フィンランド在住歴16年、オンライン料理教室「マクヤマク」を運営する日本人シェフの星利昌(ほしとしあき)さん。星さん初のエッセイ『マクヤマク しあわせの味あわせ』から、今回は、素朴でありながら味わい深いフィンランド料理について“おすそ分け”します!
フィンランドの自然について綴った第1回はこちら
フィンランドの料理
冬を越える貴重なタンパク源 ─ 魚と肉の料理 ─
フィンランドは魚介類が豊富に取れる、というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実は魚料理はそれほど多くありません。しかし、貴重なタンパク源として、フィンランドで長く必要とされ、愛されている伝統料理があります。
まずは、フィンランドの代表的なサーモンの焼き物です。塩と胡椒をふって油で両面を焼く、ロヒメダリヨンキという方法で調理します。サーモンの下にはマッシュポテトと根菜のオーブン焼き、上にはディルの花のつぼみをのせます。ディルの花のつぼみは8月になると手に入るようになりますが、香りと味が特徴的で、この食材から季節を感じ取れます。
サーモンには鬱(うつ)や無気力などから身を守ってくれるビタミンDが豊富に含まれています。太陽が顔を出す時間が短い、北欧の暗い冬場には特に積極的に食べたい食材です。
次は、ライ麦粉をまぶして油で焼いたシラッカピフビという小魚のフライです。シラッカというイワシに似た魚の身を開いて骨を取り、そこにディルと塩・胡椒で下味をつけたら、2枚を合わせて焼き上げます。
ケルマヴィーリという乳製品とディル、レモン汁、塩を使った白いソースをかけて食べます。
サケ科の淡水魚であるムイックの焼き物は、できるだけ小さいサイズを選ぶと、そのまま食べても骨が柔らかいので、気になりません。ムイックの身は淡白で、できたてを口に入れると香ばしさが広がって、次々手を伸ばすのを止められなくなります。カルシウムやタンパク質がたくさん取れます。ヘルシンキの市場にある屋台や地方のフェスティバルでは、必ず目にする定番料理です。
次に肉を使った伝統料理を紹介します。
一つはカルヤランパイスティです。フィンランド南東部とロシア北西部に広がるカレリア地方の伝統料理ですが、今ではフィンランド全土で食べられています。
材料は牛肉、豚肉、にんじん、玉ねぎ、日本でも毎日の食卓で活躍する食材ばかりです。電気ヒーターがなく、薪で部屋を暖めていた時代に、その熱を有効活用して、長時間炊き込んだ料理がこのカルヤランパイスティです。肉も野菜もとても柔らかくなり、手に入る食材が限られていた昔の時代を考えるととても豪華な料理だったと思います。
もう一つはカーリパタ。豚や牛のひき肉、キャベツ、にんじん、玉ねぎ、米、ローリエ、野菜のだしで炊いて作ります。米も入っているので、日本人の味覚にも合います。1 回でたくさんの量を作れて、みんなで集まって食べる時にも大活躍の一品です。
ヨーロッパではデザートが甘いので、料理にはあまり砂糖を使いませんが、この料理には使います。初めて食べた時は、フィンランド料理から砂糖の程よい甘さを感じられるとは思っていなかったので、衝撃を受けました。
さて、魚や肉を使った代表的なフィンランドの伝統料理を紹介しました。食べてみたいと思った料理はありましたか?
長く愛されている伝統料理の味とともに、その土地の歴史を知ることで、味覚を成長させ、過去の人々の生活や気持ちに触れることができます。新たな発想で新しい料理を考えたり、作ったりすることにつながっていくその時間は、私の人生において、とても有意義なものです。
フィンランドってこんな国②
フィンランド語でのあいさつをご紹介!
あたたかくて、楽しくて、思わずお腹もすいてくる(!?)1冊
フィンランドで暮らす日本人シェフ・星利昌さんによるエッセイ『マクヤマク しあわせの味あわせ』には、フィンランドの魅力がたっぷり詰まっています。「フィンランドの自然」「フィンランドの料理」「フィンランドの人々」「フィンランドと私」の4章構成で、たくさんの写真と共に、フィンランドならではの「しあわせ」をお届け。そして、星さん考案のフィンランド料理レシピも5つ収録されているので、ご自宅でフィンランドのおいしさを体験することも可能です!
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※この記事は、『マクヤマク しあわせの味あわせ』から一部編集・抜粋してお届けしています。
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