月刊誌『ENGLISH JOURNAL』で18年近く連載された人気コーナー「Tea Time Talk」が、このたび書籍化されました。著者は、長い間日本で翻訳家や大学講師として活躍し、現在は生まれ故郷のアメリカ、テキサス州で暮らすケイ・ヘザリさん。英語を学ぶ多くの人々から支持されてきた、ヘザリさんのエッセイの魅力を探ってみましょう。
月刊誌『ENGLISH JOURNAL』の大人気連載が書籍に!
月刊誌『ENGLISH JOURNAL』の読者だった方にはおなじみの人気エッセイ「Tea Time Talk」。このコーナーのファンは本当に多く、編集部には毎月、次のような熱い感想が寄せられていました。
- 「Tea Time Talk」は、英語は易しいけれど、内容が濃くて深く、いつも人生や世の中について考えさせられます。
- ヘザリさんの温かいまなざしが感じられる上質のユーモアが大好きです。
- 朗読が聞き取りやすく、内容も素晴らしいので毎回楽しみにしています。
月刊誌『ENGLISH JOURNAL』の休刊とともに、この連載も残念ながら終了してしまいましたが、ファンの皆さん待望の単行本が、1月26日に発売となりました。
本書には、『ENGLISH JOURNAL』2017年7月号から2023年1月号までの「Tea Time Talk」のエッセイのうち、32編が収録されています。ヘザリさんはPreface(はじめに)でこのように書いています。
The essays in this collection, written in Texas between 2017 and 2022, are reflective and personal. I write about the loves of my life: language, books, dogs, Japan, cooking. I also write about inspiration and the struggles many of us have in common.
この本に収められたエッセイは、2017年から2022年にかけてテキサスで書いた、思索的で、心の奥を表したものです。私が暮らしの中でとても大切にしているもの――言葉、本、犬、日本、料理――について書いています。私たちの多くが共有している励みや葛藤についても書いています。
この後、次の文が続きます。
The pandemic and two years of lockdown color a number of these pieces as well.
パンデミックと2年間のロックダウン生活は、これらのエッセイの多くにも影を落としています。
そう、本書に収録された文章は、2020年を挟む数年間という「激動の時期」に書き継がれたものです。その中で大きく変わったことと、世の中がいくら変わっても同じように続いていくことの両方に視線が注がれている点も、へザリさんのエッセイの魅力の1つと言えそうです。
興味がある内容・分野がきっと見つかる
本書の目次を見てみましょう。
本書では、32のエッセイが、内容別に「日常の中で考える」「読む喜び」「犬との暮らし」「言葉と向き合う」「変わりゆく社会」「日本と私」の6つの章に分けられ、それぞれ『ENGLISH JOURNAL』での掲載年月の古い順に収録されています。
まずは、自分にとって興味がある章や、身近に感じる章から読んでみることをお勧めします。きっと、ページをめくる手が止まらなくなるはずです!
シンプルなのに奥深い、表現力豊かな文章
多くの読者を引き付けてやまない、シンプルで読みやすく、それでいて奥が深い文章の例を見てみましょう。以下は、「Lessons From Our Dogs(飼い犬たちから学ぶこと)」というエッセイの冒頭部分です。ぜひ、ヘザリさんの朗読音声と一緒に味わってください。
Gracy is my eccentric dog. When I got her, she was 2 or 3 years old, and I knew nothing about her past. Sometimes her behavior was odd, so I assumed previous owners had mistreated her. I was sure I could “fix” her with lots of love and attention.
When I say eccentric, I don’t mean it in a bad way. It literally means “outside the center” and suggests someone who’s unconventional or does things differently from others. Some of my favorite people are eccentrics, and Gracy, like them, seemed to live in her own world.
グレイシーは、私が飼っているeccentric(風変わり)な犬です。引き取ったとき、彼女は2、3歳で、それ以前のことについて、私は何も知りませんでした。時々変な振る舞いをすることがあったので、前の飼い主たちに虐待されたのではないか、と推測していました。たっぷり愛情を注いで世話をすれば彼女を「治す」ことができる、と私は確信していました。
eccentricと言っても、悪い意味ではありません。この言葉の文字どおりの意味は「中心から外れた」という意味で、しきたりにとらわれない人や、物事のやり方がほかの人とは違う人などを指しています。私の大好きな人たちの中にも風変わりな人はいますし、グレイシーも彼らと同じように、独自の世界に生きているように見えたのです。
書籍の実際のページはこのようになっています。
語注付きなので辞書なしで読み進められますし、森千章さんによるかわいいイラストもあって、楽しく学習ができます。
ヘザリさん本人による朗読も、本書の重要な味わいどころの1つ。文章と同様にファンの多い「癒しボイス」は非常に聞きやすく、リスニング学習にも適しています。
文章の続きが気になる方は、ぜひ本書で!
学習用にも、贈り物にも!
平易でありながら、自然で質の高い英語。そして、日本に長く暮らした著者ならではの日米文化比較をはじめ、さまざまな気づきを与えてくれる内容。数多くのエッセイが入学試験や就職試験に出題されてきたのも納得です。
リーディングやリスニングの学習書として大いに活用できる本書ですが、さらに見逃せないのが、atelier yamaguchiさんによるきれいな装丁です。カバーや本文の紙にもこだわりが感じられる本書は、英語好きの方へのギフトにもぴったりです。ぜひチェックしてみてください。
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