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医者ではなく政治家が行う「surgery」ってなんのこと?【ニュースな英語】

ニュースな英語

今回は、イギリスで政治家が殺害されたニュースを取り上げます。医者ではなく政治家によって行われる「surgery」とは、一体なんのことを指すのでしょうか?

今回のニュースな英語

surgery

イギリスで、政治家が教会で刺殺されるという衝撃的な事件が発生しました。「surgery」と呼ばれる、有権者と交流するための会合を行っている最中の出来事でした。

surgery」と聞くと普通、真っ先に浮かぶのは「手術」という意味ではないでしょうか。

イギリス英語独特の表現で、下院議員が地元の有権者の話を聞いたり相談に乗ったりする場を、「surgery」といいます。日本の報道では、「相談会」や「有権者と対話する会合」などと表現されていました。

ということで、今回の「ニュースな英語」では、この「surgery」を取り上げます。

背景

刺殺されたのは、デヴィッド・エイメス氏でした。1983年、マーガレット・サッチャー政権の時代に、初めて下院議員に当選したベテラン議員です。

実は、「surgery」で下院議員が刺殺される事件がイギリスで起きたのは、今回が初めてではありません。ジョー・コックス議員は2016年、同じく「surgery」に向かっていたところ、銃で撃たれたうえに刃物で刺されて殺害されました。

41歳という若さで亡くなったコックス議員は、イギリスにまん延する「孤独」の問題を解決しようと熱心に活動していたところでした。同議員の死後、その遺志を継ごうとイギリス政府は「孤独問題担当大臣」の職を創設しました。

今回エイメス議員を殺害した犯人はイスラム過激思想の持ち主だったと言われています。一方でコックス議員を殺害したのは、白人至上主義者でした。どちらも、テロ事件と断定されています。

政治家の命が狙われる事件といえば、今年はアメリカでも、議員を狙った襲撃事件が起きました。2021年1月、前年の大統領選で敗北したドナルド・トランプ氏の支持者が、連邦議会を襲撃した事件です。議員が命を落とすことはありませんでしたが、警官とトランプ氏支持者の合計5人が亡くなっています。

どんなふうに使われている?

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イギリス政府の公式ウェブサイトは「surgery」について、「人々と直接会って問題を話し合うために、ほとんどの議員が地元選挙区で開催している」と説明しています。

surgery」は、「constituency surgery」とも呼ばれています。「constituency」には、「有権者」や「選挙区」という意味があります。

冒頭で「イギリス英語独特」と書いた通り、アメリカ人にはなじみがないようです。今回の事件を受けて、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は、「What Are Political ‘Surgeries’ in Britain?」(イギリスの政治的「Surgeries」とは?)という記事を掲載しています。

その中で、surgeryはこう説明されています。

That tradition of lawmakers conducting regular, in-person meetings with voters — encounters known as constituency surgeries — gives Britons unusually good access to their political representatives.

議員が定期的に直接有権者と顔を合わせる集会(constituency surgeryとして知られる会合)を開くこの伝統のおかげで、イギリス人は自分たちの選挙区の代議員に、通常では考えられないほど近づくことができる。

lawmakerは、law(法律)とmaker(作る人)という言葉通り、「立法機関の人」つまりは多くの場合、国会議会や連邦議会の議員を指します。

今回エイメス議員が狙われたのは、個人的な理由というより、「たまたま居場所が分かったから」のようです。英イブニング・スタンダード紙は次のように報じています。

he was allegedly chosen simply because he was an MP and it was possible to find him at the regular constituency meeting he was holding at Belfairs Methodist Church in Leigh-on-Sea

エイメス氏が狙われたのは単に、同氏が下院議員であったこと、そしてリー・オン・シーのベルフェアーズ・メソジスト教会で定期的に開催されていた選挙区会合で、同氏を見つけることが可能だったからだとされている

実際に、エイメス議員は自身の公式ホームページで、次のsurgeryの開催場所と日時を公開していました。

なお、イブニング・スタンダードの記事にあるMPはMember of Parliamentの略で、イギリスの場合は下院議員を指します。

まとめ

今回は、政治家と地元有権者をつなげる「surgery」について取り上げました。

こうした会合は、有権者が自分たちの地元議員に声を直接届けられる貴重な機会になっています。しかし、今回の事件をきっかけに、国会議員の身の安全をどう確保するかなどについて、議論がなされています。

松丸さとみ

松丸さとみフリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。訳書に『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』(日経BP)、『限界を乗り超える最強の心身』(CCCメディアハウス)、『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』(サンマーク出版)などがある。
Blog:https://sat-mat.blogspot.jp/
Twitter: https://twitter.com/sugarbeat_jp