
今年3月、女性が被害者となった凄惨(せいさん)な事件がアメリカとイギリスで相次いで発生しました。今回はこのニュースに関する英単語「femicide」を取り上げます。
今回のニュースな英語
femicideイギリスとアメリカで3月、女性が男性に殺害された悲惨な事件が相次いで発生しました。そこで、女性の身の安全や女性への暴力に関する議論が活発になっています。
性別を理由にした女性または少女の殺害は、femicideと呼ばれます。女性femaleと殺人homicideからの複合語であることは想像に難しくありませんね。日本語では、そのままカタカナで「フェミサイド」などと言われています。
今回の「ニュースな英語」では、女性を標的とした殺人femicideを取り上げます。
3月に英米で発生し話題になった大きな事件
3月上旬、イギリスではロンドンでサラ・エバラードさんが誘拐・殺害され、警察官の男が容疑者として逮捕されました。これを機に、女性が暴力や殺人の被害者となるのはもうたくさんだ、と訴える運動がイギリス全土へ広がっています。
ほぼ同じころ、アメリカではジョージア州アトランタで8人が犠牲になる銃乱射事件が発生しました。被害者のうち6人がアジア系だったことから、アジア人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)だと思われました。ところが容疑者は、自分が性依存症で、「誘惑を断ち切る」目的で犯行に及んだと自供。femicideでもあったようでした。
イギリスの インディペンデント紙 はこんなふうに書いています。
As much as this was an act of anti-Asian violence, it’s an act of anti-sex work violence and an act of femicide.この事件は、反アジアの暴力行為であったと 同時に 、反風俗労働の暴力行為でもあり、またフェミサイド行為でもあった。www.independent.co.uk
同紙は、事件の動機は他にも、white supremacy(白人至上主義)やmisogyny(ミソジニー、女性憎悪)もあったとしていますが、同じように推測するメディアは少なくありません。
どんなふうに使われている?

イギリスのサラ・エバラードさんの事件やアメリカのアトランタでの銃撃事件は、面識のない相手を標的としたものでしたが、フェミサイドは、実はパートナー、元パートナーを含む顔見知りによるものが多いとされています。
特に2020年には、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンが 原因 となり、ドメスティック・バイオレンス(DV)が世界的に増加し、その結果、femicideも増えました。
ハーバード大学 は、イギリスではフェミサイド件数が過去11年で最悪の数字となり、メキシコでは2020年の最初の3カ月で1000人近い女性が殺されたとしています。
カナダも同様です。公共放送 CBC は3月22日、2020年のフェミサイド件数が、前年の146人から160人に増えたと報じました。
CBCは同じ記事で、このように伝えています。
Women's advocates are calling for better support to help reduce femicides, after a recent report showed an uptick in the number of women violently killed in Canada last year.www.cbc.ca女性が暴力的に殺害された件数が昨年、カナダで増加したとする報告書が先ごろ発表されたことを受け、女性の権利を擁護する人たちは、フェミサイドを減らすためのさらなるサポートを呼び掛けている。
ここでの advocate は、「擁護者」「支援者」という意味です。 call for は「~を求める」「~を呼びかける」という意味。uptickは線グラフをイメージすればお分かりだと思いますが、「増加」「上昇」という意味です。
まとめ
femicideという言葉を最初に公に使い始めたのは、ダイアナ・E・H・ラッセル博士だとされています。同博士は自身のウェブサイトで、 この言葉が生まれた経緯 について説明しています。
ラッセル博士は1974年、femicideという本を書いている人物がいるとの噂を聞き、この言葉に関心を持ったそうです。その後1976年、女性への暴力に関する初の国際的な大会International Tribunal on Crimes Against Women(女性への犯罪に関する国際裁判)を開き、ここで初めて、femicideという言葉を公に使ったとのことです。
ラッセル博士は大会の様子を、『Crimes Against Women: The Proceedings of the International Tribunal』(未訳、女性に対する犯罪:国際裁判の記録)という本にまとめています。博士の ウェブサイトで公開 されていますので、興味がある人はぜひ読んでみてくださいね。
▼ラッセル博士の講演(冒頭でfemicideの定義などを説明しています)


松丸さとみ フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。訳書に 『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』 (日経BP)、 『限界を乗り超える最強の心身』 (CCCメディアハウス)、 『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 (サンマーク出版)などがある。
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