映画のセリフを使って、楽しく英語を学ぼうという本企画。映画スターが話す英語をあとに続いてシャドーイング、つまり「モノマネ」することで、英語力アップを目指します。
はじめに
前回はシャドーイングの基本情報を確認しましたが、この第2回以降は、毎回ひとりの映画スターを決めて、彼らが映画で話すセリフの活用方法を考えます。
シャドーイングは主に、リスニング力やスピーキング力といった、英語の音声に関わるスキルアップに活用されます。しかし、せっかく映画英語を使うのですから、本連載ではそのセリフに現れる英単語や英文法に関する重要ポイントにも注目したいと思います。
まず今回、1人目として取り上げるのはブラッド・ピットです。彼は、派手なアクション映画やシリアスなサスペンス映画、ピュアな恋愛映画や心温まるファミリー映画、さらには『ハッピー・フィート2』でのアニメの声(オキアミ役!)まで幅広くこなします。
最近では映画製作の側でも手腕を発揮し、日本でも「ブラピ」の愛称で知られる彼の出演作から、今回は英語を学びましょう。英語学習に役立ちそうなシーンを、できるだけ様々なジャンルからご紹介します。
まずは短い文から
ブラッド・ピットは、元パートナーのアンジェリーナ・ジョリーと映画内で共演することでも有名です。下の作品もそのひとつで、若い女性との会話の最後に、次のようなセリフがあります。
I think you’re a woman. I think you’re lovely, and I hope your life turns out just as you imagine.
君は大人の女性だと思う。とてもきれいだと思うし、君の人生が望み通りになることを願ってるよ。
(『白い帽子の女』より)
この文は比較的ゆっくりと話されます。あとに続いて何度もリピートすることで、I think ~「~と思う」やI hope ~「~を願う」といった英語で頻出の「型」を体に慣れさせ、(just ) as ~「(まさに)~のように」の表現も覚えましょう。
次のシーンは、彼の代表作のひとつ『オーシャンズ』シリーズからです。仲間の部屋に入ると、奥からTV番組の音声が聞こえ、不思議に思った時のセリフです。
Anyway... Is that...? Are you...? Are you watching Oprah? With a bottle of wine? Did you TiVo this?
ともかく... あれは...? あんたまさか...? あんたオプラの番組見てる?ワインボトル飲んで?録画して?
(『オーシャンズ13』より)
この時点ではまだ本当にTVの音声なのかを怪しんでいるので、Is that...?やAre you...?のように、疑問文は完全な形になっていません。しかしそれでも、きちんと文末が上昇調になっており、通常のYes-No疑問文の決まりを守っていることが確認できます。(最後のTiVoはここでは「録画する」という意味です)
仕事に対する覚悟を伝えるセリフ
少しずつ、セリフを長くしましょう。
下は、実在するメジャーリーグの敏腕GMを演じた『マネーボール』からです。部下から「そんなことしたらクビですよ!」と言われた後、それでも自分の信じる仕事をするべきだと強く返します。①や②の文をリピートしてみましょう。さらに頑張れる場合は、全体のリピートにチャレンジです。
①I may lose my job. In which case I’m a 44-year-old guy with a high school diploma and a daughter I’d like to be able to send to college. You’re 25 years old, with a degree from Yale and a pretty impressive apprenticeship.
②I don’t think we’re asking the right question. I think the question we should be asking is, do you believe in this thing or not?
①クビになるかもしれん。そうなれば、俺は高卒の44歳で、何としても大学に行かせたい娘もいる。君は25歳で、イエール大学卒で、立派な職歴持ちだ。
②大事な問いをすべきだ。我々が問うべきなのは、君がこれを本当に信じれるかどうかだ。
(『マネーボール』より)
単語や文法のポイントは、まず「25歳」(25 years old) では複数形になるyearsが、「44歳の」(44-year-old) という複合形容詞では単数形になっています。diplomaは主に「卒業証書」の意味で、degreeは大学などの「学位」を表します。また、in which caseは「そんなことになれば」という意味で前後の文をつなぎ、さらにbelieve in ~はbelieve ~よりも「(信念として)~を信じる」というニュアンスで使われます。
発音上のポイントは、I’d like to ~「~したい」のlikeが強く発音されている点です。これにより、小さい娘を将来は絶対に大学に行かせるという、父親としての強い気持ちが読み取れます。このような発音上の特徴も忠実に「モノマネ」して、英語での感情の込め方を学びましょう。
なお、上のセリフの直後にはsee ~ through「~を最後まで見届ける」が学べる、I’m gonna see this thing through, for better or worse.「結果はどうであれ、最後までやるよ」というセリフもあるので、要チェックです。
優しく恋心を伝えるセリフ
次は、恋愛に関わるセリフです。ジョーは好意を持った相手スーザンに、自分の結婚観を「もしも僕らが結婚したら・・・」という例え話で語ります。
Say, you and I, if you were married, I would... No, for an example, okay? If you and I were married, I would want to give you what you need. That’s all. I’m talking about taking care of each other the best you can. What’s wrong with taking care of a woman? She takes care of you.
たとえば、もし君と僕が結婚したら、僕は・・・ いや、例え話だ、いいでしょ?もし、君と僕が結婚したら、僕は君の望みを優先する。当然さ。お互いが相手のために全力で尽くす。女性を大事にして何が悪い。女性も男性を思いやってくれるんだから。
(『ジョー・ブラックをよろしく』より)
冒頭のSayはfor exampleと同じく、「たとえば」の意味です。また、何度も出てくるyou and Iの語順からは、andで人をつなぐ際にIは最後に置くルールが学べます。さらに、If you and I were marriedやI would ~ の過去形では、仮定の話をする際の(仮定法という)文法ルールが、繰り返し学べます。
発音的特徴としてはwhat you needが、whatの最後の/t/の音と、youの最初の/j/の音が同化することで「ワッチュー」になっています。また、最後のyouは強めに発音され、女性を大切にすれば、「男性も」大切にしてもらえる、という対応関係が強調されています。このあたりも、忠実にリピートで再現してみましょう。
上のジョーの結婚観に対してスーザンは、「そんな女の人、今どきいるかしら」と疑念を持ちますが、ジョーはLightning could strike.と返します。これは「雷が落ちることもある」が「奇跡が起こることもある」という意味になっており、運命の出会いを信じるジョーの気持ちがロマンティックに描かれています。catch lightning in a bottle「奇跡を起こす」というフレーズもよく使われるので、リピートすることで、恋愛以外の場面でもすぐ言えるようになっておきましょう。
まとめ
今回は、ブラッド・ピットをテーマにしました。彼のセリフを忠実に何度も「モノマネ」することで、リスニングやスピーキング力の強化だけではなく、英文の「型」を体に馴染ませていきましょう。
なお、最近ブラッド・ピッドは、円熟した雰囲気や渋さが前面に出た役柄が多く、そのカッコよさも相まって、小声や口ごもりがちに話すシーンが多い印象があります。また、フランス語やドイツ語のような、他言語を話す役柄も少なくありません。ですので、明瞭にはきはきと、流れるように英語を話すシーンを見つけるには、彼の若いころの映画を中心に探したほうがいいかもしれません。
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