ピザ最新事情【オレゴン12カ月】

オレゴン12カ月

渡米して20年以上がたち、現在はオレゴン州ポートランドで暮らす大石洋子さん。家族や身の回りで起こった出来事や季節のイベント、日米文化の違いなどにまつわるお話を現地からお届けします。

娘のアメリカ人の友達がウチに泊まりに来ることがある。以前は、せっかく日本人の家に来るのだから少し日本的なものを食べさせてやろうと思ってご飯とみそ汁と唐揚げなど作ってみたが、ありがたがられたことはない。それで最近は、お泊まりの日の夕飯はピザと決めている。

ピザが嫌い、という子は聞いたことがない。小麦アレルギーやグルテン不耐症(小麦に含まれるグルテンを消化、分解できない)で食べられない、という子はいても、ピザが嫌いという子にはお目にかかったことがない。人気のトッピングは、なし。ウチの娘の周りの子たちには、具なしのチーズピザがいちばん好まれるのだ。その次は、ペパロニ(ピリ辛のサラミ)。これは、アメリカ人のピザトッピング人気ランキングをほぼ反映している。

アメリカ人は、年間に1人平均46スライスのピザを食べるという。1カ月に4スライス弱。少ない気もするが、赤ちゃんも入れての数字だから、こんなものだろうか。私も、1カ月に2スライスぐらいは貢献していると思う。

スライス、などと気安く言っているが、アメリカのピザのスライスは大きい。日本とアメリカ両方で展開しているチェーン店のピザのサイズを調べてみたら、Mサイズが日本で直径26センチのところ、アメリカでは30 センチ。Lサイズは日本が31センチでアメリカが35センチ。スライスを皿にのせると、皿から両端がだらーんとはみ出したりする。

大きいのは、レストランのピザだけではない。某ナチュラル系スーパーマーケットでオリジナルの冷凍ピザが売られているのだが、そのピザの大きいことといったら。ウチのオーブンは普通サイズの家庭用オーブンだが、このピザを丸のまま焼くには奥行きが少し足りないのである。このピザを買うと、端っこを少し切って焼くか、それとも真ん中から半分に切って焼くかで必ず夫ともめるので困る。よそのお宅は一体どうしているのだろうか。

冷凍のピザではなく、冷蔵コーナーにあるピザ生地を買うこともある。すでにこねてある生地を伸ばして広げて、自分たちの好きなトッピングをのせる。手間を掛けずに程よく手作り感が味わえて、しかも味付けは自分で好きなようにできるので重宝している。

オレゴン12カ月

イラスト:尾崎仁美

ピザにはジャンクフードっぽいイメージが付きまとうが、最近はオシャレでグルメなピザも登場している。生ハムにイチジクとか、3種類のキノコにオイル漬けガーリックなどというトッピングのほかに、チーズもリコッタにタレッジョ、プロヴォローネピカンテだのと凝っている。レストランのメニューに flatbread とあるから何のことかと思えば、薄いcrust(生地)の四角いピザだ。上に生のルッコラなどがのせられ、ちょっとオシャレでヘルシーなアペタイザー然としている。

一方、ジャンク道をひたすら突き進むピザもある。大手のピザチェーン店では幾つかある中からクラストが選べるのだが、その中に stuffedcrust というものがある。これは、ピザの外側、クラストが盛り上がって厚めになっている耳の部分にチーズが埋め込んであるというもの。端っこまでおいしく食べられるように、という配慮だろう。冷凍のピザには、その端っこ部分にチーズだけでなくベーコンが入っているものもある。チーズがびよーんと伸びている写真を見ただけでお腹がいっぱいになる。

自分だけのピザをオーダーする店というのも、最近のトレンドだ。カウンターの向こうの店員に、好みのクラストのサイズと厚さを伝え、ソースとチーズを選ぶ。さらに、ペパロニやソーセージなど肉系のトッピング、最後に野菜を選ぶ。店員は、それに応じて客の目の前でピザを組み立てていき、最後にオーブンに入れる。クラフトビールもあったりするので、それを飲みながら待つこと数分。自分の好みのピザが食べられるというわけだ。

これまでのピザレストランにも build your own というのはあったが、面倒くさい気持ちが先に立ったし、それに家族それぞれが1 人1枚のピザを頼むのは効率が悪い気もした。それが、サンドイッチ屋のようなカウンター形式にしつらえてあるだけで、自分だけのピザを頼もうという気になるのだから面白い。

こういう店に行くようになって発見したが、私はこれまで自分の食べたいピザを食べてこなかったような気がするのである。家族でレストランに行ってピザをオーダーするときには、シンプルなマルゲリータ(トマトソースとモッツァレラチーズとバジル)か、プレーンとアンチョビのハーフ&ハーフと決まっている。何も考えずに「いつもの」をオーダーするのだ。

それが自分で一から組み立てるとなると、薄いクラストにトマトソース、トッピングにはタマネギとアーティチョーク、それにホウレンソウとオリーブを選ぶ。どうやら私は野菜がのったピザが食べたかったようなのだ。自分のためだけにあつらえたピザを食べながら、本当の自分を発見した、という気持ちになる。それと同時に、ちょっとした解放感を味わうのであった。いや、ピザごときに大げさかもしれないが。

アメリカのオレゴン州ってどんなところ?

アメリカ北西部に位置する、全米屈指の美しい景観を誇るオレゴン州。IT、バイオテクノロジー、環境関連産業の成長目覚ましく、ナイキなどのスポーツ・アウトドア企業も多い。州都はセイラム、最大の都市は人口約60万のポートランド。

文:大石洋子
エッセイスト。1993年、夫の海外赴任でアメリカ・ニュージャージー州へ。2003年には異動のためオレゴン州に転居。現在は、日に日に生意気になる16歳の娘に手を焼く傍ら、月に2回、Boiled Eggs Onlineにオレゴンでの生活をつづっている。

本記事は『ENGLISH JOURNAL』2018年6月号に掲載された記事を再編集したものです。