吉本興業と立命館アジア太平洋大学共催の「APU M1グランプリ」インターナショナル漫才(日英両言語を使用)での優勝を きっかけ に、バイリンガルMCとしてさまざまなイベントで活躍中のHalupachi(はるぱち)こと上小澤明花さん。連載「笑わせる英語」の第5回は、褒めていいことと悪いことについてお届けします。
絶対に避けたい、スベり英語
Hello everyone! バイリンガルMCのはるぱちです。
5回目となる、こちら「笑わせる英語」シリーズですが、今回はこれまでの内容とは反対に「笑わせない英語」について紹介します。
え?
いやいや、「笑わせない英語」なんてわざわざ知る必要ないのでは・・・と、思う人もいるかもしれませんが、これがまたとっても重要なんです。言い換えると、絶対に避けたい、スベリ英語といったところですね。
実は 第3回 の記事でもほんのちらっとだけ触れていたのですが、英語を使って人を笑わせようとするとき、多くの人が陥りやすい失敗パターンや、特に言語や文化の違いから、「そんなつもりじゃなかったのに・・・」と思うような、普段は日本人が気付きにくい要注意ポイントなどがたくさんあります。
そこで、これから皆さんが英語を使って人を笑顔にしたいとき、誤って誰かを傷つけたり怒らせてしまったりすることを避けるために、今回はその中でも特に重要だと感じる要素だけをピックアップして、お伝えしていきたいと思います。
容姿について褒めるのは・・・ちょっとSTOP!
え、褒めるのがNG??と、意外に思う人もいるかもしれません。
確かに、会話やスピーチの初めに聞き手のことを褒めると、聞き手によい印象を持ってもらえることもありますよね。
また、日本のお笑いでは、笑いを誘うための「イジリ」をする時、視覚的なわかりやすさから大勢の人が共通認識を得やすい容姿がネタに多く取り入れられがちです。
そう、ここで皆さんに覚えておいてほしいのは、褒めること自体がNGなのではなく、この、「容姿について」という点が駄目ということです。
最も多い例は、日本人が特に西洋の人に向けて言ってしまうことの多いこのフレーズ。
「あなたの鼻は高くてうらやましいよ」
もしかすると多くの日本人にとってこれは褒め言葉なのかもしれませんし、言われたのが日本人であれば、不快な思いをする人は多くないかもしれません。
しかし、世界で見ると必ずしもこの「鼻が高い」というのは褒め言葉ではないことを覚えておいてください。
私がこのギャップに気付いたのは、きれいな顔立ちをしたドイツ人の女の子が言ったある一言が きっかけ でした。
I don’t like my big nose.彼女がそう言ったとき、当時まだ学生だった私はかなり驚きました。すっと鼻筋が通ってはっきりとした顔立ちの彼女が、まさか顔のパーツに悩みがあるなんて思ってもみなかったからです。そして、big nose(大きな鼻)と言われると私はなんとなく鼻筋の高さではなく鼻の形がどちらかというと横に広いイメージをしますが、彼女はそういうわけでもなかったからです。私、自分の大きな鼻が嫌いなの。
Japanese students often talk about my nose and they say “いいなぁ”, but ... is that good for you guys?そう言ってくれた彼女は、幼いときから自分の鼻にコンプレックスがあったので、日本人から言われるたびに傷ついていました。日本人は すぐに 私の鼻を見て「いいなぁ」って言ってくるんだけど、それって褒めてるつもりなの?
同じような話を、フランス人とイギリス人の男の子からもされる機会がありました。彼らの場合はコンプレックスというわけではなく、新しく 日本人の友達ができるとそのたびに鼻について触れられて、うんざり しているというのです。
正直なところ、これは日本人同士でさえしばしば起きている問題で、体の一部分は私たちが生まれながらに備えているものなので、変えたいけど変えられない、気に入っているわけではないけど隠すつもりもない、そういう思いを抱えている人はたくさんいます。
ただ、特にこうした容姿に関する価値観は、文化が違えばさらに違うことも多いようです。髪の色、瞳の色、肌の色、顔や身体のかたちなど、誰かを笑顔にしようと思って自分との「違い」を褒めようとするときは、ワンクッション置いて、考えてみてください。
- 相手はどのようなカルチャーの中に生きていて、どのような捉え方をするのか?
- 言われる相手だけでなく、その場で聞いている人の中にも、反対のカルチャーを持つ人はいないか?
と、このようなことを書きつつ、私もまだまだ道の途中です。これからもさまざまな人と交流をしていく中で、一人でも多くの人を笑顔にできる話し手でありたいと思っているので、学んだこと、身に付けたことを皆さんに少しでもシェアハピしていければ幸いです。
容姿について褒めることの危うさについて書きましたが、せっかくなので文化が違う人々に対しても、これは褒めても大丈夫!な表現についてちょこっとご紹介しておきましょう。
相手を英語で褒めたい際に使いやすくわかりやすいのは、 その人の性格や行為、好きなこと に関して 褒める ことです。
I like her character.彼女のキャラが好きだなぁ。
I like his shoes.I like ~で、あくまでそれが主観(ほかの人はどうだか知らないが、といったニュアンスを含む)であることを示しながら 、相手や相手の持つモノについて褒めることができるので、例えその枠にハマらない人がいても、傷付けたり不快な気持ちにさせたりしてしまうリスクを下げることができます。彼の靴、イケてるなあ。
また、 性格を意味するcharacterという単語はどんな性格も気質も含むので、多様な個性を尊重しやすく、個人的には好きな表現 です。
以下は相手の特技や趣味について直接的に well (上手)、kind(親切)、cool(イケてる)など簡単な副詞や形容詞で褒める例です。
She is always kind to me.彼女はいつも親切にしてくれるの。
He sings very well .彼は歌がかなりうまい。
His artworks are so cool.もちろん、相手を笑顔にすることが目的ですから、ただやみくもに人を褒めるのはいまいちですね。上に挙げたように 具体的に 、日頃の行動や情熱に対して 感謝 や敬意を伝えることで、あなたのことを応援しています、いつも見ていますといったようなメッセージを含むことができ、思いが伝わりやすくなります。彼の作品はかなりイケてる。
今回は、人を笑顔にしようと思っている にもかかわらず 無意識のうちに陥ってしまいがちなミスと、その代わりに使っていきたい、人を笑顔にする表現についてご紹介しました。
これらももちろん、決まった正解などありません。うれしい、楽しい、悲しい、腹立たしい、と感じるポイントは人それぞれです。大切なのは、日頃から自分が使っている表現を振り返ってみて、
- 文化に裏付けられた当たり前を押し付けていないか?
- 目の前の相手に思いやりのある表現や言葉を選んでいるだろうか?
「笑わせる英語」シリーズ、また次回も違った角度から、人を笑顔にする英語をお届けしたいと思います。
Thank you for reading.
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文:上小澤明花(かみこざわはるか)
立命館アジア太平洋大学(APU)で国籍や宗教のほかにも多様性あふれる環境に身を置いたことを きっかけ に、自身の生まれ育った環境にとらわれない自由なアイデンティティーを確立。学生時代から幅広くMCのオファーを受け続け、2018年夏よりフリーMCとして本格始動(後に大学は中退)。「人々の<無関心>をエンターテインメントの力で『わくわく』に変える」ことをテーマに、若い世代へ向けたイベントプロデュースも自ら手掛けながら、MCや講演家として活動中。専属MCに、同時通訳者の横山カズ氏がメインジャッジを務める OPETS杯スピーチ暗唱コンテスト がある。
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