「医療崩壊」って英語でなんて言う?【ニュースな英語】

新型コロナウイルス感染症が急 拡大 しているインドは、病床や医療用酸素の 不足 など深刻な「医療崩壊」の危機に直面しています。今回はこのニュースから、「医療崩壊」という英語表現を取り上げます。

今回のニュースな英語

overwhelmed (hospitals/healthcare system)
新型コロナウイルス感染症の第2波に襲われているインドでは、2021年4月26日に発表された数字で、1日あたりの感染者数が35万2992人に達し、世界最多記録を5日連続で 更新 してしまいました。

そこで叫ばれているのが、医療崩壊。酸素が足りなくなったり、病床数の 不足 で入院できなかったりなどで命を落とす人も出ています。

ということで、今回は「医療崩壊」という表現を取り上げます。

collapse と overwhelm の違い">医療崩壊、 collapseoverwhelm の違い

「医療崩壊」を辞書で引くと、「 collapse of the medical system」とか「healthcare collapse 」などと載っています。もちろんこれでも通じるのですが、これだと、医療制度自体が崩壊したという意味になります。

例えば資金繰りに失敗して制度が崩壊した場合にもこのような表現ができるので、患者が殺到して適切な医療行為が行えないという、新型コロナウイルスの文脈でよく耳にする医療崩壊を意味しているとは限りません。

患者が増えて病院や医療制度を逼迫(ひっぱく)している状態を 具体的に 表現するには、 collapse よりも、 overwhelm を使った方が伝わります。

報道では、overwhelmedや overwhelming など形容詞にした文章がよくみられます。「病院」を意味する単語hospitalを、「圧倒された」という意味のoverwhelmedや overwhelming で形容することで、対応しきれないくらいの患者数で病院が圧倒されている様子を示していることになります。

どんなふうに使われている?

では、実際に記事ではどのように使われているでしょうか。

イギリスの公共放送 BBC はこう伝えています。

The country is struggling with a second wave, raising more fears about its overwhelmed health care system.インドは第2波に見舞われており、崩壊した医療制度に対する 懸念 がさらに高まっている。
www.bbc.com

overwhelmed health care systemは直訳すると「圧倒された医療制度」ですが、つまりは「医療制度が崩壊している」ということです。

イギリスの テレグラフ は、動詞で overwhelm を使って、病院が対応しきれていない状態を報じています。

India is facing a huge health crisis as a new “mutant” variant of coronavirus has overwhelmed hospitals in the country‘s largest cities.インドでは、新型コロナウイルスの新たな「突然」変異株により、複数の大都市で病院の医療崩壊が起きており、同国は深刻な医療危機に直面している。
www.telegraph.co.uk

「coronavirus has overwhelmed hospitals」となっているので、直訳すれば「コロナウイルスが病院を圧倒している」ということですが、つまりは「コロナウイルスのせいで医療崩壊が起きている」という意味になります。

まとめ

今回は、新型コロナウイルスの第2波に見舞われているインドを例に取り、「医療崩壊」について取り上げました。 overwhelm を辞書で引いても「崩壊」を意味する言葉が載っていないので、ピンとこないかもしれませんが、記事の例文を読んでしっくりきたでしょうか!?

ところで、インドでは、2月に一旦感染がおさまったと報道されていました。しかし今回のように急速に感染者が 拡大 した理由について、 ニューヨーク・タイムズ は、インド政府が感染収束に 安心 しきってしまい、クリケットや選挙、お祭りなど、大人数が集まるイベントを一切規制せず無策だったことを 指摘 しています。

ご存じのとおり、日本には現在、緊急事態宣言下にある地域もあります。せっかくのゴールデンウィークを前にして残念ですが、インドの惨状を心に刻み、気を付けて過ごしましょう。皆さんもご自愛ください!

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松丸さとみ フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。訳書に 『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』 (日経BP)、 『限界を乗り超える最強の心身』 (CCCメディアハウス)、 『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 (サンマーク出版)などがある。
Blog: https://sat-mat.blogspot.jp/
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