら手掛けながら、MCや講演家として活動中。専属MCに、同時通訳者の横山カズ氏がメインジャッジを務める OPETS杯スピーチ暗唱コンテスト がある。
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