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英語力は、あなたをメディア・バイアスから自由にする

米大神経科学者の自由になる英語思考法

英会話力「ほぼゼロ」の状態から、英語を独自に猛勉強して単身渡米し、米名門大学院で神経科学の博士号を取得した、さかいとしゆきさん。自身の経験を基に、アメリカと日本の教育の違いや、英語を使って世界を広げるための方法を紹介します。第3回のテーマは「メディア・リテラシー」です。

特定のソースに依存することの危険性

現在メディアやSNSでは、あらゆる情報が飛び交っています。あまりにもさまざまな情報が錯乱しているたたため、一見してどれが事実なのか判断することは容易ではありません。

その理由の一つとして、確立されたファクトチェックをする機関がないことがあります。事実に裏付けされているか否かにかかわらず、自分のひいきのメディアや有名人の意見に流されてしまう傾向がいまだに強い。

しかし一握りの情報ソースに依存してしまうと、そのソースがそのまま自分の意見となってしまう危険性があります。その結果、ソースが誤った情報や意見を流すと、自動的に自分の意見も同じように誤ることになるという大きなリスクがあります。

それでは、特定のソースに流されずによりエラーの少ない情報源を得るにはどうすればいいのでしょうか。その答えは、あなた自身が安定した情報源になるしかありません。

私たち自身が安定した情報源を得るための方法を、一つずつ説明していきましょう。

情報の質を守る「プロテクション」としての英語能力

情報を得るために特定の日本語メディアに依存するということは珍しくありません。例えば、自分のお気に入りの新聞、雑誌、インターネット、テレビなど、同じソースから繰り返し情報を得る。メディアによっては、視聴者に代わって特定のニュースについて「どういう意見を持つべきか」というところまで伝えようとするものも少なくありません。もちろん、日本と世界の交流が最低限ならこのやり方でも問題はないかもしれません。

しかし、次の数十年で日本はさらに国際化の波にさらされることになるでしょう。外国出身者はさらに増え、日本人が国外で働くということがもっと一般的になる可能性もあります。そうなると、日本国内の一握りの情報ソースに依存したままでは、さまざまな弊害が出てきます。

最も大きな弊害の一つは、依存しているメディアのバイアスに気付かずに、自分が知っている情報を「事実」として相手に押しつけてしまうことです。国際的な場で、海外出身者とニュースについて建設的議論を交わすために知っておくべきことがいくつかあります。

メディア・バイアスからあなたの情報を守るには

海外で何年も暮らすとよくわかりますが、一つの国のメディアには必ずバイアスがあります。これはアメリカのメディアもそうですし、日本のメディアもそうです。どの国のメディアにとっても、自分の立場に不都合なニュースを流すことは容易なことではありません。

大切なのは、特定のメディアの情報にとらわれ過ぎないように、私たち自身が可能な限り中立で客観的なスタンスを保つことです。

アメリカで暮らしてとても驚いたのは、アメリカやそのほかの国で起きているニュースの多くは、日本のメディアでは報道されないか、報道されたとしても詳細は報じられないということでした。私はこれを「メディア・フィルター」と呼んでいます。

世界で起きている出来事の中から、日本のメディアの判断でかいつまんだ一握りの情報だけが、日本の視聴者向けに大々的に報じられているという事実があります。メディアの主観によって選ばれたニュースばかり見ていると、私たち自身の知識も偏ってしまいます。このメディア・バイアスを避けるために、非常に有効な方法があります。それは英語を最大限に活用することです。

世界中の多くの国のメディアは、英語でも世界に向けて情報を発信しています。国内メディアを介さずにこれらの情報を英語を使って自分の目で吟味し、さまざまな国のメディアの情報を読み比べることで、よりバイアスの少ない情報を得ることができるのです。

メディア・インデペンデンスという考え方

私は、特定のメディアに依存することを避け、より多くのソースを日常的に読み比べながら安定した情報源を保つという「メディア・インデペンデンス」という姿勢を推奨します。

メディア・インデペンデンスを保てば、特定のメディアのバイアスに翻弄されることは減りますし、多くのソースに裏付けされた情報を特定する癖がつけば、どんなバックグラウンドを持った相手との議論でも安定した意見を提供することができます。

いろいろなソースの情報を読み比べることで、多様な視点から物事を考える(マルティ・アングル思考)習慣や、議論により柔軟に対応する力が身に付きます。

ニュースの「立体的理解」を深める

複数の情報ソースを吟味する習慣をつけることには、もう一つの利点があります。

それはニュースに「立体性」が出てくることです。同じ現象についてできるだけ多くのソースの描写を比較すれば、複数のニュースに繰り返される「共通項」が自然と浮かび上がってきます。この作業を繰り返すうちに、ニュースのどの部分が複数のソースに裏付けされたもので、どの部分がそうでないかという立体的な理解が深まります。

もちろん必ずしも多くのソースに裏付けられた情報が正しいとは限りませんが、膨大な情報を整理するにはこの複数のソースに見られる「共通項」を意識することはとても有効です。              

ニュースは「点ではなく線」と考えればより楽しくなる

だからと言って、いろんな国のメディアのニュースをいっぺんに読むのは並大抵のことではありません。情報量はずっと多くなるし、その分自分で情報を整理する必要が出てきます。その際に重要になるのは、ニュースを「点」ではなく「線」ととらえる考え方です。

例えば、毎日報じられるあらゆるニュースを、「一つずつ独立したもの」(点)と考えてしまうと、内容を覚えるだけでも大変です。それはニュースの間の関係性(リンク)を無視しているからです。

一方、ニュースの多くは根底でつながっているということを意識すれば、異なるニュースが実は綿密に関連しているということが見えてきます。

例えば、今日起きているニュースの多くは今日突然起こったのではありません。そのニュースに至るまでにまず原因があり、プロセスを経て結果につながっています。物事には常に因果関係があるのです。これをニュースの「ストーリー」(線)を探す作業だと考えることもできるかもしれません。

ストーリーを見分ける習慣をつけておくと、例えば特定の国で起きるニュースの多くが、同じ社会問題や同じ人物やグループに関連していることがわかります。こうやって、始めは「点」のように見えるニュース同士を「線」で結ぶことによって、膨大な情報を自分の頭の中で整理して覚えることが容易になります。

ますます多様化が進む国際社会で、特定のメディアに依存しない、多くの情報を自分の頭で比較し情報を解析する「インディペンデント・シンカー」(独立した思考者)という姿勢がさらに重要になっていく予想します。

独立した思考者になるプロセスではもちろん以前にお話ししたクリティカルシンキング(批判的思考法)の活用がとても重要になります。

ej.alc.co.jp

さかいとしゆき神経科学者(Ph.D.)。英会話力ほぼゼロから一念発起して英語を勉強し直し渡米。カリフォルニア大学バークレー校を卒業後アメリカの大学院で神経科学の博士号を取る。日米両方で学んだ経験から教育、社会などさまざまなテーマを独自の視点から考察。
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