「おとり捜査」って英語でなんて言う?【ニュースな英語】

アメリカ・オーストラリアなどの捜査当局は2021年6月8日、FBI(アメリカ連邦捜査局)が密かに犯罪組織に配布した携帯端末を使った国際おとり捜査で、800人以上を逮捕したと発表しました。今回はこの「おとり捜査」に関連する英語表現を紹介します。

今回のニュースな英語

sting
FBI(アメリカ連邦捜査局)やユーロポール(欧州刑事警察機構)など、世界の法執行機関が 協力 して、まるで映画のようなおとり捜査を世界16カ国で行い、このほど800人以上が逮捕されました。

「身元が割れずに安全だ」として犯罪組織に愛用されていた「ANOM」と呼ばれる携帯電話端末が、実はFBIの監視下にあり、やりとりがすべて筒抜けだったことから大量逮捕につながった、というまるで映画のような話です。

今回はこの事件から、 「おとり捜査」 を意味する sting を取り上げます。

背景

FBIは2018年、オーストラリアの警察組織と 協力 し、「トロイの盾」(Trojan Shield)と呼ばれる作戦を開始しました。身元が割れない安全な携帯電話端末という触れ込みで、ANOMを犯罪組織に広めたのです。

実はこの携帯端末、前述の通りFBIの監視下にありました。もともとは、犯罪組織に使われていた別の暗号通信サービスの関係者で逮捕された人物が、刑の軽減と引き換えに、ANOMを開発することに同意したのです。

ANOMは、GPSや通話、メールなど通常のスマートフォンにある機能はすべて排除した携帯電話機でした。たった1つだけ、一見すると計算機アプリのように見えるチャットアプリが入っており、これで暗号化されたメッセージのやりとりができるようになっていました。

今回の おとり捜査 を受けて、48時間で700カ所が捜査され、逮捕に関わった警察官の人数は、世界で9000人以上に上ったそうです。

オーストラリアでの逮捕者は200人以上。スウェーデンでは155人が逮捕され、10人の殺人を未然に防いだといわれています。

どんなふうに使われている?

ANOM端末は、世界100カ国以上で1万2000台が売られ、300以上の犯罪組織に使われていました。FBIが監視していることを知らない犯罪者たちが、このチャットアプリを使い、麻薬 取引 や武器密輸、請負殺人などについてやりとりしていました。FBIが傍受したメッセージは2700万通に上り、そこで使われていた言語は45カ国語もあったそうです。

そもそも この携帯電話端末は、どのようにして犯罪組織に広まっていったのでしょうか?

イギリスの公共放送 BBC は、次のように報じています。

Australian fugitive and alleged drug trafficker Hakan Ayik was key to the sting, having unwittingly recommended the app to criminal associates after being given a handset by undercover officers, police said.警察によると、オーストラリア出身の逃亡者であり麻薬密売人とされるハカン・アイクが、今回のおとり捜査の鍵となった。覆面捜査員から携帯電話端末をもらった後、このアプリの実情を知らずにうっかりと犯罪仲間に薦めていたのだ。
www.bbc.com

alleged「証拠がないけれどそのように思われている」「推定の」 という意味です。

unwittingly「知らずに」「無意識に 」などを意味します。ここでは、ANOMがまさかFBIの監視下にあったとは知らずに仲間に薦めてしまったことを unwittingly と表現しています。

undercover officer「覆面捜査官」「おとり捜査官」 のこと。 undercover「覆面で」「正体を隠して」 などの意味があり、おとり捜査とは切っても切れない単語ですので覚えてくださいね。

ちなみに このハカン・アイクという人物は、オーストラリアから逃亡してトルコで暮らしていた、犯罪組織の大物だそう。そんな人物から薦められたら、安全だと思い込んでしまいますよね。

おかげで、犯罪組織のメンバーは通常なら隠語を使ってやりとりするところを、普通の言葉でメッセージを送信する人が多かったため、犯罪の計画がありありとわかったそうです。

まとめ

今回のニュースな英語では、 おとり捜査 を意味する sting を取り上げました。一般的に名詞では 「刺すこと」「刺すような痛み」「辛辣(しんらつ)さ」 などを意味しますが、 おとり捜査 を意味する言葉でもあります。

刑事もののドラマや映画、小説などでも、 「おとり捜査」 という意味で sting という言葉に出くわすことがあるかもしれません。こうした作品が好きな人はぜひ覚えてくださいね。

ちなみに 今回の事件では、前述のBBCの記事にあった the sting という表現のほか 、the global sting(世界的なおとり捜査)the FBI sting(FBIのおとり捜査)the sting operation (おとり捜査) などの表現が報道で使われていました。

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松丸さとみ フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。訳書に 『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』 (日経BP)、 『限界を乗り超える最強の心身』 (CCCメディアハウス)、 『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 (サンマーク出版)などがある。
Blog: https://sat-mat.blogspot.jp/
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