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「同性婚できないのは違憲」札幌地裁が判決 世界のメディアはどう報道した?

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婚姻やそれに準じる権利を同性愛者に認めていない日本。先進国のなかでも、性的マイノリティに対する法整備の遅れが指摘されていますが、17日に札幌地裁が「同性どうしの結婚が認められないことは憲法に違反する」との判決を下したことが、国内外で注目されています。この出来事を、世界のメディアはどう報じているのでしょうか?

「同性婚できないのは違憲」札幌地裁が判断

同性どうしの結婚が認められないのは「婚姻の自由」などを保障した憲法に反するとして、北海道に住む同性カップル3組6人が慰謝料各100万円の支払いを国に求めた訴訟の判決で、札幌地方裁判所は17日、請求を棄却しつつも、「不合理な差別で法の下の平等に反する」との理由から、違憲性を認める判決を下しました。

NHKによると*1、裁判で原告側は「憲法24条の『婚姻は両性の合意のみに基づく』との条文は、両当事者の自由で平等な合意で婚姻が成立するとしたもので、同性どうしの結婚を禁止していない」と主張

一方で、国は「憲法にある『両性』は、男性と女性を意味していて、同性どうしの結婚を想定していない。婚姻を男女のみに認めているのは、夫婦が子を産み育てながら共同生活を送るという関係に法的保護を与えるためであり、合理性がある」などと主張して訴えを退けるよう求めていました。

婚姻やそれに準じる権利を同性愛者に認めていないのは、主要7カ国(G7)の中で日本だけです。第2次世界大戦後の日本国憲法制定時には、同性婚は想定されていなかったとするのが今の政府の見解ですが、時代の変化とともに同性婚の容認は、世界の潮流となっています。

今回の判決は画期的であるとして、海外からも注目が集まっています。海外主要メディアがどのように報道しているかをまとめました。

英BBC 同調圧力が強い日本での転換点に

イギリスのBBCニュースは「Japan court finds same-sex marriage ban unconstitutional」*2の中で、日本における同性婚の法制化への道のりはまだ長いものの、「札幌地裁の判決ははっきりとした転換点だ」として、今回の判決を報じています。

In Japan, where peer pressure is high and emphasis is placed on fitting in, being a minority in any form is hard - especially when it comes to speaking out. But this is changing - more people are recognising the importance of diversity. Today marked a clear turning point. Though the court today rejected the compensation claim, many say it is a triumph in itself to achieve this landmark ruling.

同調圧力が強く、周囲に溶け込むことが重視される日本では、どんな形であれ、マイノリティであることは困難を強いられる。ましてや、そのなかで声をあげることなど本当に難しいことだ。だが、状況は変わりつつある。多くの人が多様性の重要さに気付き始めているからだ。今回の札幌地裁の判決ははっきりとした転換点だ。賠償請求は退けられたが、違憲判決という画期的判決がでたことは、それ自体大きな勝利だという声が次々に上がっている。

覚えておきたい単語リスト

      • peer pressure:同調圧力
      • speaking out:ずばりと[遠慮なく]言う、正々堂々と意見を述べる
      • turning point:転換点
      • compensation claim:賠償請求
      • landmark ruling:画期的判決

米Washington Post ビザ更新のたびに離れ離れの不安

アメリカのWashington Post紙は「Japan’s failure to recognize same-sex marriage is unconstitutional, court rules」*3の中で、カップルに同性婚が認められないことによる不利益について触れています。

Japan’s refusal to recognize same-sex marriages is not only humiliating for couples, it means that they are treated as individuals for tax and pension purchases, and face complications with inheritance, adoption and visa rights.

日本が同性婚を認めないことは、カップルにとって屈辱的なことであるだけでなく、税金や年金の制度上は個々に扱われ、また相続、養子縁組、ビザの資格などで厄介な問題に直面することを意味している。

例えば、同性婚が認められない日本では、ビザの問題で同性カップルは離れ離れに暮らさなければならなくなるかもしれません。32歳のノンバイナリーのアメリカ人、Li Italiaanderさんは、日本人女性と交際しているものの、配偶者ビザの資格がないため、現在の法律では日本に残ることが難しいかもしれないとの不安を抱えていると紹介されています。

“Every year, I have to worry about not being able to renew my visa and us potentially being separated,” they said. “The ruling in Sapporo is a huge step toward something that could be life-changing for us.”

「(Li Italiaanderさんは)毎年、ビザの更新ができるかということや、離れ離れになってしまうかもしれないということを心配しなければなりません」と語っている。 「今回の札幌での判決は、私たちの人生を変える大きな一歩となるかもしれません」

覚えておきたい単語リスト

    • same-sex marriages:同性婚
    • humiliating:屈辱を与える
    • complication:厄介な問題
    • renew:新しくする、更新する
    • life-changing:人生を変えるような

米New York Times 60歳以下の約8割が同性婚支持であるものの・・・

アメリカのNew York Times紙は「Landmark Ruling Cracks Door Open for Same-Sex Marriage in Japan」の中で*4、同性婚の考え方に賛同が広がりつつある、日本の世論の現状とその問題点を伝えています。ちなみにアメリカでは、2015年に連邦最高裁判所が同性婚を認める判断を示しており、すでに全米で同性婚が合法化されています。

The Japanese public remains divided in its attitudes on the subject. On one hand, the idea of same-sex marriage enjoys broad popular support. In a 2019 poll by the advertising giant Dentsu, almost 80 percent of respondents 60 and under said they supported the unions.

Even the country’s notoriously rigid business community has begun to embrace the notion of marriage equality, marketing products to gay couples and improving protections for employees.

On the individual level, however, many gay people are still hesitant to come out because of fears of discrimination from a society that is infamous for its often intense pressure to conform.

この問題に対する日本国民の態度は、依然として割れています。一方では、同性婚の考え方は幅広い賛同を集めています。広告代理店大手の電通が2019年に行った世論調査では、60歳以下の回答者の約8割が同性婚を支持すると答えています。

融通の利かないことで悪名高い日本の経済界でさえ、同性カップル向けに商品を販売したり、従業員への補償を改善したりして、結婚の平等という概念を受け入れ始めています。

しかし個人レベルでは、多くの同性愛者が、同調圧力の強い社会からの差別を恐れて、カミングアウトを躊躇しているのが現状です。

覚えておきたい単語リスト

    • (civil)union:法的に承認されたパートナーシップ関係
    • notoriously:悪名高くも
    • rigid:融通のきかない
    • hesitant:〔~するのを〕ためらって
    • discrimination:〔人・集団などに対する〕不公平な扱い、差別

今回の判決が転換点となることが期待される

同様の集団訴訟は札幌のほか、東京、大阪、名古屋、福岡の合わせて5か所で起こされており、今回が最初の判決となっています。訴訟は今後も続いていきますが、同性婚を望む方々が不利益を被らない社会の一刻も早い実現が期待されています。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

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