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外資系企業に向いているのはどんな人?日本企業との文化の違い

企業が求める外資系人材

外資系企業が求めているのはどんな人材なのでしょう。GE、モルガン・スタンレーなどの外資系企業に人事部長として25年在籍し、1万人以上を面接した経験をもつ鈴木美加子さんが、英語力に加えて求められる資質を教えます。

外資系企業と日本企業の違いは?

今回は外資系企業と日本企業の違いと、どんな方が外資系に向いているのかについて解説します。すべての違いについて触れることは難しいので、ここでは6つのポイントに絞って解説します。

1.経営サイクル

外資系企業 – 短期的視野
日本企業 – 長期的視野

東京商工リサーチがまとめた「『老舗企業』の実態調査」によると、2019年に業歴100年となった企業を含めた「老舗企業」は、日本に3万3259社が存在しているそうです。一方、アメリカで類似の調査が行われていないかリサーチしてみても、なかなか日本のような「老舗」に関する信憑性があるデータはでてきません。ここには「事業を長く継続する」ということについての、日米での考え方の差が表れていると言えます。

日本企業が長期的な計画に基づき人材を育成しながら経営するのに比べると、外資系企業はより短期的な視野に基づいて経営されています。そして、短期的な視野で経営されているということは、「想定外」のことが起こりやすいということに繋がります。外資系では、突然起きる不測の事態にも、対処していくスキルが求められます。

2.文化

外資系企業 – 個人主義
日本企業 – 集団主義

職務に必要な経験やスキルを持つ人材を雇用するジョブ型雇用が中心の外資系企業では、個人主義的な考え方が尊重されます。例えば、担当する職務内容や責任の範囲、難易度、必要なスキルなどを明記した「職務記述書(Job Description)」には、それが最も明確に表れています。外資系企業に勤めている人々は、職務記述書を超えた仕事は気軽に引き受けないのが普通です。新卒一括採用のように、業務内容や勤務地を限定しないメンバーシップ型雇用が一般的な日本企業では、チームとして仕事に穴が開かないように全員野球で球を拾う精神がありますが、外資系にはこれが存在しないのです。なにかしらの事情があって「職務記述書」を超えた仕事を部下に頼む場合は、一方的に指示するのではなく、きちんと説明して、お願いするのが基本です。

「社員は家族である」という価値観を素晴らしいと考える日本企業もありますが、外資系企業では好まれない発想です。就業時間以外は社員個人のものという意識がはっきりしているので、職場が「ファミリー」であるとは、考えられないのです。

3. 変革のスピード

外資系企業 – 速い
日本企業 – ゆっくり

外資系は、意思決定のプロセスが明確で短いので、決断も速くそれに伴う行動も迅速です。25年間の外資系生活で、驚愕のスピードだった某IT企業のアメリカ本社のプロジェクトについて話します。その企業は当時、インドのバンガローにエンジニアを多数抱えていましたが、インドでの人件費が高騰し続けていることを問題視していました。

優秀なエンジニアが採用できて、人件費がもっと低い国はないかと世界中でリサーチをしたところ、ヨーロッパにアルメニアという国があり、人件費はインドの1/10、工学博士が多いとわかり、エンジニアの拠点をそちらへ移すことに決めました。バンガローのエンジニアを2/3解雇し、アルメニアにオフィスを作るまでの全ての工程をわずか8カ月でやってのけました。さすがシリコンバレーの企業と感じざるを得ない驚愕のスピードでした。

日本企業の場合、ベンチャー企業などの場合を除いて、意思決定のプロセスには「根回し」が存在し、かなりの時間がかかります。 根回しが完了した際には、プロジェクトが素早く立ち上がり、素晴らしいスピードで進むことができますが、トータルでみれば、変化するために要する時間は外資よりも長いです。

4. 育つ人材のタイプ

外資系企業 – スペシャリスト
日本企業 – ジェネラリスト

日本企業は人材育成を長期的な視野で行うので、例えば、人事に10年いる優秀な人を経理に異動することもありえます。20年かけてITや法務なども経験させて、最終的には管理部門の責任者にしようと計画しているかもしれません。ご本人に転職の気持ちがないのであれば、素晴らしいキャリアです。ただ、途中で外部に転職をしたくなった場合は、どの分野の専門家でもないジェネラリストに、高い年収を払う雇い主はありませんし、転職自体が難しい可能性もあります。

これに対して外資系企業は、明らかにスペシャリスト志向です。営業でスタートしたら営業のキャリアを極める、経理でスタートしたら経理の道を追求するのが基本です。途中でキャリアを変更したい場合は、社内向けの求人に手を挙げる道が存在していますが、基本的には専門性を高める職場です。

5. 求められるコミュニケーション能力

外資系企業 : ほどよく主張できる、明確に説明できる、YES/NOが言える力
日本企業 : 周囲との「和」を尊重するコミュニケーション力

外資系企業では、主張が強い外国人社員と仕事をすることになります。文化的な背景もあり、110の実力を150に見せることができる強者もいるわけなので、日本人のような「謙譲の美徳」は存在せず「能ある鷹は爪を見せる」ことが重要になります。キャリアの個人相談で、非常に謙虚な方には外資系をお勧めしないことも多いです。どちらが良い悪いではなく、企業文化・勤めている人材のタイプが違うからです。

日本人が得意な「ハイコンテクスト」のコミュニケーション、つまり行間を読んだり、腹芸をしたりなどは、外資系では通用しません。相手が「空気を読む」という文化で育っておらず、「察する」という行為をしてくれないため、口に出した言葉だけがそのまま伝わることになります。ロジカルでなかったり、説明が足りていなかったり、曖昧な単語選びをしていると、誤解を招きます。

例えば「前向きに検討します」「善処します」「相談します」は、外資系では使われないフレーズです。外国人社員に、検討・善処・相談した結果を必ず聞かれることになるので、明確でない言葉を使わない習慣が身に付くからです。

6. 最終決定権

外資系企業 : 海外本社にある
日本企業 : 日本にある

この指標は重要です。例えばマーケティングのブランディング戦略に携わっているとして、外資系では本社で決められているポリシーに則る必要があり、日本市場へカスタマイズするときには詳しい説明が必要です。ブランド力が高い企業では、そこまでしても日本側の提案が通らない可能性はあります。

外資系で昇進すると、本社と日本法人の間に挟まれることが多くなります。外資に勤めるからには、この「最終決定権は日本法人にはない」という点だけは割り切らないと、ストレスを溜めることが多くなります。

外資系企業向きの人材か見分ける6つの質問

外資系企業と日本企業の大きな違いについて取り上げました。以下、外資系に向いている人材かどうかを確認する質問を作成しましたので、答えをそれぞれ考えてみてください。

1. 想定外の事態に対して、慌てたり憤ったりすることなく対処できますか?

2. ワーク・ライフ・バランスを重要だと思いますか?

3. 安定を求めず、変化し続けることができますか?

4. ジェネラリストでなく、専門性を高めるキャリア構築に興味がありますか?

5. アサーティブ(程よく自己主張できる)ですか?

6. 職場で起きる理不尽なことを、しょうがないと割り切れますか?

全ての答えがNOの場合は、外資系に転職せず日本企業に留まったほうがハッピーな人生になりそうです。YESとNOが混じる場合は、業界・業種を選べば外資への転職も可能です。もちろん、全ての答えがYESの場合は、外資系の方が QOLが高い人生になりそうです。

本日は、外資系企業と日本企業の大きな特徴の違いについて振り返りました。一般論で言うと、外資系に向いているのは、アサーティブで個性豊か、スペシャリスト志向で変化を厭わない、成果主義を歓迎できる人材です。外資系・日本企業のどちらが良い悪いはありませんが、どちらが個人に合っているかは存在しますので、考える一助にしてください。日本企業から外資系への転職を考えている方の、ヒントになりましたら幸いです。

「グローバル人材塾」主催のオンラインイベント

オンラインイベント「脱!英語中級 学校が教えない前置詞とa/theのトリセツ」が、2021年3月24日(水)19:30-21:00に開催されます。 鈴木美加子のオンラインサロン「グローバル人材塾」の主催で、「前置詞と冠詞(a/an, the, なし)」が90分で理解できるセミナーです。ロンドン在住の認知言語研究者のオーライト・ちえみさんとZoomで話します。 日本人にとっての最後の難関「前置詞と冠詞」を克服したい方、ぜひご参加ください。

詳細とお申し込みは以下のURLからご確認お願いいたします。

http://ptix.at/8M6S5t/

鈴木美加子

鈴木美加子(株)AT Globe代表取締役。 GE、モルガン・スタンレーなど外資出身の元・人事部長。外資への転職エキスパート。 TOEIC 960点・英検1級。
グローバル人材を育成するオンラインサロン:https://bit.ly/2UuA5n1
LinkedIn : https://bit.ly/2UbhGyy
Twitter:https://twitter.com/Mikako_Suzuki