ロンドンの穴場、秘密の地下トンネル・アトラクションを川合亮平さんがレポート。

写真提供: The Postal Museum

イギリス英語と大阪弁を駆使して、枠にとらわれない活動を 展開 している 川合亮平さん が、この夏、イギリスに滞在中。現地での最新情報をレポートしてくれます。今回は、9月にオープンするアトラクションを、特別に先行公開します!

こんにちは! ロンドンから川合亮平です。

みなさんお元気ですか??

今、ウェストエンド地区にある Foyles という本屋さんの5階のカフェでこの原稿を書いてます。人を待つスキマ時間を利用して仕事しようとして、ちょうど良い場所が見つかりラッキー・ハッピーです。
紅茶をオーダー(3ポンド也)。 ちなみに 僕は濃いぃ紅茶が好みです。覚えておいてください。

ナイスな本屋さん:Foyles

ロンドンの地下に新アトラクション登場!

さて、話題は変わってこちら、7月の中旬から、頻繁に見かけるようになったロンドンの地下鉄広告↓↓↓

「Secret Abandoned Forgotten UNTIL NOW」 だって。

あえて訳してみると、

「秘密で、捨てられ、忘れられてた・・・それが今明かされる」。
何だかドラマチックです。

「Secret Abandoned Forgotten UNITIL NOW」って音読してみると、映画のトレーラーでありがちな、あの独特の低い “ええ声” のナレーターが読むセリフみたい。

さて、何が明かされるのか?というと、それはズバリ、 MailRail (という最新のアトラクション)なのだ。

Mail Rail は、ロンドンでかつて使用されていた郵便専用の地下鉄、のこと。

へぇ、そういうのがあったんですね!
人が乗る地下鉄じゃなくて、あくまで郵便物専用のシステム。

広告のコピーに戻ると、僕個人的には、“ Forgotten UNTIL NOW”というよりは、むしろ “Discovered for the first time” ですわ。だって そもそも 知らなかったんだもん。いくつになっても知らないことだらけです、正味の話が。

Mail Rail がオープンするのは9月4日(月)なんですが、先日特別に内部を見学・乗車させていただきましたのでレポートします。

秘密の列車に乗ってみよう

地下に下っていくと、Secret感満点の無機質な地下発着場が全貌を表します・・・。

ちなみに 、このスペースでイベントを開催することもできるそうですよ。

この Mail Rail は、1927年に運行を開始しました。

そもそも なぜ Mail Rail というシステムが作られたか? その理由は至極シンプルで、当時、地上道路の渋滞が日常化し、配達業務がままならなくなったらしいです。

だから、誰かが「いっそのこと、地下にスカッと一本道を通してみたら?そしたらスッキリするじゃん」と提案して(そういう気軽なセリフを使った かどうか は知りませんが)、Mail Rail が作られたのです。

1927年の運行開始から、2003年にこのシステムがお役御免になるまで、郵便物専用の車両が、毎日、4分ごとに1便、1日22時間、走っていたのです。1日は(誰でも平等に)24時間なので、運行してない残りの2時間は 整備 の時間。まさにフル稼働。

では、Mail Rail に乗り込んでみましょうか。郵便物専用車両なんで、かなり小さいですよ。Mind your head!

上のビデオの中で、ぼくが “claustrophobic” と言ってその後なんと言おうか頭に浮かばず黙りますが、claustrophobic という単語、ご存知ですか?英語では意外によく使う言葉なんですよね。意味は「閉所恐怖症」。僕自身は特に claustrophobic ではないですが、このアトラクションは claustrophobic の方は避けた方が無難でしょう。

だって車両がとにかく狭い(郵便専用ですからね、なにせ)。力士のあなたはぎりぎりアウトの大きさ。小兵力士のあなたならギリギリセーフか、という大きさです。

Mail Rai l乗車体験は、約20分。ところどころで解説アナウンスが入ったり、通路に投影されるプロジェクションマッピングで関連映像が流れたりと、Educating and Entertaining な内容。

降下でキャー!とか、水に突っ込んでバシャ~!とか、そういった類い のアトラクションではないですが、Mail Rail という文化遺産を身を以て感じられる、大変興味深い体験でした。当時の手紙やハガキはこの “揺れ” を感じながら、人から人へ渡ったんだな~、と。

Mail Railはヒューマン・ドラマ

この Mail Rail、2003年に運行が全面ストップしました。地上での運搬費の方が、Mail Rail のランニング・コストに比べて安くなったというのが理由のようです。

でも、 今後 何があるかわからないということで、万一のために、この場所・システム自体はキープされていました。

しかし近年になり、Mail Rail 復活の 可能性 がますます低くなり、この場所の再開発が協議されるようになったのです。

結果的に2015年に、Mail Rail というこのアトラクションにしようということになったのですが、それまでにはいろいろ 候補 があったらしいですよ。

例えば、Mushroom Farm にしてみようか、とか。
マッシュルーム・ファーム? きのこ農場? この場所、結構な広さ・面積ありますけどね。もしこの案が可決されてたら、イギリスはきのこ生産大国になっていたかもしれません。
ロンドンの中心部の地下にきのこがあふれてる様子はなんだかシュールだな。まず間違いなく、提案した人はきのこ好きで、この案が頓挫したのは、きのこ嫌い派が勝利したからなんでしょうね。ちょっと残念だな。きのこ好き派の僕としては。

Mail Rail の発着場と同じフロアには、実際の車両などが展示されているコーナーもあります。インタラクティブな器具も多くあり、楽しい。思わず説明を読みふけってしまう。

Mail Rail の担当者に Mail Rail 設立の経緯を聞くと「実際にこの場所で、自分の仕事に誇りと愛着を持って仕事をしていた人がたくさんいるんだ、という Human Story をこのアトラクションを通じて人々に感じてほしかった」とのことです。

なるほど、確かに、一連の体験は、なんだか良質なドキュメンタリーを見たときのような、確かな感動を胸に起こさせました。

ちなみに 、Mail Rail のオープンは9月4日です(チケットはすでに発売中で、11月までの週末は全て売り切れてるそうですよ)。

あ、そういえば、このMail Railの通路、1991年に公開された 『ハドソン・ホーク』 というブルース・ウィリス主演のアメリカ映画のロケ地としても利用されたそうです。

ロケのためには Mail Rail は確実に運休にしたはずで、でも、かなり忙しいスケジュールで運行していたはずだから、このロケの前後に出した郵便物は、英国民の元に届くまでいつもより遅延したのでは、と想像します。

この事実が、今明るみに出たことで、「そういえば、1991年・・・、毎年お中元で楽しみにしているボンレスハムの到着が例年になくエライ遅れたのは、そのせいだったのか!」と思っているイギリス人がいる かどうか は知りませんが。

The Postal MuseumへGO!!

さて、Mail Rail の姉妹アトラクションに行ってみましょうか。路を挟んで向かいにあります。

こちらは、 The Postal Museum といいます。郵便博物館。

グランド・オープンの2日前に取材に訪れました。絶賛工事中です。

アトラクションとしては、Mail Rail と The Postal Museum は言わば2つで1つなんですが、The Postal Museum の方が一足早くオープンしたのです。

館内を巡ってみましたので以下の動画をご覧ください。

ロンドンにまたひとつ、魅力的な観光アトラクションが誕生してしまったぜ。

合亮平でした。

またね。ばいなら。

文中に登場した映画はこちら!
ハドソン・ホーク [Blu-ray]
 
川合亮平の本
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川合亮平(かわい・りょうへい)
英語インタビュアー、通訳・翻訳者、ライター。 All About イギリスガイド。特徴は、イギリス英語と大阪弁を話すこと。枠にとらわれない活動を 展開 中。登場メディアは多岐に渡る。東京、ときどきロンドン在住。詳細は こちら

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